例によって牛丼を購入。AGVのマウリツィオが夕食を食べる前にしきりに
腹が減ったと言っていたので、今回は大盛りを四つ手にして、彼の泊まるホテルへ
移動。すぐに車中の人となり、サーキットへ移動。車内に牛丼の匂いが広がる
中で各々の訛りのイタリア語が話される。話の内容が今季のイタリア選手権と
スペイン選手権の話であり、ルカ・ビターリの話とニッコロ・ブレガの話題である。

 ルカ・ビターリは当然、マウリツィオの息子だから話題になるのは当然で
あるが今季、スペイン選手権を走り、来季世界選手権に上がってくる
ニッコロ・ブレガの話になるというのは注目度の高さを表していると思う。
私のこのブログを長く読んでいただいている読者の方々は私とダビデ・ブレガ
との密接な関係をご存知でしょうが、彼の息子のニッコロに対する業界評価の
高さであったり期待値は日本人の関係者が考えている以上のものがある。

 そんな二世ライダーの話をしているうちにサーキット到着。すぐに
アプリリアのピットに行き、かつての盟友のアンドレアにレッドブルをごちそう
になる。このアプリリアのピットの隣がやはりアプリリアのマシンを走らせる
iodaレーシング。長い付き合いのジャンピエロ・サッキと少々、日本の若手、
イタリアの新人ライダーの話をする。彼の考えからすると最近の若いライダーは
ロッシが出てきた頃に比べるとやんちゃ度が低い。そのことが何を生み出すのか
というと小さくまとまる傾向が高いわけで、やんちゃすぎてマシンを壊される
のも嫌だが、歯止めとか限界を考えすぎて走られるのも困るということらしい。

 ニッコロ・アントネッリが親父と共にAGVの仮設オフィスに来て、しばらく
話す。まぁ、雨が降ろうとと得意でなくても結果が出るサーキットがいい
サーキットということらしい。

 ノーランヘルメットのエンリコのところに行くと食事中。不健康というか
時間に追われているから仕方ないというかカップラーメンをまとめ買いし
ていて毎日、違う種類のカップラーメンを食べているという。それだったら
私に頼んで牛丼の方がいいと思うのだが、すでにまとめ買いしているという
ことと『体に悪いものがどういうわけかおいしいものだったりする』ということ
で彼らの選択はカップラーメンということらしい。

 Moto3のライダーの参戦ライダーでAGVユーザーと話すとライダーが若い
ということもあり、どうも私の年齢を感じる。同じことはテニスのジュニアの
大会に行って、15歳のプレイヤーと話して、両親が40歳なんて話を聞くと
私の年齢を感じるが、同じことをMoto3のライダーと話していて感じる。

 イタリアのモーターサイクル協会サポートが若手育成プログラムを組み、
ポテトチップスメーカーのサンカルロがスポンサードして生まれたチームが
サンカルロチームイタリアである。そのチームの仮設オフィスで
クリスティアーノ・ミッリョラーティと話す。
彼がマネージャーを務めるチームは協会やスポンサーのサポートがあるが、
それ以外のチームで世界に出てくるとなるとかなりの持参金が必要で、
何とか普通の家庭でライダーの能力がある人にチャンスを与えたい。
しかし、ライダーの努力の方向や低いレベルで満足してしまっていることが
問題だと話してくれる。

 MotoGPのセッションが始まり、何ごともない平凡なことが平和である
と思うのだが、とんでもないことが起きて、空気が氷つくのは起きるのが
このスポーツである。

 アレックス・デアンジェリスのとんでもないクラッシュ。すぐに起き上がる
ことがなく、レッドフラッグ掲示でセッションストップ。メディカルスタッフ、
救急車が現場に向かう。

 こういう現場というのは私も何度も見ることがあったが、特に親しい仲
のライダーでこういうことがあると辛いものがある。

 見つめる時間がひどく長く感じるのだが、結局ヘリコプターで獨協大学病院
に搬送されることとなった。よりポジティブに考えると頭部のダメージが
ひどいてヘリコプターでの移動は困難であるわけで、そういう意味では
最悪の状況ではないのかなと思うというか思いたいと考える。

 しばらくして、セッションが再開。アレックス・デアンジェリスの状態に
関しては徐々にworstではなくてworseであるという報告があり、少々ほっと
する。

 集中するのが難しい状況であったが、MotoGPのセッションが再開。
二台のヤマハの素晴らしい走りに満足した人は多かったことだろう。
この二人は僅少差であるがそこからコンマ4秒違うというのはライバルには
ショックな話。これであれば日曜日の午後は雨のほうがいいと考える
チームやライダーも多いだろう。

 Moto2のセッション中に徐々にアレックス・デアンジェリスの状況の
アナウンスメントが入ってくる。まぁ、最悪の状況は避けられそうだということ
で関係者の中でほっとした空気感が流れる。

 Moto3のセッションが終了。まぁ、テニスを見ていて、昨年来からの
テニスの盛り上がりを眺めているから強く感じるが、自国の人間が地元の
大会で活躍したら盛り上がるが、今のレース界では日本での盛り上がりに
関しては中野や玉田が活躍してNHKBSが放送していた時代に比べて熱が
低くなるわなぁと思う。

 明日のレースがかなりの確率でレインになるということでAGVもダイネーゼ
もその対策と準備に追われる。他社はどうかというとやはりノーランヘルメット
もシャークヘルメットもいつもの仕事量にプラスして雨対策で時間が掛かって
いる。まぁ、彼らの仕事を見ていると、車の方のレーサーで業界政治の中で
レーサーのためのヘルメットを作り、準備しなければいけないのはわかるが、
そのレーサーが活躍したところで、果たして売上に繋がらないし、レースの
中で気に入らないことやクラッシュやテクニカルプロブレムでヘルメットを
放り投げたりすると、モノも出して、レーシングサービスの人間も加わり
人もモノもリソースも費やして、利益につながらなくて、腹が立ったら
製品を投げつけるというのは嫌な話であり、レーシングサービスの方々が
クラッシュしたら自らのスキルに何が足りなくて何が必要か考えるべきで
テクニカルプロブレムの場合は命を守ってくれるヘルメットを投げるのでは
なくて、コンピューターの画面に向き合って、エンジニアやメカニックと
原因を究明して次のレースに備えて同じミスを二度しないことを考えるべき
だという言葉が私に突き刺さりますね。

 遅くまでレイン対策をして、サーキットを離れる。例によってオンロード
なのにパリ・ダカールラリーのような車体の動きを感じながら水戸へ到着。
食事をしながら、アレックス・デアンジェリスのマシンに誰が乗るのか。
彼の早い回復と復帰を願うが、彼のマシンに乗りたいライダーやチャンスを
求めている関係者がジャンピエロ・サッキが落ち着いたら交渉の場を持ちたい
のは当然だし、チームも全戦参戦ということで付いているスポンサーも多い
わけで、サンマリノ人の回復を待って活動再開ということは考えにくい。
果たしてセパンやクアラルンプールで誰が走るのだろうかなどと話し、
今週末のイタリア選手権のムジェッロの状況、そのムジェッロで重いバイク
で一定程度以上のレベルがあり、ブリヂストンのタイヤ、Iodaレーシングの
マシンに興味があるライダーが誰になるのかを考える。

 個人的にアレックス・デアンジェリスの兄のウィリアム・デアンジェリス
と近いわけであの兄弟のことを考えると辛いがそれでもレースは続いている
という真理を感じながら時が流れていった。サーキットには美しいリアリティ
と醜いリアリティが存在する。
 

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