男子シングルス、女子シングルス、女子ダブルスの順に
行われた最終日のプラハオープン。マルチナ・ナブラチロワが
いない日曜日はお客さんの入りが極端に悪く、男子シングルスに
チェコ人が二人残っていても閑散としていました。

その十万ドルチャレンジャーの決勝の男子シングルスは
ヘイェクが攻勢をかける展開でスタート。ヴィックは守勢に
回るが、徐々にペースを取り戻し、相手のフォアの強打を
嫌がるところに返球し自分のペースをつかむ。

ヘイェクもフォアを中心にペースを変えながら流れをつかもうと
するものの、コートカバーリングのいいヴィックにパスで
抜かれる厳しい展開。

結局、ヴィックの地力が勝り、第一シードを守っての優勝と
なった。

いい試合なのであり、チェコ同士の決勝なのにお客さんが
少ないのは、彼らの集客能力とナブラチロワのそれの桁が
違うことがよくわかる日曜日の午後である。

男子の決勝後のセレモニーの後に小雨が振り出し、少々試合時間が
遅れて始まった女子シングルスの決勝。

オージーの応援団ならぬ、ひとりで応援している姿が面白くも
あり、悲しくもあるセンターコート。やはり、熱気というのは
数の多さから派生するものであることを実感する。
まぁ、十人ぐらいで大声で応援すると空気が違ってくるのだろう。

ストーサーとピアーの決勝。どちらも、ここらあたりでツアーの
勝利を手にしたい二人であり、絶好のチャンスを得た両者で
ある。

前半はストーサーがフォアの強打が冴える。バックもストレートで
エースを取り、このまま押すかに思えたが、ピアーもあきらめ
が悪いことでは評価が高く、コートカバーリングで前後左右に
走りまくる。

次第に厳しいところ打たざるを得ないストーサーのミスが
出始めて逆にピアーのエースが増え始める展開。

準決勝までの両者の戦いから見て、もつれることは必至かと
思われたものの最終セットは先にブレークしたピアーが
ストーサーの闘争心を奪い取り、圧倒して幕となった。

女子ダブルスですが、これが雨に降られて最初のゲームの
二ポイントが終わった時点で中断となり、コートコンディションの
いい第二コートでコート整備を終えてから再スタート。

とても国際大会の決勝とは思えない観客数の中で再スタート
して、終わったのが九時過ぎのナイトゲームを制したのは
元気満々のピアーとバルトリのペアであった。

五月なのにジャケットが必要なくらいの寒さとお客さんの
少なさにさみしさを感じながらプラハオープンは終了となった。
男子の十万ドルチャレンジャーですが、これが第一シードと
予選上がりという好対照な組み合わせになりました。
ロビン・ヴィクは二回戦がフルセットにもつれた以外は
割りに簡単に相手を下して決勝まで来ました。今日のSFでも
好調ぶりを持続して、小雨が降ってきて、試合が遅れた
影響も彼のメンタルに影響を与えることもなく、ストレートで
勝ち上がっています。

そして、相手のヤン・へイェクですが、少々のバックサイドの
ボールなら周り込んで叩き込むフォアを武器に予選からの
快進撃を続けています。

今日の対戦相手のエコノミディスはQFでトーマシュ・ツィブを
倒してSFに上り詰めてきたプレイヤーで調子が良かったはず
ですが、ほぼ試合を一方的に進めて、一度も崩れることなく
ストレートで決勝に来ました。

女子ですが、エストニアのカネピとイスラエルのピアーの
対戦はピアーがカネピを下しました。カネピはバルトリ戦、
カメリン戦で決まっていたフォアのクロスの強打が打てない
展開で逆にエラーが目立つようでは、劣勢を強いられましたね。

もう一つの準決勝のストーサーとペンの対決はストーサーが
フォアの強打で圧倒しました。私がかつて日本で見たときの
彼女とは体つき、動きの速さなど別人と思えるほど進化を
遂げています。

どちらの試合も楽しみなバトルになりそうです。
ドイツとイタリアの大会に目が行っている日本のテニスファン
が多いと思いますが、楽しい一週間のグランドファイナルと
なります。
スーパーバイク世界選手権の最終戦に予定されていて、
開催サーキットのアナウンスが待たれていた南アフリカラウンド
がキャンセルとなりました。

まぁ、色々な想定内のことと想定外のことが起きて、こういった
結果になりましたね。

残念だという気持ちと、やはりこうなったかという納得の気持ちの
両方がないまぜになっています。

タイトルを追いかける立場のライダーやメーカー、チームにとって
はちょっと辛いのでしょうが、仕方ないですね。

かつて、開催地に関するどたばたがあって、確か2000年に
ブランズハッチで二度開催ということがありましたが、今回
に関しては代替ラウンドの開催についてアナウンスはありません。

個人的には13戦あったほうがいいと思いますが、やる気のある
サーキットがかつてのブランズハッチのように手を挙げるのか
見守りたいと思っています。
マリア・エレナ・カメリンというプレイヤーと私はかつて岐阜の
カンガルーカップで出会い、ここプラハで久しぶりに再会しました。
さすがに日本人の私がイタリア語を話して、メディアセットの
手伝いをしていたり、イタリアのバイクチームのお世話をしたり
する人となると印象が強いようで、顔を見たらすぐに思いだし
ましたね。

そんなカメリンとプラハで会ったのですが、ここチェコという
国ではスポーツベティングが盛んです。まぁ、サッカーでも
自国の試合だけでなく、ブンデスリーガやセリエAのみならず
何と日本のJリーグを賭けていたり、アイスホッケー世界選手権
でも予選リーグから賭けの対象にしています。

というわけでスポーツ新聞を片手に練習を終えたカメリン
と話していて、今日はこんなオッズになっていると話すと
真剣なまなざしで読んでいましたね。

別れ際、『明日も来るの』と言われ『間違いなく、来るよ。
君の試合を見に来る。君の勝利に賭けるかどうかわからない
けれど。』と話すと『賭けるのはやめてよ。』と言われましたね。

まぁ、プレイヤーは勝つことばかり考えているのでしょうが、
賭けの対象になって、負けて目の前の人間が損したとか
金を失ったとなると嫌なものなんでしょう。

彼女の気持ちが分かるのと同時に、武豊がディープインパクト
に搭乗した時のように十万以上のお客さんが馬券を片手に
注目している中で勝つことの大変さを改めて知った私でした。
かつて猪木さんが後楽園ホールならほっといても、コアなファンが
来てくれるが、武道館や国技館となると、魅力的なカードや
刺激的な話題がないとお客さんを集めることができないと
話していました。そして、東京ドーム大会を興行的に成功させる
ために何が必要なのかを説明していました。

