失敗から生まれるお笑いがその日一番面白いこともある。
 しっかりと台本を作り、衣装や舞台装置を丁寧に考えて、
細かいところまでこだわりを持って丁寧に作った笑いという
ものもあるが、失敗やハプニングを転がして笑いにもって
行くこともある。22日の火曜日に開催された
『お智だちライブ』で色々なタイプの芸人さんのネタを
見ていましたが、一番面白かったのはハナイチゴでした。

 プロレスファンの琴線に触れる蛾野正洋やサブカルや言葉に興味を持っている
人にとってのマザーテラサワ、モノマネに天才性とフリップ芸に毒気を感じさせ
るメルヘン須長。そして、練りこんだ台本と確かな演技力を見せてくれるラムズ
も面白くて楽しんだのですが、この日一番笑えたのはハナイチゴの漫才でした。

 単純に関谷友美さんが大事なところで噛んだり、リズムが狂ってしまった
中でそこをたたき台にして互いの微妙な関係性や空気感から本来のネタから
逸脱しながら、アドリブを入れて笑いを広げていく姿というのは邪道といえば
邪道なんですが、かっちり決められた世界からは生まれないライブ感があること
も事実ですね。

 プロレスというのは格闘技術のある世界と演劇的な部分を持ち合わせている
スペクテイタースポーツと言われているのですが、試合前に考えられていた
試合の展開や勝敗、技の流れや進行というものからリング上のアクシンデント
などで急に決め事を変更する必要性がある試合もある。

 そんな中で能力があり、色々な引き出しがあって、体力や格闘技術が
ある人が使っていない技を出したり、どこまでのハードヒットが可能か
ということを肌で理解して、大きな技を出して展開を変えたり、本来
プロモーターから求められていた内容とは違う色合いの試合を進めて
盛り上がりを見せる試合を作ることがあります。

 コンビ仲は芳しくないとか、お互いが色々な芸人が集まる場所で異性を
気にする素顔を見せる姿に同感と嫌悪感を持つハナイチゴの二人ですが、
お互いの実力や対応力、言語力を知っている二人が元々考えていたネタ
の振り方や話の展開とは異なる中で失敗から単純に落ち込むのではなくて
笑いに昇華していたのは、お互いのことをよく知っているからだし、
コンビとしての活動歴があってのことだと思いましたね。

 今回のライブでネタでしくじったり、本人が面白いと思ったネタが
客に受けなくて滑っていた人もいましたが、そこからのリカバリー力を
持っている人とそうでない人が明らかにわかりました。

 卑怯であったり、邪道であったり、ある種行き当たりばったりであること
から生まれるエネルギーとかパワーがあると思えたハナイチゴの漫才でした。

 まぁ、棚からボタ餅の笑いもあるのでしょうが、ボタ餅を手に入れるには
落ちてくる場所でしっかりと取る準備をしていて、しっかりと掴み取らないと
いけないわけで、そういうことも含めてフリートークの実力がAV男優に
三回は逝かせて欲しいというリクエストを出して、六回悦楽を感じたと
話したり、大学生のセックスフレンドと付き合いだしたり、ジャイアンツの
高橋監督に似ている男性のテクニックに夢中で借金してでも、素晴らしい
テクニックを味わっている人とその彼女の能力を知っている
コンプライアンス小松崎さんの力なのだと思います。

(写真は閉演後の会場ロビーにて蛾野正洋さん、メルヘン須長さん、関谷友美さん)

 

 

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