スーパースポート世界選手権の第三戦がスペインのアラゴンで行なわれ
ました。我が愛しのサンドロ・コルテーゼがどんなレースを見せるのかと
興味深々でしたが、私の願いは喜びに変わりました。私とはイタリア語を話す
ドイツ人ライダーの初優勝となりました。
http://www.corsedimoto.com/in-pista/mondiale-sbk/supersport-aragon-gara-primo-successo-per-sandro-cortese/

 能力はあるが、スポンサーを持っていない。その彼が非常に難しいシーズン
オフを送ったのは、この私のブログでも取り上げてきました。
http://yasumarzo.diarynote.jp/201802170931254102/

 その彼が何とか15万ユーロをクラウドファンディングという手法や
彼についていたスポンサーやサポーターからのお金をかき集めて、ぎりぎり
のタイミングで必要な参戦資金を確保して、契約をまとめてオーストラリア
に出発しました。

 スーパースポートクラスは初出場。そして、初めてのピレリタイヤ。
難しい条件があり、マシンとタイヤの特性に慣れるために時間がかかるかな
と思っていましたが、そんな私の印象を鮮やかにあるいは大きなサプライズ
と共に変えてくれました。

 オーストラリアでは三位。そして、タイでは四位。強豪が揃うこの
カテゴリーで見事なシーズンの滑り出しを見せてやってきた今回のスペイン。
彼はほぼ完璧なレースウィークを送りました。

 フリー走行も予選も明らかに乗れている状態で鮮やかな走りを見せて
土曜日はポールポジション。そして、日曜日には常に先頭集団で走り
戦略どおりの展開とイメージしていたライディングをして、このクラスで
見事な初優勝となりました。

 これは私は嬉しかったですね。と同時に彼が今回の勝利でこのカテゴリー
でのチャンピオンの有力候補となったことを感じました。

 そして、私が思い出したのはアルノー・ヴァンサンが125ccでタイトルを
獲得した時のことでした。

 あの年を迎える前の彼のシーズンオフは非常に難しいもので、交渉した
チームからは持参金を求められながら、それができず開幕を一ヶ月前に
しながら契約がまとまらず、ギリギリのタイミングでノーギャラで走ると
いうことでチームが決まり、開幕戦の鈴鹿にようやく来ることができた。

 金曜と土曜でマシンが決まらず、予選で下位に沈みながら日曜の決勝は
鈴鹿山麓の春先の天気が恵の雨となり、ウェットコンディションとなり
順位を中位からどんどん上げていきました。

 優勝争いはスティーブ・イェンクナーとヤロスラブ・フーレシュの二人で
争われましたが、イェンクナーはマシントラブルでピットイン。フーレシュ
は単独でイージーウィンかと思いましたが、なんと単独走行でクラッシュ。

 思わぬ形でトップに立ったヴァンサンで大きなタイム差をつけて楽勝
だと世界のレースファンが思っていましたが、残り三ラップのところで
マシンがおかしくなり、なだめながらの走行。

 二位以下のライダーが迫る中でひやひやしながら、何とかトップで
フィニッシュしまして、私は彼と一緒になって喜んでいましたが、
レース後にシャークヘルメットの簡易オフィスで『あと一周あったら
抜かれているか、マシンを止めていた』と振り返っていました。

 そのヴァンサンが鈴鹿の後の南アフリカも優勝し、素晴らしいシーズンの
滑り出しを見せて、激しいタイトル争いをして、しっかりと勝てるレースを
勝ち、勝てないところでもできる限りの最高の順位でレースをまとめて
彼にとって最初にして最後の世界タイトルを獲得しました。

 モータースポーツにはお金がかかり、メーカー直系チーム以外は持参金
を求めるような世界ですが、スポンサーを持っていなかったり、お金を
持ち込めないライダーにとっては難しい世界ですが、厳しい状況を克服
した後にバイクを走らせることに集中できる環境を得た時に輝く姿を
私は体験的に身近で見てきました。

 今年のスーパースポート世界選手権でのサンドロ・コルテーゼを見ていると
アルノー・ヴァンサンの世界チャンピオンになった時の状況に近いと思って
います。

 ヴァンサンが鈴鹿で優勝した時にトップ2を走っていたドイツ人がピットイン
してチェコ人が転倒したようにライバルの不在ということで得られるポイントと
成績が存在します。

 サンドロ・コルテーゼが走るサーキットにスーパースポート世界選手権
を何度もタイトルを奪ったケナン・ソフォーグルの離脱は強力なライバルが
いないことで倒すべき敵が存在しないということで厳しい戦いが少々緩和
されるということは容易に理解できます。

 目から涙が出て、脳みそから汗が出るような厳しくて苦しい冬を過ごし、
幸運に恵まれたり、ライバルの不在に助けられる展開というのはかつての
フランス人の世界チャンピオンと今年のドイツ人の世界チャンピオン候補
に相似性を感じています。

 いい奴であり、周りに感謝の言葉を並べ、私とフランス語も話すが
イタリア人が多い場所ではイタリア語を話す楽しい過ごしたフランス人
ライダーのアルノー・ヴァンサン。

 彼がシーズンに入って、お金の心配をしなくなってマシンを走らせること
だけに集中できることになったライダーが輝き世界チャンピオンになる
過程を私は見てきました。

 ドイツ国籍だが、自らサンドリッシモという名乗るイタリア語話者の
ドイツ人ライダーがシーズンに入って、走ることに集中できることになり、
マシンを走らせることだけに集中できるようになりました。

 スペインで完璧なレースウィークを送ったサンドロ・コルテーゼが
オランダ以降、どんな戦いを見せてくれるのか。

 彼が実りの秋を迎えることを心から願っています。

 お楽しみはこれからだ。

 

 
 

 

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