音楽の世界でずっ同じ時を過ごしてきたグループで呼吸や間合ができあがって
いて、ネタもたくさんあって安定したネタを披露できることもあれば、
そこから離れてソロ活動をしてみて、コンビだとできないことをやってみる。
あるいは違う人と組んで、いつも組んでいる芸人とは違う化学反応を求めたり
するのは良くあることだと思います。ここのところ見ているラムズの風間さん
は23日の金曜日に普段の石田さんとのコンビではなく、他の芸人さんと組んで、
ライブを開きました。

 ラムズのファンというのはアラフィフが多く、そこに向けてかけているのか
無作為にかけたのかわかりませんがeurythmics "sweet dream" とstarship
"nothing is gonna stop us now" そして、rick astley"never gonna give you up"がBGMとして流れていて、懐かしさを覚えながら、このタイトルどおり
美しい夢が見られるのか、何も我々(今日の全ての芸人)を停められないのか
あるいは決してギブアップさせないのかなどと考えながら開演の時間を待ちます。

 入場してまずは漫才コンビのあかなすの前説とネタがあって、そこから
国生さゆりの数少ないヒット曲にして、ずっと歌い続けられている(つまり
クリスマスソングでは色々な曲が思い浮かぶがバレンタインではこの曲しか
想像できない唯一無二の曲)『バレンタインキッス』が流れ、風間さんと
初見の男性芸人が歌う中登場。一気に会場が華やかになるなか、思わぬ
チョコレートのプレゼントをいただく。

 曲が終わって、まずはフリートークになるが、ここから風間さんの
相方への不満や悪口の数々。まぁ、コンビでずっと一緒にいるといいところも
悪いところも見えるのは当然だし、その緊張関係から面白いものが生まれる
ということもあるし、変な爆発の仕方をして解散ということに向かわずに
相方さんがいない中で笑いに結びつけるというのはありだと思うし、
風間さん自身も怒りをたたき台にしてネタにしているというのはいいこと
だと思う。ラムズを知っている人が笑える話が多かったと思う。

 その後、大喜利コーナーをやったが、これは私にとってはあまり面白く
ないものでしたね。

 個々の人がネタをずっとやってきて、MCとして廻すということをしていない
のか、大喜利になれていないのか、わからないのですが、ダイナマイト関西
を見慣れていたり、好きなものとしては時々の卑怯なネタで笑えても、
大喜利の答えで笑えることが少なかった。

 四人壇上にいて、一人が滑舌が悪くて廻すことができないとなると、
三人の中で答えが出る前の空いている時間を埋めなければいけないのですが
それができないで空白が生まれて、そこに面白くない答えが出てくると
面白くない。

 みんながゴール前に長いパスを出して、前線待機のフォワードにシュートを
打ってもらうか、あるいはみんながゴール前に集まりシュートを打とうとする
サッカーのようなもので、それが上手くシュートまで結びつくのは可能性は
低くて、ゴールになるパーセンテージはさらに低くなる。

 ダイナマイト関西におけるMCをやるような中盤の司令塔がいて、パスで
組み立てたり、サイドチェンジをしたり、ディフェンスが攻撃参加するような
流れがあって、攻撃パターンがいくつもあって、シュートまで行けば、
そこでゴールも生まれる。

 答えが浮かばなくて風間さんが『マ○コがくさい』しか思う浮かばないと
いうお答えには無軌道なエネルギーととりあえずシュートを打たなければという
気持ちから生まれた卑怯な笑いはあり、私も笑ってしまいましたが、
答えの手数もその内容もダイナマイト関西での答えを待っているときの場
つなぎの上手さなどは感じられなかったですね。

 そこは見る側としては評価できないし、不満ではあったのですが、その一方で
私の体験的に感じるシンパシーも存在しました。

 このブログの読者にもMr.childrenのファンの方々もいるかと思いますが
彼らのビッグヒットというのはティーンエイジャーから50台の人までが
聴きやすくて口ずさみやすくて、カラオケで歌いたくなるものが多い。

