簡単に忘れてしまったり、容易に思い出せないレースもありますが、
一方でいくつになっても忘れられなかったり、簡単に思い出すレースもあり
ます。私にとって非常に特別なレースは23年前のハンガロリンクで開催された
世界グランプリの500ccクラスのレース。『ブタペストの奇跡』ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=_Rg8XrScv_A

 さぁ、スタートだという直前に雨が降ってしまい、再スタート。曇っている
中で雨は止む方向の予報の中でレースがスタート。レインタイヤを履いて、
雨での実績があったランディ・マモラが型落ちのヤマハYZRで鮮やかに駆け
抜けてレース序盤を全ての最新マシンを駆るファクトリーライダーをぶち抜いて
トップを快走するも、徐々にスピードを上げたスズキのダグ・チャンドラーが
マモラに追いつき、ほぼ完璧のライディングで二位以下を離して、しっかりと
マージンを奪って、世界中のレースファンがダグ・チャンドラーの初優勝
を信じていました。

 しかし、そのレインコンディションの中で走行ライン上が乾いてくるなか
レース中盤は50秒以上離されていたエディ・ローソンがカジバのマシンに
ダンロップのフロントにインターミディエイト、リアには何とカットスリック
を装着して、後半のドライコンディションになることに掛けたギャンブルを
当てて、一周で3秒から時には5秒も速いラップタイムで猛追。

 ラップタイムを上げたいが、無理に上げられない中で苦しいライディングを
していた日本のファクトリーライダーをこともなげに抜き去り、表彰台
圏内まで上がり、サーキットの空気が変わり、イタリアの業界関係者が
大騒ぎしながら見つめ、世界中のレースファンが普段とは違った緊張感を
感じる中、ついには大検討で二位を走っていたランディ・マモラも捉えて
さらに急追。

 そして、28周目のシケインの入り口でついにはトップに立ち、レインタイヤ
を装着している他のライダーとはカテゴリーが違うようなラップタイムを
連ねてついには大逆転勝利。

 日本のホンダ、ヤマハ、スズキといったメーカーの優勝ばかり見慣れて
いた世界中のレースファンが驚く大逆転でのレースとなりました。

 ずっと日本メーカーに離されて苦しい思いをしてきたカジバのスタッフ。
ミシュランタイヤユーザーや同じダンロップのタイヤを使用するライダー
がレインタイヤを選んだ中で、フロントにインターミディエイト、
リアにカットスリックを推奨したダンロップのエンジニアが喜びを
爆発させていた中で静かに喜んでいたエディ・ローソン。
全てが新鮮で驚きと感動に満ちたレースでした。

 あのレースを見て、イタリア人はいいなぁと思ったのが23年前の私。
そして、どの業界に行くにしても英語だけではダメだと思っていて、
映画も好きだし、料理も興味があった私がイタリア語に走りました。

 ヤマハとホンダでレースを奪ってきたエディ・ローソンのイタリアメーカー
での勝利。それは彼自身のキャリア最後の勝利であり、カジバの初めての
優勝でした。

 その忘れないレースというのは昔からのレースファンが忘れることが
できないレースであり、すぐに思い出せる戦いであり、また、私の人生を
鮮やかに変えてしまったものでした。

 
 

 

コメント

nophoto
きつり
2017年6月19日17:48

同じようなことを感じていた人が他にもいてくれて嬉しい限りです。
バリ伝のサロンやグンのやった文字通りマンガな出来事が現実でも起こったというか、現実は小説よりも奇なりって事ですね^^