USオープンが開かれている中で、レポートを書いている日本人の女性ジャーナ
リストに山口奈緒美がいますが、それ以外に書く人がいない。また、映像メディアでは女性アナウンサーは実況という立場にない。これはどういうことなのでしょうか。

 日本のテニス関係の雑誌の世界では編集長という立場でマネージメントサイド
に関わる人は過去にも現在にもいるのですが、書くという人は山口さんぐらいしか
思い浮かばないですね。

 ひとつ考えられるのは、20年以上前から、雑誌で書く人がほぼ固定化されて
いてやる気があっても、ページ数に限りがあり門が閉ざされているということ。

 そして、もうひとつ考えられるのは、テニスやジャーナリズムに興味を
持っていても書いたり話すことに興味や欲望がないというものかなと思いますね。

 私が日本でテニスをやり始めたときに思ったのは、当時、日本にはテニスの
雑誌が五誌もあったのですが、テニスはやるだけで見ることがほとんどない
という人や書いたり話すことに興味を持っていないという週末プレイヤーの
多さでした。

 サッカーなどに関していうと、サッカーやフットサルをプレイもするが
応援する地元チームやナショナルチームを注目し、話したりすることが
当然であるという土壌があると思うのですが、それがテニスには欠けている。
そんな中でテニスに関して自らの脳みそと心を使って試合や技術、大会の
背景などを文章化したり、言葉にして世に問うというということにとりわけ
日本人の女性は考えが及ばないのかなと思いますね。

 テレビということで考えると、かつてテレビ東京がロランギャロの放映権を
持っていたときに当時のテレビ東京のアナウンサーであった土川由加が実況を
したことがありましたが、私のような一視聴者の目線からすると「藤吉次郎さん
に担当してほしい」と思ってしまいました。

 何事も経験だと思うのですが、土川さんが実況を続ける機会を得たら
女性のスポーツ実況のアナウンサーとしてパイオニアになったかもしれませんが
テレビ東京としては藤吉さんの卓越したアナウンス技術やほかの男性のスポーツ
実況を選ぶということになり、ロランギャロの放映権の最終年までその考えを
貫きました。

 原稿読みや司会とは違う能力を求められるのがスポーツ実況なのでしょうが、
そういった部分で経験がないからできないのか、あるいは元から向いていないから
女性の実況アナウンサーが存在しないのかわかりませんが、日本の放送業界の
外にいる私にとっては理由がわからないまま男性のアナウンサーの実況を
聞くことが続いています。

 まぁ、リッターで10キロしか走らない車を見て、「車なんてこんなものだ」と
考える人にリッターで30キロ走る車種の開発などできないわけで、不満足感や
欲求不満が広がっている中で強い渇望と深い欲望を持った人が現状にないこと
を具現化できます。

 いい意味で欲が深く、テニスについて書きたい。テニスの実況をしたいという
人が現れた時に歴史は変わるのでしょう。

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