オートバイのレースにおいて、ライダーが能力があっても、それを表現できる
バイクやサスペンション、チーム体制などがなければ、速いタイムや高い順位を
記録することができません。そんなわけでテレビやパソコンの画面を見ていると
多くの世界中のレースファンから遅いライダーだと思われている人の中に
輝く才能を持っている人もいます。

 今季、MotoGPクラスのルーキーで常に最後尾を走っているダニーロ・ペトルッチですが
彼がシーズン途中でドゥカティのマシンをテストする機会に恵まれています。

 このことというのは単純にタイムや順位を見ている人にとってはなぜだろうという
謎に感じてしまうかもしれません。

 そういう印象を抱く人はおそらく世界中に多いはずですが、一昨年、昨年の彼の
走りを見ている人というのは、彼にチャンスを与えたいと思うはずです。(業界的な力がない
のですが私もその一人でした。)

 昨年の後半の彼の走りを見て、彼をスーパースポート世界選手権に参戦させることが
できたら面白いだろうなと考えていましたが、ジャンピエロ・サッキのCRTバイクによる
MotoGPプロジェクトの話が進み、彼は契約を結ぶこととなりました。

 その選択というのは彼自身が興味を持ち、能力を発揮できると考えてサインをしたの
でしょうが、残念ながら、今日に至るまで彼の輝きは見られません。

 しかしながら、彼の本当の能力を知っている人、そして、カテゴリーが違うとは言え
乗り味を知っているドゥカティのマシンを走らせてみたいという人、ドゥカティで現在
のチームでの活動を進めたら面白いのではないかと考えている関係者、ドゥカティ
のジュニアチーム結成の際の有力な候補と考えているメーカーのスタッフなどの
希望や思惑が重なりドゥカティのMotoGPバイクをテストしているという報道が
されました。

 チームやマシンが変わることで劇的に成績が変わるということはレースの歴史が
証明しています。ミッシェル・ファブリッツィオやミケーレ・ピッロが125では大したことが
なかったのにストック1000で世間をあっと言わせて、その後の出世につながったことを
記憶している人も多いことでしょう。

 また、ダビデ・ジュリアーノの輝きを見て、これは楽しみだと思ったファンが多かった
のですが、間違ったチームやチームの選択によって、暗黒時代を過ごしてしまったが
彼の能力を発揮できるチームに移って、ストック1000選手権を周囲の予想と思惑通りに
制してスーパーバイク世界選手権にやってきて競争力を発揮しているのはご存知の
方も多いでしょう。

 ダニーロ・ペトルッチを能力がありながら、マシンパッケージやチーム体制に
恵まれずに終わってしまったクリスチャン・リンドルムのようにしてはいけないと思っている
人の多くが彼にチャンスを与えようとしています。

 世界や日本のレースファンにとって彼のテストライディングの機会の提供というのは
意外に思われそうですが、私はまっとうな評価の現れだと思っています。

 
 

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