土曜日のもてぎの続きです。

 MotoGPのヤマハファクトリーよりも元気に見えるのがペトロナスの二人
である。ルーキーだから年齢が若いということもあるし、チームもいい体制を
作れているのだろうがそれ以外にも理由があると思う。

 ここのところ強く思うのは93年のウェイン・レイニーがヤマハの車体が
気に入らなくて市販のROCの車体を用いた時のことですね。

 当時のヤマハがパワーがアップしているエンジンに対応するために剛性を
高めることやライダーのリクエストに応えるために原材料から色々開発を
進めたのだが、パソコンのデータから導かれた理想的な車体というものは
剛性の強さから生まれたものだが、コーナーリングとかライダーのフィーリング
というものを考えると一定の柔らかさが必要であったり、メーカーや
エンジニアがいいと思ったものがライダーには合わなかった。

 このあたりはテクニカルグループの考えや理論上の適正値というものが
あってもライダーの好みとかライディングスタイルとかサーキットの
路面係数も関係するからパソコンの画面上の正解がそのままご名答とはならない。

 また、単独走行ならいいが、競り合いだと乱気流による空力の影響
などもあって、かならずしも研究所やテスト走行で考えられた最適解が
サーキットでは最適とはならないこととなってしまう。

 そういったところで、フランスのフレームビルダーのROCが作った
車体というのは予算がないから、前年でいい走りだったことの延長線上で
作られたものだから、新規に何かを加えたことでの劇的な進化はないかも
しれないが、外した時のようなネガティブな要素がない。

 また、8人のライダーが使用するということでどんなライディングスタイル
でも対応するようなマシン作りをしていたので、癖がない車体なので
ライダーとしては扱いやすい。

 そんなわけで、扱いにくいライディングスタイルに合わないということで
当時のエースライダーのウェイン・レイニーがヤマハに改良を要望したが
思うように車体が仕上がらなくて、ROCの誰にとっても乗りやすい、扱い
やすい車体を持ち出して、これを使って思い通りの走りが可能になり
勝てるようになった。

 モンスターヤマハのマシンというのは昨年の敗戦を経て、技術部門の方々
が原材料や電子システムといったところに手を入れて、ホンダとの大差を
縮めて、凌駕しようとしたがエンジニアの考える最適解や最良の数値が
必ずしもライダーが満足できるものではなかったり、ライディングスタイルとは
合わないということになってしまっている。

 一方のペトロナスのマシンというのは基本的には型落ちと言われていて、
何か新技術や新しいシステムを入れるにしてもモンスターヤマハの方が
初めて取り入れて、その後、部品やシステムの導入に資金的な裏づけが
確認できたらようやくペトロナスが入れることができる。

 型落ちであるというと前の年から大きな変化がないから、昨年のデータを
基本的には有効活用することができる。そして、昨年のPCの記録を見て、
若いライダーに比較対象が理解しやすい指導をすることができる。

 まぁ、色々な意味で扱いやすいマシンを成長過程にある若いライダーが
勢いに乗って走っていてファクトリーヤマハよりも快足振りを見せている
ような気がする。

 そのあたりのことをペトロナスヤマハのヨハン・スティゲフェルトと
話しているとこのスウェーデン人は静かに微笑みながら否定することなく
聞いていました。

 日本グランプリでバレンティーノ・ロッシと日本人ライダーとの関係性や
かつて活躍していた日本人ライダーの過去のハイライトシーンの映像を見る。

 まぁ、バレンティーノ・ロッシがホンダ時代に警戒したのが加藤大治郎
なんですが、初めに乗っていたときに思ったのが小さいバイクだなという
ものでした。

 大柄で手足が長い彼にとって、恐らく加藤大治郎が乗りやすいバイクだと
思ったことは間違いないことでしょう。

 同じことはホンダがダニ・ペトロサに250ccのタイトルを獲らせるために
小さな車体のマシンを用意したから、体格でふた周り違うロベルト・ロルフォ
にとっては扱いマシンだった。

 今年のホンダで勝てているのはマルク・マルケスなんですが、世界最高峰
クラスなので高い技量を持っているライダーの集まりなんですが、勝てている
のはマルケスのみ。マシンがマルケススペシャルになっていて彼の体格、
彼のライディングスタイル、彼のマシンの好みに合わせてマシンを作って
いるわけで、他のライダーが乗っても彼ほど速く走れない。実際に業界
的にライダーとしての単純に走る才能に関しては世界のトップスリーに
入るホルへ・ロレンソがタイムも順位もマシンやタイヤが同じでありながら
ライバルに大きく離されているのは理由があると思います。

 クセのあるアルコールがおいしく大満足で味わえる人には最高の酒なんですが
とりあえずビールの人にはあわなくて楽しく酔えないので捨てたくなること
があるのでしょうが、レース専用車両のオートバイにも同じことが
言えると思いますね。

 色々なエンジニア、メカニックとライダーとマシンの相性、
暴れ馬を扱えるのが名ライダーなのか、扱いやすいマシンの素直に走らせて
いいタイムを走らせるのがいいライダーなのか、タイヤワンメイクでない
時にサイモン・クラファー、ベン・ボストロム、原田哲也がダンロップで
速いのにミシュランになったら後方で走っていたのはなぜなのか。

 また、業界評価が低かったbituboのサスペンションだが、かつてヤマハがR6で
スーパースポート世界選手権で世界チャンピオンになったのは製品の品質
が上がったからなのか、あるいは当時のチームが使ってやっているという
ことでライダーとチームの発言力が大きくて、ライダーが求める品質や
セットアップをbituboサイドが応えてきたからで、もともとの製品レベルは
どうだったのか、あるいは良くなったから当時のヤマハのスーパースポートの
チームが関係を求めたのかなどとチーム、メーカー、各部品メーカーなどの
相性や関係性などをうだうだ話して、土曜日のパドックを離れる。

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