私は日曜日までもてぎに居たのですが、もてぎから水戸に戻ってきてから
していたのはイタリア選手権の最終戦の模様のチェックでした。
土曜の第一レースをしっかりとまとめて、日曜の第二レースを見事にライバルを圧倒してイタリア選手権のスーパーバイククラスのニューチャンピオンになったのはミケーレ・ピッロでした。
http://www.civ.tv/sbk-doppietta-per-pirro/

 今回のタイトル獲得というのは非常に意味のある、素晴らしいことでした。
彼にとっても嬉しかったことでしょうし、バルニレーシングにとっても
大きなことですし、ドゥカティにとっても大きな意味があり、さらに来季から
MotoGPにタイヤを供給するミシュランサイドにとっても大きな勲章となりました。

 彼のキャリアを振り返ると125cc時代というのは後方を走ることが多い
ライダーで多くの人たちは全く評価していませんでした。

 その彼がロレンツィーニバイレオーニに加入して2ストローク125から
4ストローク1000にスイッチをした時に思ったのは彼はチームに少なくない
額を払って乗ることができたのだろうというものでした。

 この考えというのは当時のスーパーバイク世界選手権のパドックでかなり
共通理解となっていました。

 ということで当時のロレンツィーニバイレオーニというチームで
ストック1000を戦ううえで一人は強いいいライダー、もう一人はチームの財政
を支える上で持参金があるライダーと契約したのだろうなという考えが
パドック内で浸透していました。

 しかし、4ストロークのリッターバイクが初めてでありながら、ずっと
キャリアの中でそれまでずっとR1を乗っていた速いライダーで評価の
高いジャンルカ・ヴィッツェッロと同等だったり、凌駕する速さを見せはじめたのがミケーレ・ピッロでした。

 これはかなり驚きでしたね。まぁ、125時代の成績から居なくなったり
趣味レベルでお祭りレースに出るぐらいの活動になってもおかしくなかった
彼がジャンルカ・ヴィッツェッロを凌ぐような速さを見せた。

 同じようなことは125でダメダメだったミシェル・ファブリッツィオにも
言えて、彼の2ストロークの125時代は大した成績ではなかったのですが、
スズキの4ストロークのリッターバイクでいきなり速さを見せて
ストック1000選手権を制してしまった。

 努力する方向性を間違ったり活動するカテゴリーを誤ると能力を発揮できず
正しい決断をして良いチーム走ると本来の力を発揮できる。当然といえば
当然ですが、ミケーレ・ピッロとミシェル・ファブリッツィオはそれが
ものすごくわかりやすい形で見えましたね。

 ミケーレ・ピッロはストック1000選手権で好成績を残し、払って乗る
ライダーではなくもらって乗るライダーになりました。

 そして、幾つかのオファーの中からスーパースポート世界選手権に活動の
場を移し、群雄割拠の中で素晴らしい走りを見せて、世界レベルで勝てる
ライダーとなり、その彼にドゥカティからテスターというオファーが届きました。

 その彼が単純に平日にサーキットを走るだけでなく、レギュラーライダーが
怪我などで出場できなかった時は代役として走り、卓越した能力を見せました。
そして、今季はドゥカティのテストライダーをしながら、怪我したライダーの
代役でスーパーバイク世界選手権やMotoGPを走る準備をして、実際に走る
こともありながら、イタリア選手権のスーパーバイククラスにバルニレーシング
での参戦するということになりました。

 その彼がいいチームで思い通りのことができたり、希望を通すできるような
システムの中で持っている能力を発揮できたら結果はついてくる。
彼がムジェッロで勝てない時はできるだけ上位で走ってポイントを稼ぎ、
勝てる時はしっかりと勝ちきる。それを全うして彼にスーパーバイクの
イタリア選手権チャンピオンになりました。

 間違ったチームに入ったらどうなるのか、そして、辞めてしまったら
先はない。現状の評価が低くてもしがみついて続けることで道が開ける
ことなどが彼のタイトル獲得の向こう側に見えてきます。

 今回の彼のタイトルはバイクメーカーにとっても大きいし、チームにとっても
素晴らしいことでしたし、来季からMotoGPに供給を再開するタイヤメーカーに
とっても意味のあることでした。彼のキャリアを振り返り、彼にも幸せな
瞬間が訪れてくれて本当に良かったなと思った私でした。
 

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