九回ツーアウトからのソイロ・アルモンテの逆転打でリードして、
クローザーが三者凡退で抑えて、岩瀬が勝利投手という記録となり
嬉しいのですが、素直に喜べない私がいます。

 試合途中でメッセージャーの投球が松井雅人の頭部に向かい、担架で
運ばれて、途中欠場となりました。

 搬送された病院での診断の結果はあごの打撲ということでしたが、後遺症が
ないのか、あるいは様々な影響がないのか心配ですね。

 私がいつも、この手のスポーティングアクシンデントの際に思うのは
かつて世界グランプリの500ccとスーパースポート世界選手権で走っていた
ファッビオ・カルパーニというライダーのことです。

 開幕前のテストでのタイムも好調でマシンはパワーに劣るものの、
250ccで走っていた彼にとっては500のV2のマシンというのはなじみやすくて
卓越した才能を感じさせるシーズン前でした。

 そして、やってきた鈴鹿の開幕戦。

 彼は200キロオーバーでクラッシュしてしまいました。そして、彼はその後
明らかに才能を失ってしまいました。

 気持ちは速く走ろうとしている。しかし、脳みそがあるスピードからは
ストップをかけるように体に命令してしまう。そして、恐怖感というのが
ハイスピードのクラッシュから抜けることがないまま、後方を遅いタイムで
走ることになってしまう。

 同じ年のホンダV2ユーザーで信じられない素晴らしい走りを見せて、
翌年からステップアップとなる成績を残したレジス・ラコニと見事な
失地回復となったアレックス・バロスとは比較にならないタイムと成績と
なってしまいました。

 新横浜や浜松などで目の前をのぞみが走るところに出くわす時に200キロ
近いスピードが出ていると思うのですが、あれよりも速いスピードでクラッシュ
してしまっても、すぐに恐怖心を拭い去ることができるライダーとそうでない
ライダーには一流と二流の違いがあると思います。あるいは一流であっても
転ぶ前のタイムに匹敵するタイムを出せないと一流から二流になってしまう
可能性が高いと思いますね。

 ファッビオ・カルパーニはその後、カテゴリーを変えて、再出発しました。
ドゥカティのマシンでスーパースポート世界選手権への参戦をして、サーキット
で会うことも多かったのですが、オランダのアッセンの時に彼が予選初日
でタイムが出なくて悩んでいて、私が手伝っていたジモータースポーツの
マウロ・サンキーニと所にコースの攻略法を尋ねにやってきました。

 そこでコースのレイアウトのコピーを見ながら、どこのコーナーを何速
で走っているのか、どんな感じでアクセレーションをしているのかを
聞いていたのですが、あるコーナーでウチのサンキーニが5速で走っている
区間をカルパーニは何と三速で走っていました。

 マシンやライディングスタイルの違いで一速違うのはあり得るのですが、
ライバルが五速で走っているところを三速というのは考えられない。
これはカルパーニ自身、かなりのショックを受けていましたね。

 結局、あの難しいサーキットでライダーのスキルがタイムに反映する
アッセンで彼は予選落ち。事実上、このレースが彼にとっての引退レースに
なりました。

 速さがあり、勢いを持って希望を胸に秘めて世界選手権レベルにやって
きたものの、一回のバイオレントな200キロオーバーのクラッシュが彼の
レーシングライフの幕引きになりました。

 松井雅人が強くて速いボールをインサイドにえぐられても気持ちが折れない
のか。あるいはキャッチャーとして相手の打者にぶつけてはいけないという
気持ちが入りすぎて、アウトサイド一辺倒の配給を自軍のピッチャーに要求
してしまわないか、ボールを当たられた場所の回復具合と同時に彼の
ファイティングスピリットやキャッチャーが有する底意地の悪さに変化が
生まれないか。仲のいいライダーの一気の凋落を身近で見ているだけに
気になるところです。

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