越境者たちの美しいバトル
大阪スーパージュニアは今日も面白いバトルがあり、一日テニス三昧で
過ごしました。その中で非常に試合だけでなくサイドストーリーもコミコミ
でおもしろかったのが、ムラデノビッチ対ディヤスのゲームでした。

今年のオーストラリアンオープンでヤングオージーのトミックという少年が
ボーイズシングルスを制しました。

その試合の後、武田薫氏がテニスマガジンにラケットひとつで世界中を飛び回り
夢と希望を具象化するためにテニスライフを全うするプレイヤーの生きざまに
ついて書いていらっしゃいました。

そんな単にプレイヤーとして大会を周るだけでなく、国や制度や環境を考えて
ボーダーを超えて戦うプレイヤーのバトルがこのムラデノビッチ対ディヤス
でした。

フランス語を話すコーチとセルビア語で声援を送る身近な人の声が
フランス人らしくない名前でフランスのパスポートを持って大阪に
やってきたプレイヤーに届きます。

そして、カザフスタンの国籍を今も持ちながら、現在はチェコのプラハに
住居を持つ来週十五歳になる少女にはチェコ語の声援が飛びます。

自国ではいろいろな意味でテニスライフに障害やら不便があり、可能性を
信じながら美しい未来を具現化しようとしている二人の負けられない戦いは
ぶ厚い当たりを打とうという強い思いときちんとヒットしなくても何とか返球
しようという高い志を内包しながらボールがネット上を行き来しました。

何度彼女たちから『come on!』という声を聞いたでしょうか。そして、
自分の許せないミスに対して母国語でシャウトしたことでしょう。
その言葉にエネルギーやらパワーを感じたのは、テニスを愛するお客さん
でした。

どちらも勝ってポイントをしっかり稼ぎたい。二人とも先に進みたいという
思いがショットから横溢する中、勝者となるのは一人でしかありません。

どちらもエースもミスもあった中で勝ちきったのはディヤスでした。

次の相手は奈良くるみ。ジャパンオープンジュニアを制し、日本のナンバーワン
ジュニアであり、この大会のディフェンディングチャンピオンであり、大会の
第一シードです。

彼女を倒すこと。そして、この大会の日曜日に笑うことを考えているディヤス
を見逃すのは、テニスを深く愛し、プレイの裏側まで深く考えてコート上を
見ようとする人にとって大きな損失だと思います。

土曜日に時間があって、テニスを愛していて、大阪エリアにいる人は
ぜひ、彼女のプレイからにじみ出るパワーやエネルギーや毒や志や
希望や夢などを見ていただきたい。

自分の育った町や国にいれば、地縁やら血縁やら母国の制度や風習から
得られるものがあるはずです。

しかし、それから得られるものより、縛られるものが多いと考えたディヤスは
やりたいことをやるための自由(あるいは権利)をラケット片手に越境する
ことによって、自分の思いを貫いて得ることができました。その自由を胸に
秘めて戦います。

奈良くるみのホームでアウェーの中で常に外国での居住を感じている彼女が
何を見せてくれるのか楽しみです。

写真は試合直後のディヤス


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