ナブラチロワのいないプラハオープンはまさに後楽園ホール
のプロレスのようなものでしたね。確かにコアなファンは来ている。
しかし、彼女を見たいとか、彼女がいるから見に行こうと思って
いる人の数の多さを実感しました。

アイスホッケー世界選手権が行われて、チェコが戦っていると
やはりテレビの生中継を気にして、テニスコートに来ないこと
をまともに実感しました。
SBK
 ベイリス 10

最高の結末、最速の週末。イタリアのモンツァというドゥカティ
にとって大事な場所で、チームを鼓舞し、勝利に進み、ライバルに
一撃を加え、リードを広げたダブルウィンの意味の大きさは
本人にとっても、他チームにとっても大きなものだろう。
ヴァレンシアから四連勝。この連勝街道を延ばすことができるのか。

 コーサー 9

昨年のモンツァを見ていて、ちょっとスズキのマシン的に苦しい
のかなと思ったのだが、今年もその印象は変わらなかった。
その少々ハンディのあるマシンでできうる限りの最良の成績
を残す彼は世界王者にふさわしいといえる。

 バロス 8.5

ヴァレンシアで苦しんだ彼がモンツァで生き返った。
ホンダパワーを利しての堂々たる走り。条件が揃えば
ウィナーになれる可能性を示してくれた。

 芳賀 8.5

マテリアルとして何かが欠けて、何かが足りなかったと
思うが、それでもなお執着心を有し、勝利を目指して走り、
勝てなかったら表彰台の座を奪おうとする欲の深さを
失っていない。

 ペトロナス 4

マーティンの献身的な働きぶりはよくわかるが、どうも
マシンが根本的に悪いのか、一周だけは速く走れるのか、
開発のテンポが鈍いのか、オージーの走りに応えることが
できないでいる。

 ファブリッツィオ 6

予選での今ひとつ感。決勝での今二つ感。同じ道具を使う
バロスが輝いて見せたのに、才能を発揮していないローマ人は
失望を感じさせた。

 ラコニ 7

カワサキのマシンで驚くべきコーナーリング。何が何でも
前に出るんだという気持ちの強さと勝ちたいという闘争心が
走りに見事に現れていた。マシンがライダーの気持ちに応えて
くれた時に彼はウィナーサークルに戻ることだろう。

 SS 

 ティベリオ 10

シャーペンティエがフライングペナルティを取られたのは確か。
カーテンがエンジンブローで戦列を離れたもの確か。
しかし、そんなめぐって来たグッドラックを確実にものに
する走りをして、勝利を奪ったのも確かである。
運が良かっただけではない。彼の後半のスパート。集中力の
高さ、強い執着心が彼をウィナーサークルに導いた。
王者になるものは目の前の大きなチャンスを見逃さずにモノに
するものである。

 ハームス 9

ガッツィな走りで優勝争いに見事に絡み、勝利は逃したものの
見事に二位表彰台。自身に、そしてこのクラス参戦二年目の
新参チームに初めての表彰台をもたらした走りは見事。

 シャーペンティエ 7

焦る必要がないのに、焦ってフライング。段違いの速さで
中団グループを抜けるのに、一コーナーでブレーキング
ミスでタイムロス。持っている道具や本人の才能を考えれば
落ち着いていれば勝つことができたレース。
ミステイクを考えれば低得点しかあげられない。
しかし、PPを奪った速さとレース中のリカバリーにこの
ポイント。

 ロッコリ 7

ヤマハ勢最速。そして、最終ラップのソフオグルとのバトルに
冷静に、そして熱く戦い四位を奪ったのは立派。

 ホンダ 10

ポールポジションに表彰台独占。モンツァのロングストレートと
高速コーナーでホンダパワーが炸裂した週末。

 
 
当時のチェコスロバキアという国のシステムや制度というものでは
自分の持っている才能がスポイルされ、やりたいことができない
と考えたテニスの女王候補は母国を捨てました。

共産主義体制や当時の政治状況というものに反抗し、政治的自由と
能力を発揮する場を求めてアメリカに移り、持っている才能に
加えて、チームナブラチロワと呼ばれるフィットネスやコーチと
いった専門家や栄養学のスペシャリストを身の回りに集めて
強くなるための軍団を形成し、世界を制覇した彼女がアメリカ
代表としてチェコのプラハに戻りプレイしたことがありました。

その後、彼女がテニスプレイヤーとして下降線を辿り、
自分の育った国でプレイヤーとしてやってくることはないと
思われたのですが、その彼女がダブルスプレイヤーとして
エンジョイメントとしてテニスに関わり、再びラケットを
握ってプラハにやって来ました。

母国の体制の変化、彼女のチェコという国に対する思い、
時間の経過やプラハオープンという大会の設立など
様々なものが縦糸と横糸となり、美しいフォルムが形成され
彼女はテニスプレイヤーとしてプラハにやって来ました。

かつてのテニス界の女王をプラハのナショナルテニススタジアム
のお客さんはスタンディングオベーションで迎えました。

かつての憎たらしいほど強く、勝つことに全身全霊を傾けた
マルチナではなく、テニスという競技を楽しむ姿を見ながら、
過去と現在のテニスや彼女の存在をシンクロさせて試合を見る
お客さん。何とも言えない暖かさと心地よさが漂っていました。

プラハの春はやさしい空気に包まれています。
シャーペンティエを止めるのは誰か。誰がどう止めるのか。
必要なものを取り入れ、不必要なものを拭い去り、何かを得て
何かを捨てることができる人が少々の運をつかんだときに
果実を得ることができるが、可能性が低いことも確かである。
あきらめが悪いことが正しいことであり、追いかけることを
やめない藤原、カーテン、パークスという連中がするのか、
今回二番手グリッドを奪ったヴィッツィエッロができるのか
楽しみな日曜日。

