トルコとアルゼンチンの通貨が暴落して、世界の為替相場がどうなるのか
不確実。米中の通商をめぐる緊張はどうなるのか不透明。そして、
原油価格とガソリンの値段はいつまで上がるのかわからない。最近の
世界の状況は青空ではなくて、曇り空でどんよりとして不確かなことばかり
で透明感や明快さがない。しかし、そんな世の中で千川びーちぶという
小屋で新規のレギュラーとしてラムズが舞台に立ち、確かな演技力と熟成
させたネタで笑いを取り、企画のコーナーで少々卑怯な笑いを生み、
彼女達が抱えているひいき客が駆けつけて観客動員を増やしたのは極めて
明快にして、はっきりした美しい事実でした。

 今回のラムズの舞台にかけたネタというのは何度か見たものでしたが
まるでモータースポーツの世界で優れたバイクに必要な修正を行い、
不必要な部分を削ってよりとんがって、より鋭利になり、車体性能を
高めることと同じで同じネタでありながら、必要な部分を加えて、
不必要と彼女達が考えた部分を削っていいネタに仕上がっていました。

 そして、舞台のサイズということをしっかりと計算して、迫力を
生み出していました。その迫力というのは二人の体から生まれているもので
太ることで女の子社会内の幸せから遠のくかもしれませんが、お笑い
芸人としては母親役にも中学生の男を演じるにしても説得力があり、
太ることは笑いを取る前には極めて役立つことを身をもって証明して
いました。

 そして、企画のコーナーでは彼女達のオフタイムや芸人世界のきれいな
部分と汚い部分を掘り起こして笑いにしていました。

 以前、ラムズの風間春菜だけが出演していた『はじめちょろちょろ
中ぱっぱ』というライブで芸人が集まって大喜利をやった時に風間春菜と
他の出演した芸人の苦手な部分があり、サッカーで例えると決定力がない
のに、全ての芸人がゴール前に集まってシュートを打つような展開
(それも力のないようなシュート)で面白くないうえに疲れるということ
があったのですが、今回の企画のコーナーではラムズの二人を温かく迎えた
ほかの芸人がボールをまわしてゴールに向かっていき、ちゃんとシュート
を決めるようなパスサッカーのような笑いの取り方をしていて、そこには
美しいサイドチェンジやドリブルがあり、流麗な展開力およびチャンスの
場面にしっかりとシュートを打つ野心と決定力が存在していました。

 まぁ、そんなわけでラムズという、このライブにおけるニューカマーと
ここまでレギュラーで出演していた芸人が見事なハーモニーを奏でて
いたというか、個人技を生かしながらも大きく展開してシュートを打つという
チームワークが存在して美しい笑いのハーモニーを創造していました。

 そんなわけで楽しい二時間を過ごしましたね。

 単独のネタということではホタテーズが面白かったですね。
ここのところ『冗談騎士』で彼らを見る人も多いかと思うのですが、単独ライブ
を開催した芸人というのは二時間のライブで10分から15分のネタを
四つとか五つ用意しなければならない。

 そこでじっくりと今までの延長でネタを熟成させることもあれば、
それまでやってこなかったタイプのネタを作って発表することもある。

 そして、そこで受けたネタとか手ごたえを感じたものを今回のように
一組が5分程度の枠があるなかで、凝縮していいとこどりでネタを作成
すれば、大きな笑いを生み出すことができる。

 単独ライブ以前も面白かったのですが、ホタテーズは明らかに実力を
アップさせてきたり、単独ライブで感じ取った感覚を生かしていると
思います。

 また、今の2018年の時代の中で彼らのやっている漫才というのは
非常に異質に感じる人が多いと思うのですが、それはダウンタウンと
ウッチャンナンチャン以前と以降で漫才というものが大きく様変わりして
さらにM1以降のテレビでの漫才というものが変化している。

 ホタテーズの漫才は一方が八割ほど話して、二割がツッコミを入れるという
形なんですが、これは80年代のB&Bであったり、紳助竜介の方法論と同様
のものですが、これが今の時代で見ると非常に新しく感じる。そのリズム感
によって、ネタの中のクズエピソードが耳にすんなりと入りやすくて
笑いに繋がっているし、80年代を通過していない客には新しいスタイルの
漫才に思える。
(このあたりのことは以前、このブログでも丁寧に取り上げています。
http://yasumarzo.diarynote.jp/201803210415399124/

 そういった時代背景と偶然性にネタの面白さと彼らの実力が加わり、
大きな笑いを生んでいましたね。

 楽しい二時間を過ごし、さらにライブ終了後ラムズの二人とネタの
感想を話したりと素敵な時間を過ごした私でした。


 


 

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