スペインGPのMoto3クラスでポールポジションを獲得し、日曜日には二位を奪い
鮮やかな走りを見せてくれたニコロ・ブレガ。彼の今回のレースはある意味予期
できるものでした。

 いいライダーの条件というのは、いくつかあるのですが、私が彼の近くに居て
感じることがありました。

 父親のダビデ・ブレガとは彼がヨーロッパ選手権の250ccクラスで走っていた時
から親しいのですが、彼の現役時代に彼の家に行ったことがありました。

 彼の奥さんの手料理を食べさせてもらったのですが、ブレガファミリーと話していて
私が母親のナタリーに『子供が満足気だったり、笑顔だったら家事労働の疲れも感じない
よね。』と話して、ナタリーは『そりゃあ、そうよ。』と返事。

 そこで、ニコロ・ブレガに『何で料理を食べて、何も言わないの。お母さんは子供の
満足感や笑顔を見たくて、買い物して、何を作るか考えて、こうやっておいしいものを
作っているんだよ。おいしかったり、おいしいと言わなければいけないよ』

 と話すと、五歳だったニコロ・ブレガが小声で『おいしい。』
と言いました。

 母親のナタリーは『ありがとう。』と言って、さらに
『これで元気になったから、レッドブルを飲む必要もなくなったわ。』
と付け加えていました。

 その翌日、今度は私がブレガ家の台所を使わせてもらって、親子丼、肉じゃが、
お好み焼きを振る舞いました。

 私の作った親子丼を食べて、ニコロ・ブレガが言ったのは

『Yasu! ものすごくおいしいよ。最高だよ。』という言葉でした。

 いいライダーというのは何が間違いで何が必要で、何をすべきで、何を言うべきかを
理解したあとにちゃんと修正するものですね。

 そのニコロ・ブレガがミニモトから始まり、順調にステップアップを果たして、
今シーズン、Moto3クラスにフル参戦が決定して、世界選手権での活動が始まり
ました。

 デビューイヤーでもあるし、まぁ、ポイント圏内で走って、上手く行けばトップテン
に入れたらいいなと思っていたカタールの開幕戦。

 しかし、彼はその思い以上の欲望をレース後に感じ始めました。

 もっといいタイムを出したい、より高い順位でフィニッシュしたいといういいライダーが
持つべき必要な野望を彼はレース後に感じ始めました。

 そして、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラのレース。彼は見事にポールポジションを
獲得して、決勝では激しい二位争いを制して、キャリア初の表彰台を奪いました。

 ダビデ・ブレガがスーパースポート世界選手権で走っていた時に、仙台の南海部品
で当時、日本で流行り始めて、イタリアにはなかったキックボードを試し乗りした
時にそれまで普通の顔だったニコロ・ブレガは急に笑い出して、ライダーの遺伝子を
感じました。

 ジュニアカテゴリーと呼べるレースで好成績を上げてきた彼を見て、ひょっとしたら
素晴らしい未来があるのではないかと感じ始めました。

 スペイン選手権での走りを見て、かなり業界的な評価の高まりも感じました。

 今年、Moto3クラスで走る、ニコロ・ブレガには私が料理を振る舞ったら何を
言うべきかを理解できる判断力や常にいい成績を得たいという野望の二つが
あります。

 いいライダーが持つべき条件を有している彼の次からのレースが楽しみです。

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