この二週間というもの、会話の始まりが『暑い』という言葉から始まる
酷暑ですが、天気予報を見ていると今週末は台風が関東地方あるいは
中部地方にも近づきそう。雨のレースは色々なドラマを生み出すが
キャンペーンガールが仮設オフィスに引っ込んだり、露出度が低くなる
こと以外に何を生み出すのでしょうか。

 雨のレースとなると、思わぬドラマが生まれ、伏兵が活躍したりする
ことを思い浮かべます。予定調和を崩すレースとなり、それがライダーの
能力や判断力、マシンコントロール力といった色々な意味での力が測定
できることとなり、私にとっては面白いレースとなりますね。

 今までの私の人生にとって雨のレースが節目において色々な影響を与えて
きました。

 『ブタペストの奇跡』。あのカジバの初優勝にして、エディ・ローソンの
最後の勝利というのはスタート直後に雨が降って、赤旗中断で再レースと
なり、ライダーもメカニックもエンジニアも脳みそから汗がでるような
苦しみの中で信じられないギャンブルととんでもないタイヤチョイスを
して、日本メーカーのライダーをどんどん抜き去り、レース史上に残る
大逆転劇を演じて勝ち取ったものでした。

 あのレースを見て、大騒ぎしているイタリア人を見て、イタリア人というのは
いいなぁと思い、翌月曜日にイタリア語ー日本語の辞書を購入して、イタリア語
に触れて、その後私はリミニに留学。ピアディーナとランブルスコワインが
好きなエミリアロマーニャのジャッポネーゼとなりました。

 『アンソニー・ゴバートと小さなイタリアメーカーの大きな勝利』
日本のホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキにイタリアのドゥカティとアプリリア
がファクトリー体制で参戦していた年に無謀とも思える参戦をしたビモータ。

 マシンの戦闘力が他の六メーカーに大きく劣り、シーズン序盤から明らかに
苦しい戦いをしていたシーズンで僅かな希望はアンソニー・ゴバートの素晴
らしい速さとマシンコントロール能力でした。

 世界選手権にやってくるまで何百回も走って腕を磨いた地元のオーストラリア
でのレース。

 雨が降ったり、止んだりの難しい条件でマシンの能力差がなくなり、
空が泣いた時に大笑いしたのがアンソニー・ゴバートでした。

 レース中盤から他の大メーカーのスターライダーを大きく引き離して
見事なビモータのマシンを難しいコンディションで鮮やかにコントロールして
いく彼の走りは流麗なフェデリコ・フェッリーニの映像に素晴らしいニーノ・
ロータの音楽が重なるような鮮やかさがありました。

 雨が降ったときに正しいタイヤチョイスと間違いないセットアップを
して勝利の『道』を見つけて、レースの後に『甘い生活』を感じて、大喜び
するなか『インタビュー』を受けていたのは世界的な巨匠を生んだリミニ
という町のメーカーのマシンを走らせていたナチュラルボーンライダーの
アンソニー・ゴバートでした。

 あのレースを見て、諦めてしまったら何も生まれないし、何も始まらない
と思い、不確かな将来しか見えないが、それでもイタリア語を生かして
レースの世界にいたいと思ったのが私でした。

 それによって得られたものも失ったものもありますが、雨のレースが
私に大きな影響を与えたのは事実です。

 雨の八耐と言えば、私は酒井大作のファンですが、2009年の台風が鈴鹿
山麓をかすめるという中で大雨が降ったり、小雨になったりとセーフティカー
が何と四回も出動するという大変大荒れになったレースの中で見事なマシン
コントロールと素晴らしい集中力を見せて、勝って見せたのがあの年の雨の
鈴鹿のヨシムラスズキでした。

 果たして今週は酷暑のレースとなるのか、それとも台風が影響して
思わぬドラマやドライコンディションでは信じられないドラマを生み出すのか。
どんな天気でも好きなライダーが活躍したり、応援しているチームが躍進
するとそれはいい天気だと思えるものです。

 真夏だから鈴鹿八耐らしいと思い、雨になるとキャンペーンガールの
露出度が低くなるし、真夏のレースの良さが薄くなると言う人の声も
重々理解できるのですが、雨になったらなったで、違う楽しみ方もできる
なぁと思っている鈴鹿出発前の私です。


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