街中を歩いていて、有線やラジオから流れてくる知らないミュージシャン
の未知の曲がいいなと思って、当該の曲を聴くようになったり、過去の作品
に興味を持つようになったり、お気に入りのアーティストになったりする。
そういったことはお笑いライブにも当てはまることがあり、好きな芸人を
目当てに見に行ったところで多人数が出演するお笑いライブで知らなかった
芸人さんのネタを見て興味を持ったり、好きになったりする。中野Vスタジオ
という小さな劇場に出かけた私にとって持っているお笑い脳と悪魔性を駆使して
ネタを発表していたそるとさんという存在を知ることができたのは、望外の
喜びでした。

 お笑いグルメとしては雑食属性があるから、重厚な古典落語も好きだが
見た目を使った卑怯な笑いも面白がるし、世の中の出来事を内省的に考えて
毒を持って料理するようなネタも好きな私にとっては彼女の今回のネタは
面白かったですね。

 女芸人でフリップ芸をするという人で印象深かったのは、今から
三年前のabemaTVでのロリィタ族とメルヘン須長さんだったのですが
https://abema.tv/channels/special-plus/slots/8oCwnJ57qzvTcK
そるとさんにはロリィタ族のような今まで付き合ってきた芸人たちとの
暴露話やメルヘン須長さんのようなモノマネを利用するようなところは
ない。

 しかしながら、社会で起きていることを毒を持って扱ってみたり、
見ている側のお笑い脳に刺さるような言葉のチョイスをして、笑いを
取ろうとする。

 TBSラジオのヘビーリスナーが今回のそるとさんのネタを見たら、かつての
「コサキン」の深夜時代の90年台の数々の番組でのアナーキーな二人の
パワーと「意味ねぇ、知らねぇ、わからねぇ」世界を理解して、ネタにして
いたリスナーのテイストを部分的に継承しているように思います。

 あるいは今日の深夜放送での「山里亮太の不毛な議論」での山ちゃんの
言葉の選択であったり、ネタの運び方などの影響もあるのかなと思ったり
します。

 そんなことを想像できるようなネタというのは私にとって大好物ですし、
事象を深掘りしながら、自らの感性とお笑い頭で生まれたネタというのは
私の脳みそに刺さりますね。

 この時期になるとパリダカールラリーの創始者のティエリー・サビーヌ
があの過酷なラリーを創案し、ラリーで走る各国政府やスポンサーや
車やバイクのメーカーと会議と交渉を重ねて、いよいよ公式発表となり
参加者を募るときに言った名セリフの

 「冒険の扉を開くのは君だ。君が望むなら連れて行こう。」という言葉を
思い出したりするのですが、コサキンワールドとか山ちゃんの世界という
ものというのはある種の理解力や行動力や発想力と色々な意味での「力」と
いうものがないと理解できないものだし、笑えない。昼間のテレビやラジオ
での彼らとは明らかに違って、本来持っていてやりたいことをやっている
のが彼らの深夜でのラジオ番組であって、ある種、一つの異なる
高みを目指そうとして、冒険の扉を開いた人に過剰でアナーキーなパワーを
持つ笑いに触れることができて大笑いできることになると思います。

 そるとさんはこのネタやスタイルを作るのに色々なお笑いを見てきたり、
研究して来たり、自ら作ろうとした時にある種の過剰なエネルギーであったり、
半径五メートルの女の子社会の空気感から離れたり、悪魔性を持ちながら
見つめていたのではないか。モーリタニア砂漠を走りたいと思って
ダカールラリーに参戦するライダーやドライバー、コサキンや山里亮太の
発するパワーを女性でありながら面白がれる感性を持っているのではない
でしょうか。(コサキンも山ちゃんも圧倒的に男性リスナーが多い)

 私が見たいのは天才のひらめきであったり、凡人が作れない発想の発露
であったり、普通の人であれば、とんでもない努力をして生み出すもの
なんですが、そるとさんには私のお笑い脳を突き刺す発想力があると
思います。

 彼女にカワイイと思われるより面白いと言われたいという強い欲望があり、
悪魔性や強い体力と精神力があったら、これからがとても楽しみだなと思い
ますね。

 地味で真面目そうなOLがとんでもなくエロ偏差値が高かったら、困惑
しながらもうれしくて、はまってしまってメロメロになるように、
「フツウの女性」がお笑い偏差値が高かったり、持って生まれた発想力
があったり、生まれ持った才能がなくても、研究熱心でいいネタを作ろうと
したり、トライ&エラーをしながらクリエイトする姿というのは私の
胸を打つものがあります。


 

 


 

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