スーパーバイク世界選手権のタイラウンドを見ていて、思ったのはカワサキの
強さとホンダのマシンを駆るオランダ人の成長。そして、一番、強く感じたのは
マルクス・レイテルベルガーの速さでした。

 イタリアでのモーターサイクルスポーツの人気というのは90年代に高まりました。
その時期は衛星放送のみでの放送でしたが、その時期にヤマハファクトリーの乗る
原田哲也、ホンダワークスを走らせた岡田忠之、青木宣親といった日本のビッグ
メーカーの日本人ライダーに対して戦いを挑み、勝ち続けることで知名度と人気を
高めたのがイタリアのアプリリアのマシンを走らせていたマックス・ビアッジでした。

 イタリアという国でサーキットで行われるレースというと真っ先に考えるのは
F1であり、そのF1のイタリアにおける意味は90%がフェッラーリであり、残りの
10%がイタリア人ドライバー。

 歴史的にイタリアのメーカーもあり、イタリア人ライダーも居ましたが、日本の
メーカーが参入してきてから劣勢となっていた中でイタリア人のマックス・ビアッジが
イタリアのメーカーのアプリリアで日本のマシンに乗る日本人ライダーを圧倒する
姿に彼の人気が高まり、アプリリアのとりわけスクーターの販売が伸びたのが
90年代半ばのイタリアでそこからさらにイタリアの国営放送での地上波放送の
決定という流れが生まれ、さらに人気が加速して、また、そこにバレンティーノ・ロッシ
がアプリリアで活躍することで2000年代のバイクレース人気が高まりました。

 そんなことを理解している私なので、スーパーバイク世界選手権のタイラウンド
でマルクス・レイテルベルガーの予想以上のスピードを見せた時にやはり感じる
ものがありました。

 この若きドイツ人は速い。ドイツ選手権というのはイギリス、日本、イタリア選手権
と同等のレベルであるというのが私の見立てでして、トップ5クラスは世界選手権
で走れるレベルだと思うのですが、そこでしっかりと勝ち切って世界選手権に
やってきたこの男は果たして世界の列強の中でどんな戦いを見せるのだろうかと
思っていたのですが、初めて走るタイのサーキットでチームの期待と予想を上回る
内容を見せて結果を残した。

 今年のシーズンはカワサキのアンタッチャブルにしてアンビータブルな速さと
強さが際立っていますが、マルクス・レイテルベルガーとBMWが日本のメーカーに
戦いを挑み、彼らに接近し、打ち破ることができたなら、新しいうねりが90年代中盤の
イタリアで起きたことと同種のことが生まれるかもしれない。

 私の中で何かが始まる予感と気配を感じています。

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