ファンが馴染んでいて求めるものがある。客のリクエストに応えるのが
商売として大事な一方で表現者が変化や進化を求めてやりたいことを
することで新しい発見や制作が生まれることもあります。

 岡本信人さんや石黒賢さんのはまり役というのは善人であり、多くの視聴者や
演劇好きに馴染んでいるのですが、その二人が悪役をやったらかなり怖かった
ですね。

 同じように時代劇でも現代劇でも悪役をやってきた八名信夫さんがNHK
の朝ドラの「純情きらり」で頑固だが人のいい親父をやったらいい演技に
驚きました。

 客がついているイメージでそれを求める雇用主であったり、客がいる
のですが、そればかりではなくて色々な役柄をやってみたいと
思う中で自ら売り込んだり、何か違った空気感を作品に入れたら面白いという
制作側の意思があったりして、それまでのはまり役とは違う役での演技が
実現化します。

 このことをお笑いライブというシーンで見るとコントでのはまり役とか
やりやすいネタというのは各芸人にあると思うのですが、そればかりでは
幅が広がらないと思う芸人は多いと思います。

 9日のなかの芸能小劇場で見た大村小町さんのネタというのは今まで
の彼女のイメージとは異なるようなもので彼女の実験性や好奇心や
冒険を感じましたね。これは私は岡本信人さんや石黒賢さんの悪役、
八名信夫さんの善人役を評価していた私は全面的に彼女の姿勢を支持しますね。

 ネタの中で受けている部分とそうでないところは存在したのですが、
失敗を恐れて新しいことをやらずに予定調和のなかで動いていたら何も
新しいものは生まれない。そして、成功体験よりも失敗の方が教科書になる。

 秋葉原のお笑いライブハウスの秋葉原ZERO-Gでのエル上田さんとの
トークセッションや今回のなかのでのネタなどには新しいことを
やっていこうという野望と冒険心が溢れていると思います。

 ある意味、ずっとフォークソングを歌ってきて、ラジオのパーソナリティ
をやってきた伊藤秀志さんが秋田なまりをネタにするなと親に言われてきたが
平井堅の「大きな古時計」を聴いて、これを秋田なまりでやったら曲に
ハマるのではないかと思い、事務所でギター一本で初期衝動のまま
一発録りして、CBCラジオに持って行って、朝のワイド番組にオンエア
させてもらって、一気に放送エリアの中部地方で商品化やリクエストの声が
殺到した時のことを思い出しました。

 実験と冒険や初期衝動が何かを生み出し、それが傑作や代表作になることを
私は知っています。大村小町さんの実験は私は面白いと思っています。

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