白熱女子!というライブを見てきて。
白熱女子!というライブを見てきて。
白熱女子!というライブを見てきて。
21日の祝日の午後という時間帯に女性のピン芸人、
女性コンビ、男女のコンビなどの女性芸人が集まり、
アンケートの結果で一番面白いと評価された芸人
には賞金が送られる『白熱女子!』というライブを
見てきました。

 狭い会場は満員でこういうライブに来ている
人というのはお笑いグルメばかりなので有名
だから見に行くという人は少なく、これからが
楽しみだったり、知られていなくても実力がある
という芸人を見たいという人ばかりなので芸人に
対する愛情と熱が横溢していました。

 今までも見たことのある芸人や初めての芸人も
いたのですが、楽しめましたね。

 私ははなしょー、ラムズ、ヒルトヨル、
HENHEN事変、ターリーターキー、メルヘン須長、
たぬきごはんが面白くて笑っていたのですが、
今回のここのライブでは周りの観客と面白いと
思えるところが一致しているところと
そうでないところが結構多かったなぁと
思いましたね。

 観客の投票方法というのは面白かった芸人を三組チョイスして、そこで
一番投票の多かった芸人に金一封を送るというものでした。

 全てのネタが終わって、ベストスリーが紹介されたのですが、割に
納得できるメンバーが揃っていて、一番はHENHEN事変でした。

 私は彼女達の漫才は今までも何回か見ていましたが、それまで印象というのは
『可もなく、不可もない。爆発力とか突破力は感じなくて、日常で思った
ことをお互いになぞりながら、ボケとツッコミを繰り返す』というものでした。

 ところが今回は四組演じた後に中MCをHENHEN事変が他の芸人二組と
することになって、そこでアイドル鳥越の自撮りと現実の違いであったり、
地下アイドル活動のスカスカなスケジュールであったり、他のアイドルとの
比較であったり、イケテナイ日常などで笑いを取ったりしていました。

 これは今回のこのライブ空間ではフレーム意味論というか、お笑いの世界
でいうところの有効な『前振り』となりましたね。

 M1グランプリに初出場して以降、ナイツが漫才の舞台に立つときに
観客がいつ『ヤホー』と言うのだろうと思うのは、典型的なフレーム意味論
であり、笑いを一つとったり、つかみのためのとても大きな前振りと
なっていますが、今回の会場の中で中MCで自撮りと現実が違いすぎる
こととか、アイドル活動がプアであることなどが観客にしっかりと刷り込
まれていました。

 そんな中で登場したHENHEN事変の二人は本来やるネタだったのか、
直前でいわば無軌道なフリートークに切り替えたのかわかりませんが、
観客が入場時には持っていなかったが、中MCという立場と時間でコンビに
関して事前学習することになり、予備知識を得てみることができて
つかみに時間と頭を使うことなく、見た目であったり、アイドル活動に
関してきついツッコミを繰り出すことで笑いを生み出すことに成功していた。

 これが出番前に急遽、フリートークで最後のオチだけを決めていこうと
決断したとしたら、これはアイドル鳥越にキャラクターを生かして暴れ
させて、その暴れ馬の特性を見て、ツッコミの強弱をつけて笑いを生んだ
おおのまりあさんはさすがに名古屋大学出身というのは伊達ではなくて
強かでクレバーだなと名大の南食堂の飯はうまかったななどと思い出しながら
考えてしまいました。

 プロレスの世界で何度もリングで戦っているとお互いのリズムや試合運び
得意な技がわかって、手の合う相手となって、見ていて面白いということ
になり、そうなると試合の中での細かい打ち合わせはなしにして、プロモーター
の要望に沿って、勝敗だけを決めていて場内を盛り上げる試合を作る
ことができる。

 その試合を盛り上げる上での前振りは招待券でなくて払って見に来ている
ようなファンにはどんな技が得意技なのか、どんなパフォーマンスをするのか
すでにわかっているから、初見の客ばかりやチケットが手に入ったから見に
来たという招待客相手にするようなキャラクターの説明などといった
前振りが不要となる。

