かつての70年代から90年代までプロレスの世界でワールドチャンピオン
として活躍したハーリー・レイスさんが亡くなりました。ステロイダーで
なくて、かつてのWWEが世界を凌駕する前の世界チャンピオンであり、
レイスモデルと言われるチャンピオンベルトが似合う世界王者が世界中の
レイスファンから追悼のメッセージが寄せられています。

 プロレスの複雑さや難しさを伴う面白さや楽しさを教えてくれたのが
ハーリー・レイスだったと思います。

 アメリカの各地方だけでなく、プロレスの興行が行なわれている各国へと
防衛戦を行い、各地のローカルヒーローの強さを引き出し、頑丈な体を持ち
ながら、怪我をしないしっかりした受身で相手の攻撃を受け、チャレンジャー
の強さを引き出しながら、反則裁定で防衛したり、切り返し技で辛くも
防衛したり、持っている戦術能力と体力を用いて時間切れドローで試合を
まとめたりと地元のヒーローが次に戦えば世界最高峰のタイトルを奪える
のではないかという気持ちを抱かせて、次の興行につなげたり、観客動員
に発展させる。

 これをやるには相当な体力であったり、精神的にはかなりの覚悟が必要
とします。また、それまでやってきたスタイルと離れていると、それまで
ついていたファンを捨てる可能性もあります。(AWA世界チャンピオンに
なって、チャレンジャーに攻めたてられて、オーバーザトップロープ
で苦渋の表情でベルトを抱きしめるスタン・ハンセンを見て、こんなのは
ブレーキの壊れたダンプカーや不沈艦ではないと思った人も多かった
ことでしょうし、そのスタイルでやっていて客の呼べない世界チャンピオン
ということでプロモーターからの評価も低下していました。)

 ハーリー・レイスという人はプロレス内における格闘技の技術や
ケンカ上等の精神力、全米各地やプロレス興行が行なわれている
NWA世界選手権の試合を開催する権利を有しているところを飛び回る
体力を持ち、プロレス興行の仕組みであったり、リング上での受身の
上手さを持ちながら当時の厳しいタイトルロードを歩んでいました。
そして、他のチャレンジャーにタイトルを奪われながらも、前述の王者が
有する資質とプロモーターの高い評価で何度も王座を奪還しました。

 私がハーリー・レイスの一見、強そうには見えなくてタイトルを防衛する
ディフェンスに徹している王者という印象を改めたのが82年の後楽園ホール
でのUN選手権でチャンピオンジャンボ・鶴田に挑んだ試合なのですが、
この試合はNWA王者としてディフェンシブに戦い、いざとなったら反則
負けで試合を終わらせて、地元のヒーローのファンのヒートを受けながら
汚い言葉を浴びせられながらベルトを手にして控え室へ戻るというスタイル
とは大きく異なりました。

 若く体力もあり、全盛期直前のジャンボ・鶴田を相手に常にオフェンシブ
に試合を進めて、ハーリー・レイスの持っている格闘技術やケンカ強さ
を発揮して、最後は相手の意表をつく技で試合展開の上手さと戦術の
巧みさと若い鶴田に対して攻め疲れを見せずにスリーカウントを奪い、
日本のプロレスファンが王者が持っている懐刀や真の実力やチャレンジャー
としての彼と世界チャンピオンとしてのレイス像などを考えて、プロレス
というのは単純ではなくて、複雑に入り混じるものがあるなかで、
プロレスラーがやりたいことをする試合もあるが、プロモーターの要請に
よって、客を満足させるものもできて、色々なスタイルができたり、
強そうに見えない試合を続けていても、いざとなれば強い王者を圧倒する
試合をしたり、持っている実力を発揮するものなのだなと思いました。

 プロレスの色々な部分を教えてくれたハーリー・レイスの訃報を
多くのプロレスファンが悲しんでいます。今日はギャラクシーエクスプレス
を聞きながら、彼のことを追悼したり、彼の試合を見ている人が世界中に
いることでしょう。

 天国でジャイアント・馬場さんに握手をしようとして、馬場さんに
拒否されているのでしょうか。ダイビングヘッドバッドをしようとして
デッドリードライブで投げられているのでしょうか。ステロイダーではなくて
真の実力を持っている彼が作られた筋肉を持って、観客人気や動員力で
チャレンジャーとなっている相手がプロレス内から外れる攻撃をしてきた
時に『普段とは違う厳しいヘッドロック』や『痛みがじかに伝わるパンチ』を
使って、相手を黙らせて、正しい業界秩序を知らせているのでしょうか。

 今日は彼のキャリアやここまでの試合を振り返る一日にしたいと
思っています。

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