先日の「NHK新人お笑い大賞」に元バレーボール選手でスポーツキャスターや
女優や大学の非常勤講師を務めている大林素子さんが審査員をしていました。
私はこのことを肯定的に捉えています。

 かつて80年代のお笑いのオーディション番組の「お笑いスター誕生」で
いわゆる大御所で名人と言われる芸人さんが審査員として登場していましたが
同じ並びで放送回によってはガッツ石松さんや横森良造さんや水野晴郎さん
やタモリさんや近江俊郎さん、赤塚不二夫さんが審査をしていました。

 これは大御所と言われる人からすると異端に思えて面白いけれど
評価されないような芸人であったり、ベテランで名人になると評価基準が
技術面に偏るというところがあったから、当時のプロデューサーさんの
赤尾健一さんがあえて複眼的な批評軸を求めて正統派で名人芸と言われる
人以外に技術性に重点を置かずに視聴者目線に近い人であり、それでその
道でトップレベルのボクサーであったり、表現者を選んだということの
ようです。

 技術的には粗いかもしれないが、ネタが面白いとかいわゆる名人芸
とは明らかに距離があるが新しい発想を有していている新しい芸人を
発掘しようとした狙いが審査員の人選にありました。

 10月31日に開催、放送された「NHK新人お笑い大賞」で大林素子さんが
審査員をするというのはかつての「お笑いスター誕生」で赤尾健一さんが
名人や大御所以外の方に審査員をお願いして一軸ではなくて、複数の
批評軸を設定した時と同じような感性をNHKの番組スタッフが持っていた
のではないでしょうか。

 大林素子さんというのは元バレーボーラーであり、世界のトップに行くことの
しんどさや難しさと喜びや快楽を知っている人であり、練習や研究に
取り組んだ人であり、その人が引退後スポーツキャスターとして活動したり
非常勤講師として人に伝えることや表現することの楽しさと難しさを
体験的に理解していて、それでいてお笑いマニアで東京圏のお笑いライブの
会場に足を運んで今売れている芸人を見ながら、次世代の面白いお笑いに
対する視点を持っていて、実際に演劇の舞台に立ってコミカルな舞台も
経験している。

 そのあたりのことを知らない人はなんで大林素子さんが審査員なんだろうか
と思ったりするのでしょうが、放送業界やお笑いの世界では大林さんは
単なる視聴者ではなくて、演者の気持ちもわかり、お笑いライブに出かけている
ということが制作側にも演者側にも共通認識がある。

 そして、どうしてもお笑いの世界で長いキャリアを持っている人は
評価が技術面に偏る傾向があるのですが、そうではない視点を持つ人が
審査委員の中にいて欲しいとNHKの制作サイドにかつての日テレの
赤尾健一メソッドを持つ人がいたのかなと思いますね。

 私は「NHK新人大賞」で大林素子さんを審査員の一人に入れたのは
正解だったと思いますね。

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