東京から名古屋の実家に着き。一晩空けて、鈴鹿サーキット入り。
今回、何とかパドックパスが手に入り、パドックの住人となる。

 それにしても暑い。暑くなければ八耐らしくないとも言えるが、初めて
八耐に行った2000年に比べて暑くなっている気がする。あの時はホンダの
ワークスホンダのマシンを手に入れるという条件なら二年は八耐に来てくれ
というリクエストにバレンティーノ・ロッシが応じて八耐で彼がホンダの
リッターバイクを走らせた時だった。あの時よりも酷暑を感じる。

 パドックをまず歩いてみる。ヤマハが今回もファクトリーチームを結成して
アレックス・ロウズとマイケル・ファンデルマルクを招聘しているのは
二人のスーパーバイク世界選手権の契約との絡みもあってのことだが、トップ
ライダーが参戦するというのはスーパーバイクの日本ラウンドがないことを
考えると大変意義のあることだと思う。そのヤマハのピットはファクトリー
ヤマハとヤマハオーストリア、今回が最後の参戦となるのではないかと噂
されているGMTヤマハと連なっている。ヤマハの傑作バイクのR1の20周年
ということもあり、お祭り感が漂っている。

 少し歩いてBMWのユーザーチームが集まっているエリアに着く。このブログ
のファンを昔からごらんの方はご存知でしょうが、私は酒井大作君のファンで
あり、彼のドイツメーカーとの挑戦を好意的に見ているのですが、パドック
でのホスピタリティユニットなどを見ると、チームの規模の拡大とか
スポンサーやサポーターと呼べる方々の増大を強く感じる。小さなチームの
大きな挑戦というものがどのカテゴリーでもあるのだが、志はそのままで
規模が大きくなってきているように思える。

 再び歩いているとピレリタイヤのジョルジョ・バルビエール氏と再会。
実に久しぶりだが、スーパーバイク世界選手権でレース毎に会っていた時
のように言葉を交わす。

 彼のようなレース部門のマネージャーが来るというのはピレリのユーザー
チームが力を入れているということの現われだと思うのですが、実際に
彼もライバルのタイヤメーカーの契約しているチームの実力や速さを実感
しながらも勝つためにここにきていることを話してくれる。彼曰く、
人的にも物的にもイタリアサイドもピレリジャパンも力を入れていて、
マテリアルもリソースも技術も戦術もベストなものを用意しているという。
ただ参加しているとか業界的な地政学の中で仕方なくやっているということとは
違うというとなると私のレース頭がクソ暑い中だがフル回転となる。

 古くからのモータースポーツのファンの方々は89年にF1にピレリが参戦
した時に一度使ったタイヤをサービスユニットに戻ってから剥きなおして
再び使ったり、小規模チームの軽量コンパクトのV8エンジンを使っている
チームと契約を結んでグッドイヤーユーザーチームに対して意外な強さと
速さを見せた時のことを記憶している人も多いことでしょう。

 2000年代のスーパースポート世界選手権を記憶している人なら
ダンロップ、ミシュランが参戦している中でテンカーテホンダと組んで
ファビアン・フォレというライダーにとって扱いやすくて、オランダの
チームが求めているタイヤを一極集中で供給してタイトルを奪い、その後
濃密な関係の中でタイトルを奪っていったことを覚えている人もいるでしょう。

 実力的に今回の鈴鹿でトップテンの中には入るモリワキと組んで勝つ
ために来日していてレーシングマネージャーが人的物的なリソースも
ぶっ込んできていて、マテリアルも戦術もあるというとなると何か特別な
タイヤと戦術頭があると思いますね。

 台風が直撃となったり、鈴鹿山麓のサーキットでのレースを考えると
ウルトラレインタイヤと呼べるようなタイヤをぶちこんでくるとか
この金曜日のセッションでも赤旗が出ることが多かったのですが、日曜日
でセーフティカーが出動することを考えて、ミディアムタイヤに比べて
三秒落ちるが30周走るようなウルトラハードなタイヤを使い、そこで
さらにセーフティカーが出るなら、5800メーターを越える長いサーキットで
ピットインに時間がかかるレースの中でピットストップをライバルより
一度、上手くいけば二度省くことで戦うことなどが想像できる。

 ジョルジョ・バルビエールの勝負手とモリワキの戦略がきっちりとはまって
能力のあるライダーがそれを理解して思い描いた戦術を遂行できたら面白い
レースになるのではないか。

 彼のF1でグッドイヤーに立ち向かっていった時のことやスーパースポート
世界選手権で優れたライダーであるファビアン・フォレを味方にして
ダンロップやミシュランユーザーを叩いてチャンピオンになったことを
見ている人はジョルジョ・バルビエールが優れた戦術家で指揮官であることは
明確にわかります。私はバイクの世界でモンツァやアッセンで信じられない
高速コーナーのグリップでフランス人ライダーが駆け抜けていった時のことを
昨日の時のように覚えています。

 何かモリワキと組んだピレリの勝負手が彼と話していて気になりましたね。

 その彼と世界耐久選手権にセパンが2019-18シーズンのカレンダーに
加わることやアレックス・グラミーニがピレリのレーシング部門に加わり
ライダー目線でいいアドバイスをくれたり、スーパーバイクのタイラウンド
がどうなるのか、新たにカレンダー入りするサーキットはどこになるのか、
チームやタイヤメーカーにとって適正なレース数はどれくらいなのか
タイヤメーカーにとって優れたライダーというのはどういったライダーなど
かを話題にする。

 私にとってのミッシェル・ファブリッツィオや彼にとっての
ルーベン・チャウスというのはタイムや成績は良くても、理解が難しい
ライダーだというのは深く理解できて、ファビアン・フォレやスティーブ・
マーティンがいいライダーであるということに話が落ち着く。

 彼とこうして長々話をできというのは色々なことが理解できたり、想像
できて実に楽しい。彼としても私のような日本人でありながら党派性の
少ない(全くないとは言えないが)人には吐き出したいことを吐けたり、
ガス抜きができるのだろう。

 彼と別れてしばらくセッションを見ているとカワサキの驚異的な強さと
速さが目に付く。さすがワールドチャンピオンだと実感するし、カワサキの
用意したリッターバイクがヤマハをぶち破る楽しみな存在だと思えるどころか
今回はカワサキとヤマハの一騎打ちになりそうな気がしてくる。また、
ジョナサン・レアだけでなくて。レオン・ハスラムも強いので第三ライダーの
差が勝負を分けるのではないかという推論もしてしまう。

 酷暑のなかでネットをすると台風がこのエリアを直撃するのは間違いないが
それが果たしてどの時間帯になるのか、その時間によっては大きな影響
が出ることなどを過去の日本や世界でのレースのことなどを思い出しながら
今日の予選を見る。

 カワサキ、ヤマハ、ホンダのワークスチームの中からウィナーが生まれる
気がするが、どうもモリワキとピレリがともに考えていることが頭を
離れない。果たしてどんな週末になるのだろうか。土曜日のレース
スケジュール変更やイベントのタイムテーブルの変更、台風による強風を
計算して各ショッピングブースやビッグスクリーンの撤去などのアナウンスや
発表を目にしながら、果たしてどんな土曜日になるのかを考えていた
金曜日の私でした。

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