サイティンググリッドに着く各ライダー。暑さがピークに達する
午後一時。予選二日間に比べて暑いのは明らかで様々なモディファイを施す。

スタートを迎える。シグナルレッドからオールクリアとなる。

しかし、ここでPPスタートのシャーペンティエが一瞬だが
早くスタートを開始したように見える。

審議委員会の裁定がどうなるのか注目されるが、議論が
続いているのか、何のジャッジもないままレースが進む。

オープニングラップの一コーナーではザイゼル、べネマン、
チェカが集団クラッシュのリタイアクラブを作っていた。

スタートからトップを奪ったシャーペンティエが逃げを打つ。
それを追いかける後続だが、フランス人王者は確実に
マージンを作っていく。

やはりというか、当然というかシャーペンティエがフライング
ピットスルーペナルティを取られる。

そのシャーペンティエのミスに乗じて勝利を奪いたい藤原と
ヴィッツィエッロであったが、アスカリで接触して両者リタイア。

フランス人が後方に沈み、トップ争いがティベリオ、カーテン、
ハームスの三人になり、しばらく離れてロッコリ、その後ろから
中位集団がバトルしているが、そこに遅れを取り戻すシャー
ペンティエが各車をぶち抜いていくが、一コーナーで焦りからか
コースアウト。再び後方からアタックしていくが、レコード
タイム連発となる。

優勝経験もあり、ヤマハのマシンも好調のカーテンが勝利に
近いかと思われたが、残り四周となったロングストレートで
エンジンをブローさせてヘルメットを脱ぐ。

これで優勝争いはティベリオとハームスの展開になる。
三位にロッコリのR6が着けるが、これにソフオグルの
テンカーテホンダと後方から強烈な追い上げのシャーペンティエ
の二台のテンカーテホンダが迫る。

ティベリオが全力の走りでリードを少しずつ広げていく。
ハームスも追い上げるが、タイヤの消耗もあり、無理はできない。
デリファレンスが一秒から二秒になる。そこから離れてロッコリ
だったが、そのイタリア人を最終ラップにシャーペンティエが
オーバーテイク。三位に躍り出る。

後ろを全く振り向かないティベリオ。前しか見ないハームス。
転がり込んできたチャンスを落とすことを全く考えず、
勝利を目指して走る二人のヤングライダー。しかし、今日は
フランス人にとって特別な日となった。

勝利をつかんだのはティベリオ。その後方からハームスが
自己最高位の二位。三位に出入りの激しいレースのシャーペン
ティエ。最終ラップに一度は先行を許したが再び抜き返した
ロッコリが四位。五位に最後の最後に気合負けしたソフオグル
であった。

パルクフェルメに戻ったティベリオ。『ぼく、勝ったの。』
という彼にイタリア人スタッフが『勝ったんだよ。我々は
勝ったんだよ。』と涙声で答える。何とも美しく初々しい
シーンであった。
金曜日の予選を終えて、土曜日は雨か曇りという話が出ていた
モンツァ。天候を気にしながら、迎えた予選二日目である。

早朝のモンツァはひどく冷え込んだが、スーパーバイクの予選が
始まる頃には春の終わりの陽気である。午後一時十五分スタートの
SSの予選は熱気で包まれた。

暖かいどころか暑いと思える天候は予想を超えていたのか、
各チームのライダーがセッションが始まり、しばらくしてから
ピットイン。予想を超える路面温度と集団で走るのを嫌う
ライダーが続々ピットインし、セットアップやタイヤ選定に
忙しく動き回る。

セッション中盤に入ったあたりから、前日にそれほどいいタイム
で走れていないライダーが懸命のアタックに入る。
そして、例のごとく王者がセットアップを決めて、ライバルに
衝撃の一撃を与えるためにコースイン。

ライバルの出鼻をくじく信じられないタイムをたたき出し、
やる気を奪うフランス人はこの日もすぐに最高のタイムを叩き
出す。何と50秒5である。ニューレコードという表示が
全てのチームのラップタイムモニターに映し出される。
これを見てあきれるものが多いがあきれてばかりもいられない。
予選残り時間が少なくなり、ソフトタイヤを使ってアタックを
掛ける。

藤原がホンダパワーと気合で51秒8まで持ってくる。
ティベリオもかなり藤原に近いタイムで走行。昨年のSTK600
で走っている彼も卓越した走りで首脳陣の期待に応える。

さらにハームスのホンダがタイムアップ。シャーペンティエ
のタイムに及ばないものの、自己ベストを更新していく。

残り六分を切ったところで、ロレンツィオーニバイレオーニの
二人がソフトタイアを装着。二人で引っ張り合いながら
のアタックを掛ける。

地元で気合十分。そして、先週のイタリア選手権で1−2
フィニッシュして事前のデータも持っているこの二人が
長いロングストレートを引っ張り合いながら、高速コーナー
をお互いの持ち味を活かしながらの走行である。

ヴィッツィエッロが一発目に出したタイムは51.7。
同時に走行して二周目に出したロッコリが出したタイムが
52秒フラット。見事なタイムであった。

シャーペンティエが王者の走りをして50.5。何かが
無ければ勝利は固いだろうが、二番手に藤原でもヤマハ
ジャーマニーでもなくヴィッツィエッロが来たのは驚きかも
しれないが、評価できる。見事なアタックであった。

三番手に藤原、四番手にカーテン。
二列目にロッコリ、ハームス、ソフオグル、ティベリオ。
ルギュエル、スティゲフェルトというトップテン。

カワサキ勢はまだやることが多く後方に沈み、ドゥカティは
不発であった。

決勝はいつものような予定調和になるのか、昨年のような
展開になるのか。天気予報は晴れ。シャーペンティエの
瞳はいつものように澄み渡っているように見える。
誰がシャーペンティエを止めるのか。何が王者を阻むのか。
強すぎる横綱を破るのは誰かという視点でしか見ることができない
このクラス。モンツァで再びフランス人は全てのライダーを
引き離して圧勝するのかが焦点であったモンツァ。

曇り空の金曜日。風も結構強い。各チーム、空を見上げながら
昨年のデータや先週イタリア選手権に出走したライダーは
最新の走行資料などを参考にピットアウト。

ホンダパワーという言葉があるが、ホンダ勢の調子がいい。
ロングストレートに高速コーナー。最近できたサーキットと
違ったキャラクターを有するモンツァでヴァレンシアのような
サーキットは嫌いだがここは好きだというライダーがまさに
水を得た魚となっている。

そんな中で、セッション中盤にはいり衝撃のタイムをたたき出した
のがやはりシャーペンティエであった。51秒台に入れて、
さらにもう一周走って出したタイムが51.061。
ライバルに対してとんでもない一撃であり、一発であった。

