四月二十三日

 ホテルにマウリッツィオに会いに行くが、まだ、部屋から降りてこない。
suomiヘルメットのエンリコはレセプションのところに降りてきたが、
まだ来ないので心配になってエンリコが部屋に電話すると、寝ていたらしい。

 定刻より二十分遅れて、出発となった。例によってイタリア製ヘルメット
メーカーのサービスパーソンの呉越同舟である。日本のアライとショーエイが
一緒に車に乗って現場に行くことは考えられないが、イタリア人というのは
ライバルというより、同じ現場で働いているという仲間意識が強いので、
こういうことはありである。

 以前、私がホンダイタリアやチームアブルッツォと付き合っていた時と
いうのは、割に大会運営側が推奨するルートで水戸からサーキットまで
行っていたのであるが、マウリッツィオとエンリコというのは、どこで
どう調べたのか知らないが、早く到着するルート情報を入手していて、
それを駆使していく。

 道中の中では、昨年の話、今年のユーロ安円高の話になる。
私のような立場の人間がヨーロッパに入るのはありがたいが、昨年の
1ユーロ155円を味わっている彼らにとってはすべて高く感じるらしく
ヤマダ電機でもそれほど財布のひもは緩まなかったらしい。

 約50分ほどでサーキット到着。インフォメーションで仮説のオフィスの
鍵を貰い、その場所に行き、作業の下準備に入る。

 今年のAGVヘルメットのユーザーライダーは六人プラスワイルドカード
参戦のライダーということ。今回は日本人でイタリア製のヘルメットを
使う人はいないため、レギュラーの六人ということになる。

 木曜日ということもあって、ライダーも続々到着し始める。
昔からの付き合いの連中は再会を喜び、イタリアの新人ライダーは私が
イタリア語を話すと知り、かなり驚いている。

 ニッコロ・カネパが姿を現し、言葉を交わす。そこにチームプラマックの
スタッフも一緒にいるが、私とカネパはかつて私がダビデ・ブレガのチーム
を手伝っていて、そこに彼が遅いライダーの後任としてやってきて、同じ
ピットで戦っていた仲間であり、お互いに仲がいいことを知り、それを知った
プラマックのチームスタッフはひどく驚いていた。

 カネパは初めてのもてぎであるが、どうなるのだろうか。
私は彼の能力の高さを知っているが、単純に速く走るだけではなくて、
様々なファクターが必要とされるのが今のMotoGPである。そして、
いい意味でがつがつしていて、欲望が強くないと難しいカテゴリーである
のだが、そこで走るには彼は少し、性格がおとなしすぎるような気がして
しまう。
 昨年、顔を合わせていないうちに何かいい方向での変化があるといいのだが
速さのあるいい人では戦えないと考えられるこのクラスでどんな獰猛さを
身につけたのか気になる私であった。

 カピロッシの親父と会い、相変わらず元気そうで安心し、イタリアのテレビ
スタッフと言葉を交わし、タルマッチと再会を喜び、メランドリ、パジーニ、
シモンチェッリといったあたりが輪になっているところに私が登場し、
昨日のメランドリ一日買い物ツアーの顛末をライダーやメカニックあたりと
話すとまぁ、みんなシャワートイレが200ユーロ以下で買える話になった
とたん、食い付きがものすごく早い。
 改めて、日本の商品ラインナップや独自のカルチャーを感じる私であった。

 そんなこんなで気がつけば夕方となり、少々遅く到着したdaineseの
スタッフ、nolan,suomiのサービスパーソンと共に車に乗り、マウリッツィオの
運転で水戸へ帰還。

 一緒に夢庵に食事に行き、メニューの説明をしながら、和食好きの連中と
共においしい食事を口にして、宴は終了。
いよいよ、レースは明日からである。


 

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