悪天候であったり、降ったり止んだりの難しいコンディションであっても
好きなライダーや応援しているチームが活躍したり、躍進したらうれしいもの。
まぁ、このブログで取り上げているようにレースができないコンディションで
走るということになると近い関係にあったライダーのレース中の死亡事故など
のことが昨日のことのように思い出して、私のメンタルによくない。

 しかし、レースができる状況でマシンによる実力差が少なくなり、
ライダーの実力やチームのタイヤ選択やセットアップ能力がタイムと順位に
反映するとなると見ているほうにとっては面白いことになりますね。

 以前、2000年代にカワサキのSBKでメカニックをやっていたドイツ人の
メカニックと話をしていた時に実力があるが、マシンやチーム体制で能力が
順位に反映されていないライダーは誰だろうかという話をしたことがあり
ました。

 その時の彼の答えはクリスチャン・リンドルムというものでした。

 この回答というのはかなり納得できるものでしたね。

 マシンを速く走らせる能力が高くて、エンジンや車体のどの部分がよく
ないから、どうしたらタイムを上げられるのか、あるいはどの部分を
修正したら乗りやすいマシンとなるのかということを正確に指摘する
ことができる。

 しかし残念ながら、チームとして彼の指摘に答えられる予算なり
メーカーとの密接な関係性がなくて、能力が順位やタイムに結びつかなかった
ライダーでした。

 彼がスーパースポート世界選手権のグリッドから離れてから、そういった
能力を高く評価しているメディア関係者がマシンのインプレッションなどの
記事を書かせたくて、かなりのオファーが入ったというのはよくわかります。
また、むずかしいコンディションやレインレースとなった中で世界の列強と
しっかりと戦えていたのは納得できました。

 昨日のブログで触れたように、私はピレリのジョルジョ・バルビエール氏と
長く話す機会を得たのですが、彼から日本人ライダーで全日本選手権を
走っている能力のあるライダーは誰だという質問を受けました。

 私の答えは『年齢やメーカーとの密接な関係性などを抜きにして考えると
酒井大作だ。』というものでした。

 彼が全日本の250ccで走っていた時に世界グランプリの雨の鈴鹿でワイルド
カードで参戦してホンダの市販RSで見事なマシンコントロールと集中力
で二位を奪って見せた。

 その時に彼に興味を持って、レース後のパーティで顔を合わせてホンダの
マシンで活動していた当時のスコットレーシングチームのメカニックに
紹介して翌年以降の活動で250をやるのであれば、彼のような素晴らしい
ライダーと話し合いを持って欲しいという話をしたこともありました。

 その時にホンダの250で世界に行けない。500は難しいとなると選択が
なくなってしまうという彼に対して『そう思うかもしれないけれど、私と
してはスーパースポート世界選手権というのが選択肢にあると思う。
事実、250でシートが得られなかったライダーや500やスーパーバイクで
は契約が難しいという連中がセカンドベストということとタイム差が
少なくてリアルライダーチャンピオンシップスだと思える部分でそこを
選択肢に入れるのはありだと思う。』と話したのを覚えています。

 その後、彼がどういう考えだったのかわかりませんが、ホンダ系のライダー
だったという印象が強かったのですがカワサキでストック600選手権を
全日本を戦うことになりました。

 その時期というのは私はチームライトスピードカワサキとの関係を
深めていたので、チームオーナーのブルーノ・ブレガ、マネージャーの
ダビデ・ブレガ(現在、Moto3参戦中のニコロ・ブレガの祖父と父親)
と話していて、カワサキの600を乗るのに問題のないライダーで一定以上の
スキルがあって、世界で戦えるライダーは誰かという話をしていた時に
私が挙げた名前が酒井大作でした。

 ブレガファミリーの連中も興味を持ってくれたのですが、ぼんやりと
何人かいる候補者の一人と考えることはあっても具体的に交渉を持つことに
はならなかったのは残念でしたね。
(そのシーズン途中に結局、彼らが契約したのはその時ストック600クラス
でカワサキベルトッキで走っていてとにかく数多く走りたくてストック600
とスーパースポート世界選手権のダブルエントリーでも構わないと思っていた
男で今週の鈴鹿八耐ではGMT94ヤマハで走っているニコロ・カネパ。)

 その後、酒井大作はヨシムラスズキでセーフティカーが四度も出動する
大波乱のレースで鈴鹿八耐を制して、その実力を示しました。

 彼はここのところBMWのリッターバイクでのレース活動をしていて、
日本メーカーと戦うという立場にあります。日本のメーカーが今回の鈴鹿で
ファクトリーチームを結成して人的物的なエネルギーをぶち込んで勝ちに
来ている中でレインコンディションとなったら2009年の時のような恵の
雨になるのではないか。

 ルーカシュ・ぺシェックが彼のライダーとしてのスキルを評価しましたが
週末の鈴鹿がドラマチックレインとなって、プラハでeurosportでレースを
見ているチェコ人と喜びを共有できたらいいななどと思っている雨の
鈴鹿サーキットの私です。

 
 

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