毎回意気消沈ばかりしていられないライダーが彼の背中を
追い越そうとする。藤原、カーテンといったライダーが懸命の
アタックをして追いつこうとするものの藤原は51.8
カーテンは52秒フラットであった。

まぁ、毎度のことながらシャーペンティエの速いこと。
初日に藤原にコンマ8のマージンである。そして、レコード
樹立。アンタッチャブルな彼の走りはここでも健在である。

藤原やカーテンのタイムが決して悪いのではない。フランス人が
早すぎるのである。

PPがシャーペンティエ。二番手に藤原、三番手にカーテン、
四番手にソフオグル。二列目にティベリオ、ヴィッツィエッロ、
パークスとホンダ一台、ヤマハ二台が続き、ザイゼルの
ドゥカティ。スティゲフェルト、ハームスのホンダが
9,10番手というトップ10であった。
レース1を奪い満足感と気合がみなぎるドゥカティ陣営。
悔しさを晴らしたいスズキ軍団。そして、ヴァレンシアの
暗黒から光が見えたクラッフィホンダのチームクルー。
着ている服が明るくなり、暑さを感じる中始まったレース2。

スタートをしっかり決めたのはやはり、二人のトロイ。
そして、レース1のリプレイを見ているようにスタートをミスった
バロス。気合十分で先頭を奪おうとした一列目スタートの
ラコニ。レース1と違ったのは多重クラッシュなく、一周目の
一コーナーをクリアしたことであった。

ベイリスとコーサーに食らいついていったのがヤマハR1を駆る
芳賀。実際、このレースにおいて、レース序盤から中盤までの
高速コーナーでの闘志溢れるコーナーリングは素晴らしく、
二人のトロイにとって厄介な相手となっていた。

しかしながら徐々にペースダウンを余儀なくされる芳賀。
その名古屋人を離して、二人のオージーのマッチレースとなって
いった。

今回もこの二人かよという声が聞こえてくるマッチレース
であるが、芳賀が離され、バロスの追い上げがレース1ほど
急なものでないだけに当然の帰結であった。

そのベイリスのドゥカティであるが、速さ、安定感抜群で
切れと美しさを感じさせる。モンツァパルコの美しい緑に
太陽の光と溶け合うゼロックスカラーのドゥカティの
典雅なことよ。

そのドゥカティがベイリスという乗り手によって光を増して
いる中、スズキのコーサーも懸命に昨年のチャンピオンマシンに
闘争心と息吹を与えるが、このモンツァにおけるイタリアンレッド
の速さに一歩足りない。

結局、後半スパートを掛けてリードを奪い、その差を保った
ベイリスがレース1に続いて優勝。何とヴァレンシアのダブル
ウィンもあったので四連勝である。

二位にできうる限りの最良の走りをしたコーサー。
三位には後半我慢の走りを強いられた芳賀であった。

以下、反撃が遅かったバロス、トーズランド、ピット、
ムジェリッジ、二エト、ウォーカー、ロルフォという
トップ10であった。

ウィナーの僚友のランツィは11位。ランナーアップの
コーサーのチームメイトの加賀山はリタイア。
マックス・ビアッジ待望論がイタリア人の間で聞こえてきている
が、うまく行っているチームに化学反応が必要なのか、
タイトルを争っているライダーよりがめつさや欲の深さが
人一番強いであろう(これはライダーにとって必要な要件で
あるが)ローマ人ライダーの加入がいいことかどうか落ち着いて
考える必要があると思う私である。

ストップアンドゴーのヴァレンシアでも二連勝。ハイスピード
コースのモンツァもダブルウィン。ベイリスとドゥカティは
強さを見せ付けている。次はシルバーストーン。
オーストラリアからイギリスに渡って、そこで認められて、
評価されたベイリスの第二の地元である。
いつもいつも、レース前日にレース主催者から『オープニング
ラップの一コーナーでの進入に留意するように』というメッセージ
がまわってくるこのモンツァ。最高速が300キロオーバーに
なるところから急減速してクリアするこの一コーナーで面白い
戦いも首をかしげるクラッシュも起きてしまうジョーカーを
手にして戦うのか、このカードによって敗北を喫するのか
モンツァのレースが始まった。

シグナルレッドからオールクリアに。一列目から出遅れた感の
あるバロスを二列目、三列目のライダーがオーバーテイクして
いく。

そして、一コーナーに。トップグループは何事もなく慎重に
クリアしていったが、中団グループは多重クラッシュとなって
しまった。

二エト、ファブリッツィオ、ナンネッリ、イアンヌッツォと
いった連中がすぐにヘルメットを脱いだ。

トップを争うのは二人のトロイ。そして、序盤続いたのが
カワサキを駆るラコニであった。気合十分、そして、
かつてここでダブルウィンを奪ったことのある彼はこのサーキット
との相性も良く、楽しみなライダーであると言えた。
さらに復帰初戦でありながらホンダパワーを利して、ムジェリッジ
もトップグループで走行。群雄割拠になるかに思えた。

しかしながら、二人のトロイ。そして、予選二回目とスーパー
ポールは寝た振りだったのか、あるいは決勝のセットアップに
専念していたのか、芳賀の三人が抜け出して中盤を迎えた。

このドゥカティ、スズキ、ヤマハのマシンに中団グループから
抜け出して近づいてきたのがバロスのブラジルカラーのCBR
ホンダであった。かつての八耐で500の2ストからリッター
バイクの4ストに器用に乗り換え、鮮やかに鈴鹿の高速コーナー
を駆け抜けたブラジル人は日本人のファンに真夏の耐久レース
を思い起こさせる切れのある走りを披露。自分のペースを
つかんだ彼は先行するライダーをキャッチして、前に進む。

三人による優勝争いになるかに思われたが、レース終盤
ベイリスがペースアップ。コーサーと芳賀も付いて行きたいが
次第に離され、逆に後ろから現状のポジションをバロスに脅か
される。

リードを広げたベイリスは最後はマージンを保ったまま優勝。
色々な思い出が詰まったモンツァで久々の優勝となった。
二位には素晴らしい追い上げを見せたバロス。三位には
コーサーという表彰台の顔ぶれ。四位に芳賀、以下、ピット、
ムジェリッジ、ラコニ、ロルフォ、ランツィ、中富という
トップテンであった。

満足感溢れるベイリス、二位でうれしいと思いきやスタートさえ
ミスしなければ優勝もあり得たと考え無念さが強く顔色に
出ているバロス。悔しさがにじみ出ているコーサーという
顔ぶれであった。
トップ16のライダーのよってオールオアナッシングの
一周のみのバトルで順位が決まるスーパーポール。
見所の多いセッションであった。

