スペインのスーパースポートのレース。オープニングラップで
全力少年ぶりを発揮していたのが、フォレスでした。
R6を駆って、何が何でも勝つんだという欲の大きさや夢の
でかさが走りからにじみ出るというより、横溢する姿に
昨年のモンツァのナンネッリを思い出しました。

昨年のスペインのヴァレンシア。速さと強さを見せ付けた
ウィンストンテンカーテホンダとシャーペンティエ。
その一方でドゥカティ陣営は明らかに空気が冷たかった。

グールベルグはこの車体、とりわけリアサイドでは戦えない
とはき捨て、チームを離脱。他のドゥカティユーザーも
同じような印象を抱いて、二週間後のモンツァを戦わなければ
いけなかった。

本来はスーパーバイクで戦いたかったナンネッリ。
車体の出来やライバルとの違い、シャーペンティエとの大きな
差とホンダとドゥカティというメーカーがスーパースポート
クラスに対する熱の入れ方。大きな差異がそこにはあった。

しかし、彼には王者やウィナーに負けない大きなものを
有していた。それはモンツァを何度も走った経験と
あきらめの悪さとファイティングスピリットである。
そして、ドゥカティは車体はだめだめだったが、エンジンパワー
では他社と戦えるレベルであった。

モンツァに乗り込んだナンネッリ。とにかく勝つこと、
最大の敵であるシャーペンティエと藤原を逃がさないこと。
序盤にセーフティマージンを与えないことを頭に叩き込んで
グリッドに着いた。

スタートダッシュを掛けるナンネッリ。持っている全ての
経験と能力、才能を振り絞り、ウィンストンテンカーテの
二人に食らいつく。

そして、持っている唯一のアドバンテージであるエンジンパワー
を活かして、パラボリカからスリップストリームについて、
一コーナーで二台のホンダをイタリアンマシーンに乗る
イタリア人が抜き去った時にモンツァは爆発した。

その後も終盤まで優勝争いを展開。モンツァを熱狂の渦に
叩き込んだ。

残り二周でタイヤが終わってしまい、三位キープの走りに
切り替えた彼であったが、勝者の藤原以上の大歓声を浴びた。

あの時の感動が今でもよみがえりますが、今回のフォレスの
走りはナンネッリを思い起こさせるものでした。

経験を重ねたライダー。あるいは、様々なことを感知できる
ライダーというのはそれはそれでひとつの才能であり、
いいことに働くことも多いと思います。

しかしながら、そういったライダーほど、この道具やチーム力
がラップタイムに深く関わってくるこのスポーツでものごとが
よく理解できたり、察知できる故にトップクラスのライダーや
チャンピオンとの違いを認識できると思います。

このこと自体はいいことかも知れませんが、これが頭のいい
ライダーであればあるほど、あるいは長く走っている
人であればあるほど、競争力の違いとタイム差がどうして
生まれて、どういうプロセスを経て、どうなるのか簡単に
わかってしまいます。

そうすると、自然に走れる順位であるとか、ラップタイムを
自分で規定して、その範囲で走ることが起きてしまいます。

ヴァレンシアでのフォレスというのは、若いこと、
経験が浅いことは明白でした。

そして、ライバルとの道具の差や環境の違いなどを考えなかった
気がします。

そう、彼が考えたことは、とにかくスタートで前にでること。
シャーペンティエを逃がさないこと、何が何でもライバル
に食らいつくこと、自分のできる100パーセントの走り
をすること、そして、それをアイデアだけに終わらせずに
全うすることだったと思います。

彼の企ては半分ほどは成功を見ました。誤算はシャーペンティエ
にスタートでトップに立たれたこと、そして二周目にサーキット
レコードとなるタイムを叩き出されて、リードを広げられたこと
だったと思います。

しかし、彼の作戦プランというのは私は間違っていなかった
と思います。若くて経験がないことで彼が手にしていること
は元気の良さであり、挑戦していく心であり、ライバルの
道具や環境を考えないことでとにかく自分の走りや戦術を
考えそれを実行に移しました。

彼は昨年のモンツァの時のナンネッリのようにヒーローには
なれませんでしたが、素晴らしい走りをしたと思います。
カーテン、藤原、パークスという連中にとっては元気良すぎて
厄介かも知れませんが私はフォレスの全力少年ぶりを
評価しています。

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