相撲の世界を離れ、格闘技のリングに上がり、現在はプロレスをしている曙が
プロレスの世界で世界チャンピオンになりました。
http://www.nikkansports.com/battle/news/p-bt-tp0-20120303-911903.html

 まぁ、プロレスという世界でのチャンピオンというのは単に格闘技術や能力だけ
がタイトルと直結しているのではなく、観客動員力や団体内外での政治力学、
プロモーターの考えや観客からの支持率などが複雑に絡み合ってタイトルマッチが
組まれて、そこで防衛したり新たなチャンピオンが生まれるのものですが、ひとつの団体が
曙に興業の看板となるタイトル奪取を認めたというのは色々な意味で曙に力があると
認められたからでしょう。

 かつて、曙が相撲の土俵に立っていた時にライバルであり、ある意味善玉であったのが
若花田と貴花田の兄弟。彼らに立ち向かう曙は悪役や敵役というイメージで見られていました。

 その時の相撲界を見ていると、双子山部屋が勢力を非常に拡大していた時であり、
優勝決定戦以外は同部屋対決が禁じられているため、若花田と貴花田の兄弟は強い
力士とあたることなく勝ち進むことができた。

 一方で曙は難しい相手と毎日戦うことになり、非常に優勝するのに苦労したという
印象があります。

 世間的にはいい人で善人である若花田と貴花田。そして、そのいい人を叩きつぶそうと
立ち向かう悪人の曙というような構図がNHKを中心に出来上がっていたような気がしま
すが国民的な人気をもとに腹黒さと政治力学と経済力を使って有利な展開で勝利を奪
おうとしていた双子山部屋の日本人力士である若花田、貴花田に立ち向かう格闘技術
や体力はあるが政治性や経済力からは離れた場所にいて体一つで難しい戦いを
しながら優勝しようとしたアメリカ人である曙には敵役や悪人イメージがありました。

 その相撲の現役時代の土俵以外でのある種の政治権力争いも含めた戦いがヒート
していて、その中で本当は言いたいこともあるがそのことに触れずに『頑張って稽古
していきます。』とか『少しでもファンの皆様にいいところを見せたい』なんて言いながら
色々な意味で強い双子山部屋勢に立ち向かっていった曙にシンパシーを感じていました。

 その若花田や貴花田はほかのスポーツに行くことなく、相撲の世界に近い場所か
内側で生息しているのですが、曙が総合格闘技のリングに上がったのちにプロレスの
世界にいるというのは不利な条件のなかで土俵で戦っていたことに対するもやもや感が
解消されなかったから、相撲の世界から離れてリングに立ち続けているのではないかと
想像します。

 プロレスのキャリアの中で世界チャンピオンとなり、興業の主役となること。
プロレス的な約束事や決まりごとはあるが、自らのパワーや技術を見せて
観客を湧かせて、収入を得ようとしていることなど何か相撲の世界で世話にもなりながら
一方で嫌な思いをしてきたことに対する反感が彼の中にあるような気がします。

 果たして曙はどんなチャンピオンとしてリングに立って防衛ロードを進んでいくのか
気になっています。

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