先週のイタリア選手権に走りこみを兼ねて参戦し、鮮やかな
勝利を手にして、世界選手権のこのモンツァに乗り込んだ
チャウスであったが、アタックに入る前にマシントラブルに
見舞われて戦線を離脱してしまった。

残念なトラブルであった。

順位の大きな変動がないなか、カワサキの日本人スタッフも
姿を見せる中、ようやく明石製のV4マシンを自分のものに
したように見えるラコニが250のマシンを走らせていたときを
思わせる素晴らしいコーナーリングでタイムを削っていった。
彼がトップを奪う。

その後から出てきたバロスがホンダサウンドをなびかせながら
ブラジルカラーのCBRをトップに導く。彼にとってもホンダ
にとっても、ここはやりやすくていい場所であり、ヴァレンシアは
やりにくくてまずい場所だったのだろうか。二週前からは
考えられないほどの元気の良さである。

このフランス人とブラジル人のタイムを打ち破るれる可能性は
誰が有していたのだろうか。

そう二人のトロイであった。

ベイリスの46.3というタイムにパドック、観客席は呆然と
した後、大きな歓声でドゥカティスタを讃えた。

しかしながら、スーパーポールという舞台の真打は最後に
登場し、鮮やかなネタの運びと落ちを用意していた。

このサーキットでスズキはどうかという声を封じるに十分な
スーパーアタックラップを終えてカウントされたタイムは
46秒フラットというものであった。

拍手、歓声を浴びて、堂々のPP獲得であった。

二番手にベイリス、三番手にバロス、四番手にラコニと
スズキ、ドゥカティ、ホンダ、カワサキと四つの異なる
メイクスが並ぶフロントロー。

以下、ウォーカー、ピット、ムジェリッジ、トーズンランド、
加賀山、芳賀というトップテンであった。
天気予報では午後から雨の可能性もありという話であったが、
朝の六時台の寒さが信じられないほど暖かくなり、明るい色の
服と露出度の高い女性のファッションが多くなった土曜日。
お客さんも多くなり、PRブースがにぎやかになってきた
予選二日目のモンツァである。

午前十一時からスタートの二回目の予選。前半半分ほどの
時間はタイムが伸びずに各チーム、アタックに向かうというより
セットアップの確認のために走っていた感があったが、
残り三十分を切ったあたりから熱のこもった戦いとなった。

テンカーテ勢であるが、トーズランドだけでなく、復帰初戦と
なったムジェリッジも元気な姿を見せてくれている。怪我の
影響はあるのだろうが、少なくとも周りにはそれを感じさせない
走りである。

さらにバロスがここでリッターバイクでどういう走りを見せるのか
楽しみであったが、インテルのサッカープレイヤーが応援に
駆けつけたこのモンツァでヴァレンシアの敗北ぶりを払拭
している感がある。

ムジェリッジ、バロスのタイムアップに呼応するようにピットの
ヤマハがタイムをあげる。サーキットが違うと失ったものを
取り戻すことができるのか、あるいはサーキットに対する
マシンの向き不向きが、こういった現象を起こすのか、面白い
予選となった。

伏兵がタイムアップを重ねていたときに、これに立ち向かったのが
やはり二人のトロイであった。ベイリスにとっては、ここでの
走りでドゥカティの信頼を勝ち取り、負傷したフォガティの
後釜に座ることになったレースもあったわけで、このサーキットに
特別な思い入れもあるのだろう。彼らしいシャープで切れのある
走りでドゥカティスタの喝采を浴びた。

もう一人のトロイも頂上を目指すならば叩かなければいけない
時がいいタイムをマークしたら、闘争本能に火がつくわけで、
セッション終了、激しいバトルとなった。

勝ちたい相手であり、負けたくないライバルを見ることが
魂に火をつけ、モンツァという全開している比率が馬鹿高い
サーキットでボローニャと浜松の二気筒と四気筒がソプラノと
テノールを奏でていく。

結局、このセッションはコーサーがものにした。二番手に
ベイリス。影が薄くなってしまっていたが、着実にタイムを
伸ばしたピットが三番手。レース用のセットアップに時間を
割いたのか、何か問題があったのか、タイムが伸びずに芳賀は
四番手。

蘇ったホンダサウンドのトーズランド、加賀山、バロスが続き、
最速カワサキスタのラコニが八番手、ムジェリッジ、チャウスと
続いたトップテンであった。
2人のトロイによるバトルが予想されるが、彼ら二人の先を
行ったり、間に割ってはいることができるライダーはいるのだろうか。
空模様が怪しい中始まった予選初日。

先週のイタリア選手権のモンツァでも、曇りから雨になり、
さらに晴れたりということがあったが、この世界選手権の
レースウィークも空を眺めながらセンシティブになりながら
の予選開始となった。

まず、目を引いたのが、前回のヴァレンシアでだめだめだった
ホンダ勢である。マシン的に色々手を加えてきたこともある
だろうし、ライバルの走りを眺めるためだけにここに乗り込んで
くるような連中が世界選手権を走るわけもない。物心両面の
変化と共に長いストレートにハイスピードコーナーという
スペインのストップアンドゴーとは違ったコースキャラクターが
ホンダを生き返らせることになったのか、再生がなったのか、
テンカーテホンダの二台にバロスのクラッフィホンダがホンダ
サウンドを奏でながらの快走である。

ここにラコニのカワサキも馬力のあるマシンで上位に食い込んで
きて、面白い予選となった。

前回とは違った顔ぶれと順位になりそうだと思っていたところ
で芳賀が好タイムをたたき出し、それに元と元役の世界チャンプ
の二人のトロイが呼応して、タイムを削りだす。

サーキットから五キロほど離れたところで住んでいるモンツァの
名古屋人はレズモや最終のバリアンテを気持ちよくシャープに
走り地元のレースで初日トップを奪った。

二番手にベイリスのドゥカティ、三番手にスズキのコーサーと
タイトル争いの主役二人が並んだ。四番手にトーズランドの
ホンダというフロントロー。

五番手にラコニのカワサキ、バロスのホンダ、ピットのヤマハ、
チャウスのドゥカティと続いた。

ファブリッツィオのホンダに、ロルフォのドゥカティという
トップテン。PPから九番手のファブリッツィオまでが
一秒以内というタイムギャップ。決勝が混戦になれば
誰が勝ってもおかしくないようなレースとなるだろう。

