お笑いのライブでつまらなかったり、面白くない芸人が続いている時に
会場の空気を変えなければいけないとすれば、そこに必要なのはある種の
突破力であったり、突拍子もない芸であったり、それまでの芸人さんとは
違うカラーや空気感を持つ人の登場だったりします。ここのところ、見ることの
多いジョリー惑星には場の静かで沈んでいる空気を変える突破力を感じます。

 二人の漫才を見ていて、思い浮かべるのはネタの運びとしてはスタンダード
なものですね。そして、大きな動きでアイキャッチするというのは、街中の
コンビニや駅売りのスポーツ新聞で奇抜な一面見出しが注目を浴びて、手が
伸びるように、あべみなが大きく髪を振り乱すことで観客の目が舞台上に
集まる。

 ある種、80年代のお笑いを通ってきている私の印象では今いくよくるよ
の漫才で今いくよが話を廻していき、今くるよが折を見て腹を叩いて
観客の目を向けていきながら進めていく漫才がありましたが、それを
思い出させるものがあります。

 でもって、内容的にも女性の見た目とか恋愛に関することをテーマに
するので、今いくよくるよの漫才を参考にしたのだろうかと想像したり、
女性漫才で作りやすいネタが容姿とか色恋に関するなので、そういう
テーマを選んでいるのかなとも思います。

 ダウンタウン以前と以降。そして、M1グランプリ開催前と開催後で
漫才の形というものが変わっている中で、80年代の漫才のリズムとか
文法を使い、そこに現代的なトピックを放り込むと、テクニック的には
古典であり、話しているテーマは現代なのですが、最近、見ていないので
新しさを感じることとなります。

 このあたりは80年代でのB&Bや紳助竜介の漫才がボケ側が八割話して
ツッコミが二割話すスタイルで人気を得たのですが、同じようなスタイルで
話す内容が現代のものであるホタテーズの漫才が80年台初頭の漫才ブームを
知らない人が新しく感じるのと似ています。
(このことに関して触れたのは私のブログでここに記しています。
http://yasumarzo.diarynote.jp/201803210415399124/

 ボケが激しく動いて、客の目を釘づけにして強い言葉でどんどんボケを
かましていって、ツッコミが的確にツッコミながら話を廻していくという
のは見る側の年齢層や好み関係なく見ることができて、冷えてしまった
観客を温めることができやすい。

 正直、ネタ的には女性社会のあるあるネタや見た目や色恋に関する
ものというのは、それがいくつも続くと飽食感を感じるのですが、
ジョリー惑星の漫才は底抜けのパワーがあるから見ることができる。

 面白くなかった会場を変える突破力を二人に感じています。

 ただ、個人的には同じようなネタとかテーマ性だといくら二人のパワーが
あったとしても、同じ食事をずっと続けるような感覚を抱いてしまいます。

 フラポテおおたさんには番組を綾瀬マルタさんという芸人を
パートナーにして曲なしでトークで一時間持たせる能力があります。

 漫才であべみなという暴走しがちで時に予定調和を崩して動き回る
暴れ馬を上手く走らせたり、コントロールする能力があり、綾瀬マルタという
練りこんだネタを演じることが上手いお笑い脳がある人をパートナーに
番組の時間帯や放送している場所に見合った内容を創造するお笑い頭が
あります。

 ツッコミが目立つのは当然なのですが、暴れるあべみなと優れた
ジョッキーぶりを見せるフラポテおおたさんが現状維持というのは停滞
と同義語だと考えて、今の芸風の延長上に何かを作成したり、
今までにないことにトライして違うカラーのネタであったり、女性芸人
とネタやテーマがかぶらない方向を模索したり、トライ&エラーを
重ねて新たな土壌を見つけたら、どんな果実を実らせるのだろうか。

 リッターで10キロ走る車を見て、車なんてこんなものだと思うエンジニア
がリッターで50キロ走る自動車や自然エネルギーを用いた新世代の車を
作ることができません。

 不満や不足感が燃費のいい車を生むようにジョリー惑星の欲深さから
生まれる新作を見たいなとかフラポテおおたさんというタイプの違う芸人と
組んでも上手く廻せる姿を見て、優れたマネージメント能力を生かしたネタが
見たいなといつも腹ペコのお笑いグルメは思っています。

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