五度のワールドタイトルを獲得したケナン・ソフォーグルがイモラで
引退を発表しました。この二年の怪我によって、フィジカルコンディションも
メンタルコンディションも難しい状況になり、レースからの引退という決断を
チームの本拠地に近いイモラで発表しました。

 彼の残した業績というのは素晴らしいものであり、トルコという国に
もたらしたものがとてつもなく大きなものでした。

 強さと速さを持ち、スーパースポートクラスで数多くの勝利を奪ってきた
彼ですが、その彼が取り損ねたタイトルから彼の栄光は始まったと思っています。

 私がフランスのマニクールで現場で見ていたストック1000選手権のレース。
彼はヤマハジャーマニーでヤマハのR1を走らせていました。

 彼がフランスにやってくる前に有利にシーズンを送り、同じチームのライバル
とタイトル争いをしていましたが、ライダーもマシンもいい状態でレースに
入り、この最終戦の最終ラップを迎えました。

 その彼の優勝とタイトルが濃厚に思えたのですが、彼は最終ラップの
最終コーナーで真っ直ぐ行ってしまい、ほぼ手中にしていたストック1000の
タイトルを僚友に差し上げるということになってしまいました。

 まぁ、レースというのは恐ろしいし、世の中には絶対というものは存在しない
と思いましたね。

 国際映像であの時の表彰台の彼の呆然とした表情を見ていましたが、
かわいそうですが、世界中のレースファンが信じた疑わなかったタイトルを
自らのミスで手放したことで彼のレーシングキャリアはどうなるのかと
考えていました。

 その彼がタイトルを獲得するのに何が足りなくて、何が必要で、何をすべきか
をコンピューターの画面を見ながら考えて翌年からスーパースポート世界
選手権での活動を始めました。

 そこからの彼のキャリアは山も谷もありましたが、スーパースポートという
クラスで世界の列強相手に戦い、五度も世界チャンピオンに輝きました。

昨年からの怪我でフィジカルもメンタルもかつての自分の状態に戻れないと
悟った彼が持っているスキルとコンディションで戦うのか、あるいは違う道を
進むのか色々な噂がサーキットで飛び交いましたが、彼はチームプチェッティ
にとって一番近いサーキットであるイモラでチームやカワサキに謝意を示して
リタイアすることを選びました。

 大変、残念ですが彼がトルコ人ライダーを世界にやってくるという先生で
あり、マネージャー業という選択をしました。

 モータースポーツが盛んとは言えない国から世界に出てきた彼のしんどさや
難しさ。

 前述のような苦い経験とそこからの栄光の座への歩み。

 その全てを彼が後輩に教えることで新しいスーパースターや世界チャンピオン
が生まれると思います。

 まずはしっかりと休んで、シーズン途中でキャリアを終えるということで
生まれた様々な諸問題をいい方向で片付けて、彼が先生やマネージャーとして
輝くことを願っています。

 

 

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