そう考える一方でコーサーのチームメイトの加賀山、
ベイリスの同僚のランツィが芳しくない。この状況が
このまま続くなら、イタリアで沸き起こっているマックス・
ビアッジ待望論などが大きな勢いを増しそうな気がする
私である。
125

 葛原 10

PPを奪い、レースでも独走。見事な走りを見せモンツァに
日の丸をなびかせた日曜日。レベルの高いところで走らせたいが
必要なものが足りないのも事実である。走りの才能はないが、
お金を集める才能がある人やお金持ちの子供で走るチャンスに
恵まれている連中にライダーとしてのレベルの高さを見せつけた
レースウィーク。

 STK1000

コルティ 9.5

決して完璧とは言えなかったR1をうまく操り、ベストでない
時にベターなタイムを出した能力は見事。決して楽な相手
ではないプラティキッツォを相手にバトルを展開し、
自分の持っている道具のいいところと勝たなければいけないと
いう強い心でつかんだ勝利。

プラティキッツォ 9

予選の好調ぶりは彼がカワサキのリッターバイクをしっかり
ものにして、メットツェラーのタイヤを理解して使用している
姿が明確に見えたものであった。決勝でも最後の最後まで
コルティを苦しめた走りを見せ、今後に期待を持たせた。

ゴイ 9

スズキのリッターバイクでSTK1000を走るという選択を
したかつてのGP125ウィナー。前半タイヤをセーブして
後半にトップグループに追いついた戦術は彼のキャリアが
そうさせた。冷静さが三位という順位をゲットさせたレース。

SS

ヴィッツィエッロ 9.5

予選での速さ、決勝でのレベルの高い走りと彼の持っている
能力が存分に発揮されたレース。コースアウトしそうになっても
集中してしっかりリカバーして、勝利を奪ったのは立派。
来週が楽しみである。

ロッコリ 9

ヴィッツィエッロと同等の速さと強さを見せたが優勝には
届かなかったモンツァ。しかし、最速ラップを記録し、
最後まで戦った姿は彼が600を走らせるイタリア人の
中で高い競争力を有していることを証明した。

ミッリョラーティ 9.5

シャープなコーナーリングとコーナーの脱出スピードを
見せつける二台のR1に対して、いかにも苦しみながらコーナー
リングしていくカワサキニンジャ。
しかしながら、トップスピードの高さとダンロップタイヤという
マテリアルを使って、決して勝負をあきらめずに最後まで
食らいついていった敢闘精神は立派。モンツァというロング
ストレートのあるコース、彼のライダーとしての能力の
高さなどをカワサキのネガティブさを打ち消して、堂々の
走りで表彰台をゲット。このレースのウィナーにはなれなかった
がヒーローは彼であった。

カネパ 6

ちょっと諦めが早すぎた感があったモンツァでのジェノベーゼ。
確かに予選一周走るのと、決勝をずっと走るのでは違いが
ありすぎたのは事実ではあるが、走ることで得ることも多いはず。

サンナ 6

昨年のイタリア選手権チャンプは光ることがなかった。
何か良くない状況なんだとすぐに他人にわかってしまう
他覚症状の高い彼であるが、マテリアルが本人の望むように
機能していない様が明らかであった。

SBK

チャウス 10

インクレディブルな予選。アンタッチャブルな決勝。
世界選手権のウィナー経験者はレベルの高さを段違いなもの
であると証明した。

アルフォンシ 9

先週、ヤマハフランスからR1でヴァレンシアを戦った
この若者はモンツァではドゥカティを駆って予選三番手。
日曜日には意外な好走を見せて何と二位をゲット。
若いライダーが走る場を求めて走り、走っているうちに
色々なものをつかむ典型的な例を見た思いがした。
続けること、チャンスをつかむこと、チャンスを得るために
色々なことにアプローチすることを実践した彼である。

ボルチャーニ 8

チームメイトが良すぎるともう一人のライダーはかすんでしまう
ことが明確に見て取れたモンツァ。彼のタイムも悪くはないが
同僚が良すぎたというところか。

決勝では二位は彼だと思っていたが、思わぬアルフォンシの
攻勢と好走に足元をすくわれてしまった。

ブリニョーラ 6

チャンピオンナンバーをつけて乗り込んだモンツァであったが
チャンピオンにふさわしいとは思えないレースであった。
ヤマハの日本人スタッフが開発ライダーであるR1ユーザーの
グラミーニと話し込んでいたり、ドイツ選手権をやっている
ホンダのチームがCBRを持ち込んで参戦。ルーベン・チャウスが
ここでの世界選手権を前に走り込みを兼ねて出走し、
今季SSのシートを失っていたアレッシオ・コラーディが
R6とダンロップタイヤで参加。日本の葛原が125でイタリア
選手権にチャレンジと様々な思惑と企画が折り重なり、独特な
空気が横溢していたモンツァの週末。

125

葛原の圧勝。モンツァのこの排気量では差が小さいと
大きな集団になり、最終ラップがとんでもないラテンバトルに
なるのだが、それを避けたかったのか、それとも好タイムが
出て、単独走行が可能になったのか、世界選手権のレギュラー
だったライダーの実力を見せる結果になった。

STK1000

PPはクラウディオ・コルティのR1。小差の二番手にルカ・
スカッサのMVアグスタ。三番手四番手とカワサキが続いた。
プラティキッツォとトルトロッリョである。ペリッツォン
のカワサキ、ゴイのスズキ、マグナーニのスズキ、キアレッロの
カワサキが続いた土曜日の予選であった。FIMカップ参戦中の
ライダーやSSで走っていたライダー、かつての125の
最年少優勝者記録保持者のゴイと面白い面子がそろっている
クラスである。

スタートでコルティがミスをするも、すぐに取り返す。
コルティのヤマハにプラティキッツォ、トルトロッリョの
カワサキ、スカッサのMVアグスタ、キアレッロのカワサキが
順位を変えながら、トップ集団を形成。この集団に序盤
フルタンク状態は遅れを取ったゴイがハイペースで追い上げ、
トップ集団を形成する。

レース終盤に入ると、キアレッロ、トルトロッリョが少し
ずつ離されてしまう。健闘していたペリッツォンのカワサキも
前を追いかけるより、第二集団で前述のカワサキユーザーと
のバトルになる。