 この時のHENHEN事変というのはお互いの性格やリズムがわかっている
プロレスラーが最後の結末だけ決めてお互いのいいところを払って見に
来ている熱心なファンの前でハードヒットの戦いをやっていたような
印象がありますね。でもって、結末以外の打ち合わせのしていないプロレス
はお互いの信頼関係でバチバチやり合えるから面白いことになることが多い。

 そういうこともあって、爆笑をかっさらっていったのですが、これは
中MCという立場で大きく濃度の高い情報供給ということが大前提が存在して
生まれた笑いでしたね。

 練りこんだ笑いが好きな人ははなしょー、ラムズ、ターリーターキーを
評価したでしょうし、個人の能力の高さを考えるとメルヘン須長さんを
ピックアップした人もいたと思います。

 私は評価していないのですが、女性芸人の見た目のよさと面白くなくても
頑張っている姿に健気さを感じて萌えを感じる人はまちむすめを推したの
かもしれません。

 ただ、そういったことを考えずに、この日のこの空間で面白いかどうか、
笑えたかどうかを考えていたり、お笑いの評価に技術や才能も考えるが
その場で卑怯な笑いであったり、無軌道なネタの運びなどであっても
面白かったらいいじゃんという雑食属性の方はHENHEN事変を評価した
だろうなと思いますね。

 出演順と中MC担当という偶然から発生した前振りやつかみに時間を
費やさなくていいという相当大きなアドバンテージを手にして、アイドル鳥越
という暴れ馬(それも面倒な牝馬)をいなしたり、鞭を入れて大きな成果を
挙げたおおのまりあはウド鈴木という難しい馬を乗りこなす天野ひろゆき
であったり、2008年の秋華賞でブラックエンブレムを勝利に導いた
岩田康誠に見えましたね。(あの時もある意味、逃げ馬がいて展開に恵まれた
ということもありました。)

 今回のようなことというのはHENHEN事変にとっては、多分にラッキー
なことだったと思うのですが、今回のことで何かをつかむのか、それとも
今回の爆発力や突破力は一時的なものなのか気になりますね。

 一時的なものだとしたら、練りこんだネタを作っている他の芸人であったり、
明らかな天才性を持つメルヘン須長には敵わない。そうでなかったら、
今までのライブではネタのチョイスが悪かったりしたのだろうかという
疑問が残る。

 今回はお金がかかっていたこともあって、モチベーションが高かった芸人
も多かったと思うのですが、先述のライブ通しての展開に恵まれて
HENHEN事変が高く評価されて悔しいとか、芸人の能力としてはあの二人より
も上だと考えている芸人にとっては、今回の結果から自己評価が揺らいで
しまう人もいるでしょうし、出た結果からどこを修正して、新たに
何を作るのかを考える人もいたかもしれません。

 私が面白いと思った芸人さんは個人的には今回の結果から自己評価に
揺らぐことなく、ネタの精度を上げるとか、新ネタを作ったりして笑いを
提供して欲しいなと思いますけどね。

 はなしょー、ターキーターキー、ラムズのネタは脚本のよさ、客の数と
舞台のサイズを生かした動き、演者の才能や個性が具体化した演技力になって
見事な表現だったと思っています。

 まぁ、ライブというのは生モノであること、ネタをやる前の情報供給の是非
とか練ったネタよりも前振りが効いたらフリートークが面白かったり、
やるネタにその場で思いついたアドリブを入れたほうが笑いが生まれること
であったり、出演順での有利不利があったりして、必ずしも実力者が勝つ
わけでもないこととか、面白くなくてもカワイイは正義でつまらないネタ
でも笑っている男の観客がいることとか天才に今以上に強い毒が加わったら
最高なのにとか色々なことが私のお笑い脳の中でうごめいた一日でした。

 

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