トロイ・ベイリス三度目の王者に。

スーパーバイク世界選手権のフランスラウンドの第一レースをベイリスは
三位でまとめて、彼の三度目の世界王座が決定しました。

ドゥカティの新しいバイク。彼の最後のシーズン。
シーズン開幕前には様々なことがパドック内を駆け巡った08年シーズンでした。

ただ、様々な変化があったなかで変わらなかったのは彼の強さであり、
速さでした。

『非常にいい奴だが、ヘルメットをかぶった瞬間、あいつは悪魔に変わる。』
と話していたのはかつてのチームメイトのルーベン・チャウスでした。

オフタイムは非常にきさくないい人で私に対しても丁寧に応じてくれて、
ちょっと私が困った時に助け船を出してくれたこともありました。

しかし、チャウスが話すように、走りに関しては妥協を許さない彼が
新型バイクを開発するとなった時により曲がるバイク、パワフルなエンジン。
機能性の高いマテリアルを求めて高いレベルのリクエストをエンジニアリング
グループに求めてライダーとして速く走るためのわがままを言い続けたのは
間違いありません。

そして、その持っている能力を十二分に発揮できた時に彼は人なつっこい
笑顔を浮かべて、エンジニアリングスタッフに心からの感謝の言葉を
並べていました。

間違いなく彼には王者に必要な悪魔性とそれとは正反対の天使の顔が
あります。

そんな彼がドゥカティのリッターバイクという旧来のマシンの延長上に
あったバイクではなく、排気量が変わったニューバイクで取ったタイトルというのは
今までの二回のタイトルにない違った感慨があるものでしょう。

彼の速さはスペシャル。彼のライディングスタイルはオリジナル。
このゼロックスドゥカティの走りはコピーできないものです。

その彼に世界タイトルはふさわしいものです。
おめでとう。トロイ。スポンサーがなく、メーカーとの密着した関係が
ない君のような存在が多くのライダーに希望を与えたことでしょう。
そして、小さい頃からミニバイクなどで走っているライダーが多い中で
ある程度年齢を重ねてから走り始めてからでも世界王者になれることを
証明したことは素晴らしいことだと思います。

そして、ぼろぼろになる前に美しい姿でヘルメットを脱ぐ姿を見てほっと
しています。

ドゥカティとベイリスの美しさと速さの高いレベルのスーパーミクスチャーを
見られた同時代に生きることができた幸運を心から感じています。