 前半から完璧とは言えないマシンの状態ながらコルティは
悪くないタイムを叩き出し、トップを走行する。

 プラティキッツォがカワサキのマシンパワーを活かして、
パラボリカからロングストレートで並ぶも一コーナーを
制することができず、高速コーナーも抜くには至らないという
展開を何度も繰り返す。しかしながら、ようやくと言った感じで
最終コーナーから合わせて、一コーナー直前で前に出てトップを
奪う。

 この二人のバトルを冷静に見ていた感のあるゴイが追いつき、
終盤はプラティキッツォのカワサキ、コルティのヤマハ、
ゴイのスズキのバトルとなった。少し離れたスカッサの
MVアグスタは四番手を単独走行。

 コルティがコーナーの脱出スピードと旋回性の有利さを
使ってプラティキッツォを攻略。再びトップに立つ。
何とか勝ちたいカワサキスタであったが、若さとコーナーリング
の速さで目の前の勝ちを譲らずにチェッカーフラッグとなった。

二位はプラティキッツォ。三位にゴイであった。コルティは
昨年のSTK600での成長振りを終盤のつばぜり合いで証明した
モンツァとなった。

 SS 

PPはロッコリ、二番手にチームメイトのヴィッツィエッロ。
この二人のタイム差がコンマ026秒。三番手にドゥカティ
ジュニアチームのカネパ。四番手にカワサキのミッリョラーティ
で彼までがトップからコンマ六秒であった。ジュウゴバスの
ヤマハ、ボッコリーニのカワサキ、マリオッティーニ、
クルチャーニのホンダの後にゼッケン1をつけるサンナであった。

オープニングラップで中団グループで転倒者が出たが、
コース上はクリーンでレースは続行。トップはヴィッツィエッロ
続いてロッコリ、カネパ、ミッリョラーティが続く。

 四周目以降、R6の二人についていけるのはミッリョラーティ
一人となる。三人でトップグループを形成する。ロレンツィ
オーニバイレオーニのコーナーリングや脱出スピードの
速さがミッリョラーティ以外のライダーを置いていく。

 バトルの最中、ヴィッツィエッロが一コーナーでオーバーラン
するも、何とかコースアウトは逃れて、懸命のリカバー。
致命傷を負わずに戦線に戻り、トップ二人を追いかける。

 惚れ惚れする高速コーナーでの速さとシャープさを見せる
ロッコリとヴィッツィエッロに対して、トップスピードは
高いがコーナーで苦しそうに見えるカワサキというじゃじゃ馬を
操縦してトップを狙うミッリョラーティ。高い集中力と
ベテランのうまさがさえる。

 最終ラップのバトルは激しいものであったが、ヴィッツィ
エッロがトップを奪う。ロッコリもミッリョラーティも
攻撃するものの並ぶことはできても抜くには至らずに
パラボリカに。

 最終コーナーからチェッカーまで隙を見せずにヴィッツィエッロ
がトップで走りきった。二位にロッコリ、三位はミッリョラー
ティであった。

 SBK

とんでもないパフォーマンスや速さを見せられると笑うこと
以外できなくなるのだろうか。予選のチャウスのタイムと
走りを見て、笑ってしまった私であった。

 PPはチャウスであるが、チームメイトで二番手のボルチャーニ
に1.3秒差。三番手のドゥカティを走らせることになった
アルフォンシにニ秒差である。何もなければ彼の勝利になる
と思われた土曜日であった。

 その予想が当たったのが日曜日の午後。笑うほど速いのは
一日後も一緒であった。スタート以外はミスなく走行。
圧倒的な強さを見せ付けたレースであった。

 二番手争いはアルフォンシが何とボルチャーニをきわどく
破って大殊勲の二位。三番手はボルチャーニであった。

 ブリニョーラのドゥカ、グラミーニのヤマハは不発で
チャウスの強さばかり目立ったレースであった。
スペインのヴァレンシアのSBK世界選手権に行ってきました。
そして、今週末はモンツァでイタリア選手権。そして来週は
同じ場所でSBK世界選手権となります。

ロッシの後に誰が王者となり、スーパースターとなるのか。
ベイリスの次に誰をドゥカティのエースライダーを持ってくる
のか。ヴァレンシアからの三週連続のレーシングデイズから
考えてみました。

若いライダーに必要なのは、たくさん走る環境であり、
場所です。イタリアのチームではかなりイタリア選手権と
世界選手権の両方に参戦しているチームがあります。

SBK世界選手権のレースではFIMカップSTK1000選手権が
併催されています。さらに、アンダー20のユーロSTK600
も開催されています。

その選手権が若手を育てながら実戦を積ませる場所になって
いて、さらにそんなライダーがイタリア選手権も戦うと
なれば日本人ライダーには信じられないほど走る機会を
持つことになります。

昨年、アンダー20ユーロSTK600選手権を制したクラウディオ・
コルティはタイトルを奪った後に色々な話がありましたが、
ヤマハR1を駆ってFIMカップSTK1000選手権とイタリアのSTK1000
選手権を走ることにしました。

リッターバイクを走らせる経験をたくさん積んで、実績を
残して未来のヤマハSBKチームのエースになろう、あるいは
MotoGPに行くのに、重いバイクで速く走らせる経験が
必要であると強く認識しているようです。

昨年の後半にカワサキのバイクでSTK600とスーパースポート
で走ったニッコロ・カネパは今季ドゥカティのジュニアチーム
に籍を置きました。

参戦クラスはアンダー20のSTK600選手権とイタリアでの
スーパースポート選手権です。

かつて、ドゥカティから評価されていたランツィがストック
バイクのヨーロッパ選手権とイタリア選手権を走り、経験を
積み、ドゥカティのマシンに対する理解を深め、修行を積み、
世界へ入りましたが、カテゴリーこそ違いますが、まだまだ
若くて経験が必要なカネパに対してドゥカティは場所と土壌を
作ってあげて、ランツィの歩んだ道を進ませようとしている
気がします。

ヤマハとドゥカティという二つのメーカーが準備とか環境を
作り、それをライダーが活かして好成績をあげた時に
未来のスターやエースライダーがカテゴリーを上げて
輝く場を持てるのだと思います。
スペインのスーパースポートのレース。オープニングラップで
全力少年ぶりを発揮していたのが、フォレスでした。
R6を駆って、何が何でも勝つんだという欲の大きさや夢の
でかさが走りからにじみ出るというより、横溢する姿に
昨年のモンツァのナンネッリを思い出しました。

