空港からピックアップサービスの車で20分。ここからサーキットへ10分ほど。
何度も足を運んだサーキットに入る。

 いきなり、パスの件でどたばたしたものの、なんとかパスを入手してサーキット入り。
チームロリーニの皆さん、本当にありがとう。改めてなんやかんや面倒なことになった時に
手助けをしてくれるのはイタリア人だなと思う。以前のミザノでのテストの時に、年間パス
を持っている人はフリーパスだが、私のようなレース毎にパスを入手する人がゲートで
止められた時も助けてくれたんはピレリのジョルジョ・バルビエールだったなと思い出す。

 パドックに入り、まず最初に出かけたのがノーランヘルメットの簡易オフィス。今回、
ヘルメットメーカーでレーシングサポートをしているのはここと日本のアライヘルメット
の二社のようだ。まぁ、各社できることとできないことがあり、この時期にぽつんと
マレーシアラウンドというのは出張予定を決められないメーカーも多いのだなと思う。

 しばらくぶらぶらしていると、カワサキの600で走っているケナン・ソフォーグルが
オフロードバイクでウィリーをして遊んでいるので、挨拶がてら顔を出す。そこに
イタリア人の他のチームのメカニックもやってきた。こういう時に話すのは英語になる。

 このトルコ人は今季開幕前はチャンピオン候補の大本命だったが、レースの世界で
必要な勝ち運に恵まれずにこの中盤となってしまった。そんなわけで、今回以降、
もうタイトルを諦めて、好きに走って、結果勝てたらいいやというように考えている
ということ。

 国籍はトルコだが、住んでいるのはドイツ。そんなわけで、このマレーシアは暑いと
言っている。まぁ、ドイツのようにアイスホッケーがそれなりにポピュラーな国であると
夏だけで他の三つの季節がないのは大変だろう。私が2010年の12月にここにいて
33度あって、湿度が70度あって、イスラム教徒のマレー人と仏教徒の中華系が
『メリークリスマス』というのがこの国の姿と話すと笑っていた。

 ケナンと別れて、しばらくぶらぶらしていると、ロベルト・ロルフォがやってきた。
今回、このセパンでレースをするが、ここで走ったことがあるライダーはかなり
少ない。その少ないライダーの一人がトリノ出身のロベルトである。

 彼はいつもにこやかに笑みを浮かべている。そこで、2011年のカワサキのテストの
時もここで走ったし、その前の年のマレーシアグランプリでMoto2 クラスで勝っている
わけでここで走った経験のない連中に比べて有利ではないかなどと私が話すと
『いや、ここでトップ5クラスに入るような連中はすぐにコースを覚えて速く走るから
君が考えるほど私に経験に沿ったアドバンテージはない。』と顔はにこやかながら
目つきは変わって話してくれた。勝負師がレースの勝敗の核心に関する話になった
時に彼は顔はにこやかだが目つきが変わる姿に、まだまだ彼はただ参加するだけでなくて
勝とうとしていることがわかって嬉しかったな。

 ピットを歩いて、今年からBMWのリッターバイクでEVOというカテゴリーでスーパーバイク
で走っているイムレ・トスと顔を合わす。あいさつは英語でしたのだが、彼はイタリア語で
話したがるみたいなのでイタリア語で通す。

 英語を含めた多言語を話す人というのは理解できると思うのだが、英語で話すより
イタリア語で話す方がオープンになる。私とアレックス・ホフマンやヤクブ・シュムルツが
イタリア語で話している時などはまさしくそういう状況である。そんなわけで、本音で
話したり、聞きたいのだなと感じる。

 今季からの新しい挑戦をどう思うかと聞くと、業界的な政治学などでBMWイタリアの
方のチームにリソースなり、物的支援などが最初にことが運び、我々のチームは後回し
になっていたり、ハンガリーのチームだから難しいことがあったりなどということでそれが
当然のことながらライダーのタイムや成績に直結してしまっているなどと教えてくれる
というかぼやく。

 ライダーは元気なんだが、まぁ、色々とやることや我慢すること、受容しなければ
いけないことが多いようだ。

 ここで離れて、ノーランヘルメットに戻る。少し歩いて、気合を入れて緊張感を持って
情報収集すると何だかこの30度台後半の温度だとすぐに喉が乾く。冷房の効いた部屋で
水を飲んでいると、そこにやってきたのがマルコ・メランドリとクラウディオ・コルティ。
ほとんどのライダーがそうだが、今回のレースでライディングスーツにドリンクパックを
仕込み、そこからヘルメットを通して、水分を取るように改良を加えている。その要望と
改良と使い心地などを話している。ノーランとアライは今回スタッフは来ているが、今回
来ていないメーカーの契約ライダーは大変だろうなと思う。

 ピレリのブースに行く。ヨーロッパラウンドではストック600にストック1000というカテゴリー
もあるので、人もタイヤも多いのだが、それに比べると人もモノも少ないなと感じる。
そこでエスプレッソを飲ましてもらいながらうだうだ話す。今週は実はイタリア選手権、
スペイン選手権、ドイツ選手権のレースも重なっていて、ピレリとしても人材の配置やら
ロジスティクスなども大変だったようだ。

 その後、ノーランヘルメットのオフィスに戻り、ダビデ・ジュリアーノと会ったり、アイルトン・
バドビーニといったかつて彼らがストック600やらストック1000選手権、イタリア選手権時代
に同じチームだったり、よく顔を合わせた連中とうだうだ話して過ごして、帰路につく。
それにしても暑すぎる。これは今までにないレースウィークになるのだろうなと感じながら
チームペデルチーニと同じホテルに戻り、メールをチェックして冷房を直接体に当たらない
ように方向を変えて寝る。さぁ、明日からはレースウィークだ。

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