最近、レースを見始めた方にはルーチョ・チェッキネッロを見るとチーム
マネージャーとしての彼しか知らない人も多いことでしょう。彼はライダー
としてイタリア選手権から始まり、GPでも戦っていたライダーでした。
その彼を私は高く評価しています。

 チェッキネッロが現役のライダーとして活動していた時期、パドックで彼と戦っていたライバルのライダーは彼のことを非常に低く評価していました。

 それはマシンを走らせる能力という部分で劣る部分がある。先天的に飛びぬけた
能力を有していないというものでした。

 このライバルたちのチェッキネッロ評ですが、これはチェッキネッロ本人も
百も承知のことでした。

 では、彼はどうしたのか。

 モータースポーツは道具を使うスポーツであり、その道具の善し悪しがタイム
や成績と密接につながっています。

 チェッキネッロがもし、ワンメイクのレースでマシンもタイヤもサスペンショ
ンも同じで行われるイコールコンディションでのレースだったら勝てなかった
ことでしょう。

 また、同じエンジニアが全ての参加ライダーのマシンのマシンをメンテナンス
するレースだったらライバルに負けてしまうことでしょう。

 しかしながら、彼が戦ったレースはタイヤ以外の部分はチームが各メーカー
と契約して好みのメーカー、いい条件の会社の製品を使うことができる。
それがもたらすことは何なのかをチェッキネッロはよく知っていました。

 また、スポンサーを獲得し、予算を確保し、契約の決まっていないエンジニアを
いい条件で誘うことができたらどうなるのかを理解していました。

 densoとの強い関係性を有することができればスペシャルなプラグを用意
してもらい、速いタイムを出すことができる。

 彼がかつて高村氏や都築氏と長い時間を話し合っているところを見た人は
パドック内で多かったことでしょう。私もその一人です。

 また、他の部品メーカーと開発を請負い、彼のテストを行い、それを
エンジニアに伝えて開発を進めながら、好みの部品を供給してもらおう
と考えるのは彼にとっては自然なことでしょう。

 レース業界に縁がなかった企業に話を持ち込みスポンサーとして迎えて
予算を確保していいエンジニアを雇うことを考えたのも彼にとっては
当たり前なことでした。

 彼は自分に不足している部分がわかっていて、いい環境を作り、いいマシンや
部品を獲得して、キレるエンジニアリングスタッフを確保すればタイムを
更新して世界選手権格式のレースで戦えると考えていたライダーにしてマネージャー
でした。

 モータースポーツにバイクメーカーとの関係性や部品メーカーとのつながり
やスポンサーマネーの重要性がわかっていて、ただ走ることを考えるのではなく
いいパッケージングを保有して走ろうとしてそれを実現化したのが彼でした。

 彼は単に運がいいから走れたのではなく、いい状況を自ら作り、走る環境を
用意した大変頭も体も使ったライダーでした。

 この頭も体も使うという部分を私は評価しています。

 自分に何ができて、何をすべきかをサーキットの外で考え、走り回った
彼はサーキットに着いた時にいいパッケージを持つことができ単に走るだけの
能力では上を行くライダーとしっかり戦うことができた。

 今の経済状況の中でライダーが未だにただ走ることだけを考えているライダーを
見につけ、チェッキネッロの現役時代を改めて評価する私です。
 

コメント