ちょっと、今の時期に新宿に出かけることには躊躇してしまう。
人込みのある中歌舞伎町方面へ歩いて、人口密度の極めて高い小さな劇場で
お笑いライブを見ることは好きな演者さんが出ていても避けてしまう。
そんな私ですが、なかの小劇場で開催された「TEPPEN263 真夏スペシャル」
を見に行きました。

 かなり数の多い芸人さんが出ていたのは、多くのライブが中止とか無観客
での配信という形を取る中で持っているネタや作った新作を客前でやりたいと
考えている人が多いのかなと思いましたね。

 面白い芸人もそうでない人もいたのですが、私がこの日一番面白いと
思ったのはラムズでした。

 これはひいき目ではなくて、実際にそう思いましたね。また、私好みの
ネタだから私に刺さったのかなと感じています。

 この日のライブでも女芸人が何組か出てきたのですが、ネタを作りやすい
のか、持っている感性を生かしやすいからなのか、見た目や恋愛に関する
ネタをやっている人が多かった。

 それはさすがに女の子社会の半径五メートルのあるあるネタを求めている
人には刺さるのかもしれませんが、私には届かない。届くとしたら強い毒や
ワードのセンスが素晴らしかったり、コントであればリアリティのある
役割設定や大きな動きなどがあったらいいのですが、このなかの小劇場で
見た女芸人からターリーターキーを除いてそれを感じることはなかったですね。

 そんな中でラムズの二人は入社希望の学生と採用担当者の男性社員という
設定のコントをしていました。

 これが80年代の大映テレビを通ってきた私のような人や90年代の内館牧子
脚本のドラマを見ていたような人にはすんなりと見ることができる。
ある種の既視感と現実の社会での立ち位置のリンクと二人の高い演技力が
あって、女の子社会のあるあるネタなどにはある種のバリアを感じますが、
彼女たちの今回のコントはすんなりと入っていくことができた。

 そして、この日の出演者の方々は割に小さな劇場での活動が多いかと思う
のですが、ラムズもその中の一組でありながら、舞台のサイズをかなり有効に
使っていて、後ろの席の方々にも届くような暴れっぷりであったり、声の
張り方をしていた。

 おそらく彼女たちの中で舞台のサイズを活用しようとか、大きく動ける
ことを生かそうという頭の中で描いたことがきちんと具現化できていたの
だろうなと思いますね。

 同じネタを小さな規模の劇場でやるとなると、例えるなら中華料理の
料理人の腕は悪くないかもしれないが、家庭の火力のガスやIHで普通の
フライパンで作った料理となってしまう。決してまずくはないし、一定以上の
クオリティだが、やはり業務用のコンロの強い火力で中華鍋で作る料理が
料理人の持っている能力をコンプリートに発揮できる。

 ラムズがこのネタをこの劇場でやったというのは、まさに動きであるとか
舞台の奥行や客席の構造などを考えて、今回のこの場所ではこのネタが
生きる。まさに中華料理店の厨房の強い火力のガスで中華鍋を使った料理
ができると思ったのではないでしょうか。(風間春菜のツィッターを見ると
ライブ終わりの打ち上げにラーメンとか揚げ物を食べている写真をよく
見かけて、デビュー時代から明らかに服のサイズがMからLLまで変わった
ところがよくわかる。まぁ、その太ったことがコントの役割設定にリアリティ
を与えていることもあるので、自らの身体的な条件を理解して、笑いに変えて
いることも容易にわかる)

 そんなわけで、面白いかどうかの判断にはメンタルとか環境というものも
あるのですが、この日一番劇場のサイズであったり、客の理解力などを
考えてネタをやりきったラムズが一番面白かったなと思いますね。

 

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