イタリアのレーシングチームやメーカーを手伝っていたら、イタリアの
レース業界の方々とつながりが強くなるのですが、同様のことはチェコにも
言えて、チェコ人のライダー、メカニック、チームスタッフ、ジャーナリスト
と関係が深まればチェコのレース関係の情報が早く入ったり、お手伝いする
ことも多くなる。私とカレル・アブラハムというのは立ち位置は各年度で
異なりましたが、割に近い関係にあり、親しみを持ってきましたが、彼の
レース人生の大きな岐路に立っています。
https://www.corsedimoto.com/motomondiale/motogp/motogp-abraham-avintia-contratto-risolto-via-mail-la-rabbia-del-pilota/

すでにレースファンの方々はご存じのように彼はチームアヴィンティアとの
契約が残っていたのも関わらず、おそらくチームに加入するであろう
ヨハン・ザルコのシートの為にチームを放り出されました。

 チームとの契約というのはそう簡単にないがしろにできるものではない
わけで、このチームとチェコ人ライダーとの離別ということに関しては
大きな政治的な影響力の行使があった。あるいは、業界内関係者でも
積極的な関与はなくても、容認するということがあったと思います。

 成績の出ていないライダー、クラッシュなどの影響で参戦数が少なく
なったライダーにチームやメーカー、スポンサーが不満を持ち、契約内容を
見直すということはあると思います。しかしながら、今回のこの一件は
レース業界に興味を持っているがどうしようか考えているようなスポンサー
や企業にとっては踏み出した足を止めるようなことになるかもしれませんね。

 MotoGPの拡大政策ということと日本メーカーのアジア圏でのレース
開催希望やハンガリーグランプリの2022年のカレンダー復帰、キミリンクの
建設とフィンランドグランプリ開催機運というものがあるなかで、チェコ
グランプリというものの近未来が危ぶまれている中でチェコ人の唯一の
MotoGPライダーの消失ということとチェコグランプリの開催の不透明さ
が絡み合っている現況でカレル・アブラハムはMotoGPからの引退を発表
しています。

 ただ、これが果たして彼がレースシーンからの引退ということを意味する
のでしょうか。

 マックス・ビアッジ、マルコ・メランドリやヤクブ・シュムルツが
グランプリのサーキットを離れて向かった先はスーパーバイク世界選手権
でした。

 マイク・ディメッリョ、カレル・ハニカ、ニッコロ・カネパが活動に
選んだのは世界耐久選手権でした。

 ブルノサーキットがMotoGPのレース開催権を失うということになった
場合、年に一回は世界選手権格式のレースを開催したいというのは間違いない。
そこにチェコ人ライダーが参戦してくれたら観客動員やレースウィークの
盛り上がりという部分で大きな力になることは確かである。

 イタリアのGPOneを読んでいたら、唯一の可能性としてチームバルニで
ドゥカティを走らせるという記事を目にしました。
https://www.gpone.com/it/2019/11/26/sbk/karel-abraham-lultima-carta-e-la-superbike-con-ducati.html

 また、考えられるシナリオとしてチームテンカーテは二台体制での
活動を考えているが、充分な予算が確保できないでいる。そこに資金持込み
ライダーがシートを確保できる可能性はある。

 さらに他の可能性としては世界耐久選手権で色々なマシンを経験して
一定以上の基準をクリアしているライダーを必要とするチームもある。

 ヨナス・フォルガーがテストライダー兼リザーブライダーという
職に就けないことが分かった時点でスーパーバイク世界選手権あるいは
世界耐久選手権ということを考えたが、それが叶わなかった時に高い
レベルの国内選手権での活動を考えて、ドイツ選手権でヤマハ系のチームで
R1を走らせることに合意して、スーパーバイク世界選手権のオランダ、
ドイツ、バルセロナの3レースをワイルドカードで走るというチームの
活動に同意して、2021年に備えるという選択をしました。

 国内選手権でレベルの高いところというのは前述のドイツの他に
イギリス、日本、スペインが挙げられるのですが、そういったところで
戦いながら、ワイルドカードでスーパーバイク世界選手権のレースに何レース
か参戦ということもあるかもしれません。

 カレルと彼の両親や彼女のことを考えると非常につらい思いを抱いて
いますが、その一方で彼にとって何か彼の能力が見られる場所が見つかって
欲しいと思っています。

 MotoGPが開催できないとなった時にスーパーバイク世界選手権の開催を
考えているブルノサーキットも彼とは深いつながりを持っています。
彼のレース人生とブルノサーキットの来季以降のことも気にしている人も
多い。一人のライダーの去就がその国のレースシーンに大きく影響する
わけで明るいニュースを多くのチェコ人が望んでいます。

 

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