スーパーバイク世界選手権のイモラの後、チームと別れて、生活のほとんどを
小さい子供のための父親業をしていたミシェル・ファブリッツィオが今週末のレース
に参戦します。
 http://www.gazzetta.it/Moto/14-10-2014/fabrizio-civ-mugello-90742591509.shtml

 日本のレースファンはMotoGPの日本グランプリの翌週のオーストラリアのことを
考えている人がほとんどでしょうが、私や私のこのブログを愛読してくれる人は違う
選手権を考えているのではないでしょうか。そう、今週末はイタリア選手権の最終戦
です。

 どのカテゴリーでも最終戦というのは気になるし、タイトルの行方には目が行くし、
来年のチームやメーカーの動向に関してオフィシャリーにもアンオフィシャリーにも
活発になっているしで、近い将来のイタリア選手権や世界選手権に向けて先行投資
であったり、実験が行われたりするのですが、際立った動きというのがチームスリアーノ
でMVアグスタF3をミシェル・ファブリッツィオが走らせるということでしたね。

 私はこのローマ人のことを125GPで走っていた時もストック1000選手権に参戦して
タイトルを獲った時も割りに近い関係でした。

 その後、彼はWCMでMotoGPで走り、マシンの競争力の差が小さくなるウェットレース
で素晴らしい走りを見せて評価を高めます。(彼がノーギャラでR1ベースのエンジンで
チームの予算が少ない中でトップに迫る走りをした時にさすがに高い金を払って
雇っていてワークスマシンを走るライダーたちはチームマネージャーに責められた
そうです)

 そして、ホンダイタリアからの熱烈なオファーを受けて、メガバイクホンダでCBR600
を駆ることになりました。

 彼と会った時は『バイクが日本のメーカーでタイヤがフランスでスポンサーがイタリア
でメカニックがスペインだったりしたら、当然英語になるからビッグチームでファクトリー
マシンを走らせるなら英語が必要だ』と話して、彼は『わかった。わかった。』という返事
をしましたが、彼はマックス・ビアッジやヴァレンティーノ・ロッシとは違って英語に対する
意識がなくて、結局イタリア語オンリーでした。

 そんなわけで、当時、縛りのなかった私がイタリア語ー英語ー日本語の通訳として
関わったのですが、彼はマックス・ビアッジと同じローマ人ですが、ビアッジと異なり、
彼は普通のローマ人であり、ビジネスに関するシビアさがなく、与えられた環境で
満足してしまっているようでした。

 一定以上の技術と実力がある。パスポートはイタリア。そういうことでスーパースポート
時代からホンダイタリアの分厚いサポートもあり、その後、スーパーバイクに乗ること
ができ、その後ドゥカティに入り勝つこともできた。しかし、ドゥカティの低迷によってライダー人生が変わりました。

 マシン開発能力で疑問符が残り(自分の好みに仕上げることは何とかできる)
開発ができるいいチームメイトがいないとしんどい。そして、英語が話せないというか
苦手というかやる気がない。(だから、かつて彼の周りが私を引っ張ることで何とか
しようとした)

 若くて元気があるライダーが出てくる中でファクトリー体制で走れなくてカワサキ系の
チームに移籍したが、チームの問題やらマシンの性能もあって思うように走れずに
小さな子供の相手をすることを大事だと思いマシンを降りた。まぁ、立派な父親かも
しれないが素晴らしいライダーとは言えない。

 そんな彼に今週末、スーパースポートの傑作マシンのMVアグスタF3を走らせる
オファーを出したというのは、彼の体が空いていたからというシンプルな理由もあるの
ですが、メーカーの思惑だったり、チームの方向性などが絡み合ってのことでしょう。

 30歳は若くはないが、レース活動を辞めてしまう年齢でもない。同じ年代であり
浪人生活をしていたロレンツォ・ランツィがドイツスーパーバイク選手権で鮮やかな
勝利を奪い、ワイルドカードで参戦したフランスのマニクールで腕がさび付いて
いないことを見せて、来季に関して大きなアピールとなりました。

 果たしてミシェル・ファブリッツィオは今週末のムジェッロでどんな走りを見せるのでしょうか。気になるところです。
 

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