カタールで行われたスーパーバイク世界選手権でシルヴァン・ギュントリが
二連勝でワールドチャンピオンになりました。

 私と彼とは近い場所にいたり、離れていたりと立ち位置は変わりましたが、今も昔も
変わらないのは彼はいいライダーであるという認識です。

 カンペテッラレーシングで250ccクラスに参戦していた時にホスピタリティで食事し
ながら話していた時、MotoGPでテック3でダンロップカラーのマシンで走っていた頃、
彼は勝てる可能性があるライダーでしたが、勝てずにいました。

 能力はある。しかしながら、彼のパスポートはフランス。スペイン人やイタリア人が
得られたり有しているようなスポンサーであったり、システムとは離れています。

 MotoGPのパドックからスーパーバイクのサーキットへ。競争力のあるマシンで
走れるようになり、『ウィナーズクラブ』の仲間入りをしました。

 しかしながら、タイトルは遠い。そして、昨年も今年もトム・サイクスとカワサキは
素晴らしい速さと強さを見せていました。

 シルヴァン・ギュントリとアプリリアはエンジンであったり、車体の問題などもあり
強いサーキットともろさがまともにでるコースとがはっきりと出てしまったシーズン
前半でした。

 しかし、このフランス人もアプリリアのスタッフも諦めが悪いという勝負師が必ず
持っているメンタルを常に持っていました。

 マレーシアでマルコ・メランドリとシルヴァン・ギュントリの二人とアプリリアは
レコンキスタを開始しました。トム・サイクスは倒すべき相手であり、カワサキの
バイクは羨望のまなざしで見るべきものではない。追い越せない相手ではない
ということを実証したのがセパンでの美しい1-2フィニッシュでした。

 シルヴァン・ギュントリとアプリリアにとって、ロシアと南アフリカの二大会、四レース
のキャンセルは悪夢であり、受容できないことであったことでしょう。そして、
ルマンやブルノやニュルブルクリンクでのレース開催が浮かんでその後具現化
しなかったことは悪い潮目を感じることだったことでした。

 しかし、シルヴァン・ギュントリとヴェネト州のメーカーは勝つことだけを考えてr
いました。そして、勝てない時はできうる限りのポイントを稼ぐことに全力を注ぎました。

 そして、13ポイント差で迎えたカタール。どんな形で終わるにせよ彼は『日曜日が
待ち遠しい』と思ってレースウィークに臨みました。

 難しく厳しいレースを彼はダブルウィンという最良の成績で終えて、そして、
ワールドチャンピオンになりました。

 地味なワールドチャンピオンだと思いますし、爆発的な何かを感じさせるライダー
ではありません。しかしながら、スペイン人でもイタリア人でもない彼がチャンピオンに
なったというのは大きな意味があります。

 ビッグスポンサーやメーカーとの関係性がなくて、オーストラリア選手権で素晴らしい
走りをして、ワイルドカードで走った250ccで輝きを見せたトロイ・ベイリスは初めての
チャンピオンになったときに多くのレースファンが思ったのは実力はあるが地味な
チャンピオンというものでした。

 同じようにメカニックをやりながらレース活動を始めて、小さなチームで世界選手権
の125ccクラスにやってきて、大きな浮き沈みの中でレース活動をして、ノーギャラ
で走ってワールドチャンピオンになったアルノー・ヴァンサンには派手さとは無縁でした。

 しかしながら、上記の二人のワールドチャンピオンはビッグマネーを得て、歴史に
名前を残し、今でも多くのファンから愛されています。

 国籍はフランス。地味であり、派手さもなく、アピール度も薄い彼ですが、そんな彼が
流麗にして典雅な走りでアプリリアを走らせて圧巻のダブルウィンで世界一になった。
その彼のライダー人生は大きく変わることでしょう。そして、生まれ持ったスーパー
スターでもなく、スペイン人でもイタリア人でもない彼がどんなワールドチャンピオン像
を見せてくれるのか。変わるであろうシルヴァン、変わらないであろうギュントリの
今後を見続けていきたいと思います。
 

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