昨年のスペインのヴァレンシア。速さと強さを見せ付けた
ウィンストンテンカーテホンダとシャーペンティエ。
その一方でドゥカティ陣営は明らかに空気が冷たかった。

グールベルグはこの車体、とりわけリアサイドでは戦えない
とはき捨て、チームを離脱。他のドゥカティユーザーも
同じような印象を抱いて、二週間後のモンツァを戦わなければ
いけなかった。

本来はスーパーバイクで戦いたかったナンネッリ。
車体の出来やライバルとの違い、シャーペンティエとの大きな
差とホンダとドゥカティというメーカーがスーパースポート
クラスに対する熱の入れ方。大きな差異がそこにはあった。

しかし、彼には王者やウィナーに負けない大きなものを
有していた。それはモンツァを何度も走った経験と
あきらめの悪さとファイティングスピリットである。
そして、ドゥカティは車体はだめだめだったが、エンジンパワー
では他社と戦えるレベルであった。

モンツァに乗り込んだナンネッリ。とにかく勝つこと、
最大の敵であるシャーペンティエと藤原を逃がさないこと。
序盤にセーフティマージンを与えないことを頭に叩き込んで
グリッドに着いた。

スタートダッシュを掛けるナンネッリ。持っている全ての
経験と能力、才能を振り絞り、ウィンストンテンカーテの
二人に食らいつく。

そして、持っている唯一のアドバンテージであるエンジンパワー
を活かして、パラボリカからスリップストリームについて、
一コーナーで二台のホンダをイタリアンマシーンに乗る
イタリア人が抜き去った時にモンツァは爆発した。

その後も終盤まで優勝争いを展開。モンツァを熱狂の渦に
叩き込んだ。

残り二周でタイヤが終わってしまい、三位キープの走りに
切り替えた彼であったが、勝者の藤原以上の大歓声を浴びた。

あの時の感動が今でもよみがえりますが、今回のフォレスの
走りはナンネッリを思い起こさせるものでした。

経験を重ねたライダー。あるいは、様々なことを感知できる
ライダーというのはそれはそれでひとつの才能であり、
いいことに働くことも多いと思います。

しかしながら、そういったライダーほど、この道具やチーム力
がラップタイムに深く関わってくるこのスポーツでものごとが
よく理解できたり、察知できる故にトップクラスのライダーや
チャンピオンとの違いを認識できると思います。

このこと自体はいいことかも知れませんが、これが頭のいい
ライダーであればあるほど、あるいは長く走っている
人であればあるほど、競争力の違いとタイム差がどうして
生まれて、どういうプロセスを経て、どうなるのか簡単に
わかってしまいます。

そうすると、自然に走れる順位であるとか、ラップタイムを
自分で規定して、その範囲で走ることが起きてしまいます。

ヴァレンシアでのフォレスというのは、若いこと、
経験が浅いことは明白でした。

そして、ライバルとの道具の差や環境の違いなどを考えなかった
気がします。

そう、彼が考えたことは、とにかくスタートで前にでること。
シャーペンティエを逃がさないこと、何が何でもライバル
に食らいつくこと、自分のできる100パーセントの走り
をすること、そして、それをアイデアだけに終わらせずに
全うすることだったと思います。

彼の企ては半分ほどは成功を見ました。誤算はシャーペンティエ
にスタートでトップに立たれたこと、そして二周目にサーキット
レコードとなるタイムを叩き出されて、リードを広げられたこと
だったと思います。

しかし、彼の作戦プランというのは私は間違っていなかった
と思います。若くて経験がないことで彼が手にしていること
は元気の良さであり、挑戦していく心であり、ライバルの
道具や環境を考えないことでとにかく自分の走りや戦術を
考えそれを実行に移しました。

彼は昨年のモンツァの時のナンネッリのようにヒーローには
なれませんでしたが、素晴らしい走りをしたと思います。
カーテン、藤原、パークスという連中にとっては元気良すぎて
厄介かも知れませんが私はフォレスの全力少年ぶりを
評価しています。
SBK
 ベイリス10 
  チームメイトを凌駕し、現役世界王者を二度に渡り破り、
 鮮やかにダブルウィンを果たしたオージー。次はイタリアの
 モンツァだ。

 コーサー 9
  できうる限りの最大の努力をして二度の二位。難しい
状態になっても、きちんと高いレベルのタイムで三位以下に
明らかな差を見せ付けたレース。王者の力を見せた。

 ランツィ 8

 何かが足りなかったスペインでの彼。悪いながらも表彰台を
得るのはトップライダーの証か。本調子でなくても格下の
プレイヤーに負けないテニスプレイヤーのように見えた
スペインでのドゥカティスタ。

 マーティン 8

あのペトロナスを二戦続けて予選一列目に並べた速さは
見事。ちょっと前のコーサーの姿がダブって見える。

 ニエト 7.5

 地元で燃えていたフォンシ。カワサキのマシンでできる限り
の走りをして侮れない速さを予選で発揮。

 阿部 7.5

 実戦的なライダーというのは、目の前に明確な目標があったり
捕らえるべき獲物が存在すると、覚醒するのだろうか。
昨年に続いてヴァレンシアで才能のかけらを見せてくれた。
全てを見せてくれるのはいつになるのかわからないが、
何かをつかんだり、取り戻したら、速いライダーは速く
走れることを証明してくれた。

SS

 シャーペンティエ 10

アンタッチャブルの速さ。そして、強さ。穴のない週末を
送り、開幕三連勝。パドックではタイトルがどこで決まるのか
を話し始める関係者がでる始末。

 カーテン 9

R6を駆って、予選、決勝ともシャーペンティエに追いつこう、
追いつけないなら、その差を縮めようと献身的な仕事振り。
フランス人王者すらいなかったら、ウィナーは彼以外
いなかっただろう。

 藤原 9

手首の痛みをこらえながら、立派な走り。彼がトップライダー
であり、精神的にも強いものを持っていることを証明した
ヴァレンシアのレース。

 パークス 8

チームメイトの元気の良さを見ると点数が辛くなってしまう。
ひょっとしたらモチベーションが落ちているのかも。

 フォレス 8.5

とにかく走りが若くて、元気がいい。 
シャーペンティエとの差とか、道具の違いを考えるより、
とにかくスタートで前に出るんだという意思の強さと、
少しでも速く走りたいという欲望の大きさがあふれ出ている。

ハームス 8

 地味だが、素晴らしい走りとモチベーションの強さを
感じさせた。もはやチームナンバーワンか。

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