諦めが悪いことは美しいこと。できない理由を探すのは醜いこと。
サーキットには美しいファンタジィと醜いリアリティが存在しますが、
ヤマハの傑作バイクの典雅なR6を流麗なコーナーリングで一年間走った
ドイツ人が栄光をつかみました。

 まぁ、去年の今頃には考えられなかったことですね。
昨年まで所属していたMoto2のチームの活動縮小に伴い、浪人の危機に
陥った彼はMoto2のシートを探すも、契約に結びつかず、スーパースポート
世界選手権への転身を図りました。

 近年のレース界ではライダーに持ち込み資金かスポンサーを求めるのが
当然のようになっていて、彼が交渉したチームが求めたのは15万ユーロでした。

 トップクラスで走ることができたら、スポンサーも広告効果の高さを
感じて支払うことができるのでしょうが、彼にとって難しい状況だったのは
今年のシーズンには彼の母国でのレースがないこと。そして、彼は
いいライダーですが、初めてのR6とピレリタイヤ。上位で走れるかどうかは
不透明でした。

 そんな難しい状況の中でクラウドファンディングという手法も用いて
チームが求めた15万ユーロを何とか二月の初旬にかき集めて、ぎりぎりの
タイミングでメルボルン行きのエアチケットを買いました。

 タフな戦いと経験のないバイクとマシンで苦しい戦いが強いられるかと
思いましたが、彼は卓越したアジャスト能力と速さを見せて上位陣での
走行をして、優勝も果たしました。

 シーズン最終戦を前に彼はポイントリーダーでジュール・クルーゼルに
5ポイント差を保ってカタールにやってきました。

 何かがあれば、逆転されるポイント差の中で彼は勝てない時はできる限り
の最良の順位で走るという全てのワールドチャンピオンが有しているメンタリティでロザイルサーキットを走りきりワールドチャンピオンとなりました。

 彼にとってMoto3に続いての二度目のワールドタイトル。しかし、この
栄光はかなり特別なものとなりました。

 昨年のこの時期にはこの世界チャンピオンになるということは想像できな
かったことが現実のものとなりました。

 本当に私にとってもうれしい展開となりました。

 来年のスーパーバイク世界選手権のカレンダーはまだ決まっていませんが
彼の世界タイトル獲得はとてもドイツのレース界に大きなインパクトのある
ものですし、いい影響を及ぼすことでしょう。

 おめでとうサンドロ・コルテーゼ。

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