 では、それだけが彼らの音楽性の全てかというと、世間に流布している
イメージとは異なる曲であったり、やってみたかった実験を行なったり、
苦手な技術を用いたり、それまでのキャリアの中で使っていない風味を
用いた作品がカップリング曲にあったりアルバムに収録されている。

 そんななかで技術を磨いたり、新しい方向性を見つけたり、発見があって、
新たな作品に繋がっていく。

 メジャーとか王道とか彼ららしさというのがシングルヒットの曲ではあるが
同時にコアなファンが求めるようなものであったり、バンドとして、あるいは
プロデューサーとしてやってみたこと、試したいこともあるわけで、そこには
聴きやすい王道ポップではなくて、メジャーもマイナーも正道も邪道も存在
している。

 あるいはモータースポーツにおける失敗体験が優れたライディングを生み出す
という真理もありますね。200キロで曲がる高速コーナーを210キロでクリア
しようとしてすっ飛んでいって、ライダー自身の調子のよさを過信してしま
ったのかマシンの能力の限界値を見誤っていたのかを理解して、適正な
ライディングができるようになる。

 ある意味、今回のライブで私が低く評価していた大喜利の部分は風間さん自身
も苦手だと言っていたわけで、ある意味、成功したらうれしいが、失敗したら
何が足りなくて何が必要なのかを検証する実験の場だったのかなとも思いましたね。(新横浜やラムズの石田さんの出身地の豊橋で目の前を200キロほどの
スピードで走るのぞみを見てこのスピードでバイクにまたがっていて、
クラッシュしたらとんでもないなとは思いますが)

 その後のコントでは面白くて練りこんだコントで笑いを取れる能力をその時の
設定のコントで笑いにすることができる、普段のラムズのコントでしている
ことの一部を移植したような形で場内を沸かせたわけで、彼女の得意不得意が
くっきりと明らかになりましたね。

 大喜利のところは不満というか、風間さんの『ま○こがくさい』という
ところ以外、正直少ししか笑えなかったので全体を通して大満足かというと
中満足になってしまうのですが、彼女が得意とするところと他の芸人さんと
絡んで上手く笑いを取るところなどが観ることができてよかったですね。

 最後の方のパートになって、ある芸人さんの死ぬことよりも笑わせる方が
難しいという話をしていて、思わずしんみりとしていたのですが、よくよく
振り返ると『ま○こがくさい』だのロングパンツのファスナーを拡げたりと
恥を捨てて簡単に笑いを取っていた風間さんはずるいなと思いましたね。

 同時にクロージングでやはり前述の80年曲が同じように流れていましたが
東京の西側にあり、売れたい欲望があふれていてところによっては女性器の
名前とかファスナーを拡げるというのは罪に問われてもおかしくないわけで
私が選曲するならば
pet shop boysの"west end girls""opportunities(let’s make lots of money)"
"it’s a sin"をBGMに使ったかなと思いますね。こんなことを思うのは
ラジオ愛があって、80年代にラジオを聞きまくっていたからなのかも
しれませんが。

また、オープニングで『バレンタインキッス』を歌っていて、それは
チョコレートを配るというテーマと合致していたのですが、同時に風間さんの
歌の上手さを感じてもし、石田さんが同等の歌の能力があるとしたら、
二人で練習してsoul headのyou can do thatを歌ったら、アイドル文化が大
きな位置を占めている中で業界内の大人がデザインしたことをトレースしよう
とか、今の流れに乗っかって芸能界に住まいを見つけようとしている人が
多い中で自ら無から何かを作り出して笑いを生もうとしたり、卑怯な下ネタ
も使って場内を沸かそうとする二人の気持ちがより深く伝わるのではないかと
勝手な妄想をしています。

 石田さんがいなくて、風間さんが他の芸人と絡むという実験性のある場所で
面白いところもそうでないところも、得意なことも、不得意だけど、やって
みようという部分も見えたライブでした。
  
 私は初期のビートルズもリボルバー以降のビートルズも好きなんですけどね。

 

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