すでに複数のメディアで取り上げられているヴァレンティーノ・ロッシ
のタイヤチェンジですが、これはいろいろな意味でギャンブルだ
と思っています。

タイヤの性能が特定のチームやメーカーの勝利に結びついている
ということが今季のミシュランユーザーが口にしていたことで
したが、では、ミシュランが優勢であった昨シーズンまでに
ミシュランからブリヂストンにスイッチしようと考えていた
ライダーやチームは果たしてどれだけいたのでしょうか。

負け始めてから、タイヤの性能差が大きすぎて不公平だと
口にするのは自分勝手だと思いますね。

また、ブリヂストンの優勢は明らかだったのですが、では、
全てのブリヂストンユーザーが勝利していたのかというと
そうではない。ケーシー・ストーナーのタイトル獲得は
ドゥカティの車体とエンジン、サスペンション、タイヤ、
そして優れたライダーというパッケージングの勝利だと思います。

レギュレーションが変更した800cc元年となった今年の
春先にリアルにドゥカティとヤマハのマシン性能差を感じた
ダビデ・ブリビオは『ヤマハは、あるいは日本人はリスクを
冒さなさ過ぎる。劣勢になったら何かを変えたり、捨てたり
して、局面を打開しなければいけないのに、変化を好まない。』
と口にしていましたが、まったくその通りだと思いますね。

一方、ドゥカティのリービィオ・スッポは『我々は日本メーカー
と比べて小規模なので勝ちに行くにはリスクを冒す必要がある。』
と話していました。

リスクを冒さずにマシンを開発して破れたヤマハ(および
ヤマハライダー)とリスクを冒してマシンを作って
勝利したドゥカティ(およびケーシー・ストーナー)の違い
はタイヤメーカーの銘柄だけではなかったと思います。

私が今年のシーズンを振り返って思うのは、勝者と敗者を
分けてしまった重大な部分はレースをやるメーカーとして
リスクを冒してまでも勝ちに行く姿勢だったと思います。

まぁ、タイヤの性能差を指摘する一方でロッシはバイクに
関してやるべきことがあることを口にしていたわけで、
そのあたりは実際一緒にレーシングスピードで走っていて
解析能力の高い彼が感じていたことでしょう。

まぁ、マシンが良くなかったこと、不足や不在やドゥカティとの
差があったことなどを宿題にしてヤマハにしてもロッシにしても
巻き返しを図っていくのでしょうが、タイヤの違いをかなり
強く説明の材料にしたことというのは、チームやメーカーの
責任をあいまいにすることになりかねないなぁと思いますね。

メーカーもエンジニアもライダーも失敗をしてしまうのは
あるのでしょうが、その失敗を材料にして学んだり、改良
をすることで優れた車体なり、強いエンジン、機能的なサスペンション
ができあがると思うのですが、タイヤの違いを強調するとなると
その失敗や失策を振り返りたくない気持ちが蔓延する気がします。

さて、ヤマハがダビデが話していたようにリスクを冒して
勝ちに行くのか、今年のシーズンを苦い薬にして漢方薬なり
カンフル剤を使って再び勝利を手にするのだろうか。
新型マシンの登場が楽しみです。

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