朝の六時半にたたき付けるような雨で目が覚めてしまった。
水曜日から何度イタリア語やフランス語で『女心と秋の空』
という言葉を教えて、スペインの空も変わりやすいことを
口にしただろう。とにかく、雨で目覚めたヴァレンシアである。

午前11時にスタートした予選の二回目。
しかし、空模様と路面温度を気にしながらの走行であったり、
ピットでの待機というチームが多い。走ってみてもタイムが
出ないのでピットに戻り、出方をうかがったり、空を眺めて
タイヤを温存という連中が多いこと。このセッションの
半分はごく少数のライダーが走行するという姿であった。

三十分が経過して、阿部、ノイキルフナー、今回ワイルド
カード参戦のデヘアといったあたりが前日のタイムを更新
し始めてから、徐々に強い風の中、各チーム動くが活発に
なってきた。

ほんのコンマ数秒を更新していくライダーが出て、
順位に変動が見られるようになる。そんな中で真打登場と
いうような形でコーサーがアタックに入り、ベイリスの
タイムを打ち破る。もう一人のトロイという名前を持つ
ドゥカティスタであるが、前日のタイムを破るまでには
いたらずにセッション終了となる。

懸命のアタックをしていたのがカワサキのウォーカーで
昨年のここのヒーローであった彼は35.5をたたき出して
三番手のタイムとなる。

四番手は前日のタイムのままでマーティン。芳賀、加賀山
はタイムが伸びずに五、六番手。チャウスのドゥカティの
後にワークスドゥカティのランツィ、阿部、ニエトと続いた

カルロ・フィオラーニ氏がローマから駆けつけたが
ローマ人のホンダヨーロッパのマネージャーにはこの日の
ホンダの成績はきわめてネガティブなものであり、
トップ10にホンダユーザーがいないという結果であった。

ウェットスーパーポールセッションになるのか、ドライに
なるのか、四時間後のことは予想がつかないまま、二回目の
予選が終了となった。

午後四時からドライ宣言でスーパーポール開始である。
曇り空、低い路面温度。雨が途中で降ったら、どういう
変更点があるのか気にしながらのセッションとなった。

好調ぶりを見せたのが、PSG1カワサキの三人衆である。
ラコニの集中力とシャープな走りがタイムを削り、
それに負けまいとウォーカーも昨年いい走りを見せたここで
マシンのいいところを活かし、タイムアタック。そして、
ここが地元であるフォンシ・ニエトが渾身の攻撃的な走りで
35秒3から4にカワサキ勢がひしめく展開となった。

このカワサキ三銃士に切り込んでいったのが、ランツィの
ドゥカティであり、望外の好タイムで伏兵ぶりを発揮して
いるマーティンである。この二人がカワサキの三人の
タイムを上回る。

残り二人。出走するのは二人のトロイ、一台のドゥカティと
一台のスズキである。ベイリスの方がアタックに入り、
快足振りを発揮。普段はいい奴だがヘルメットを被ると
速く走るために必要な我がままをいい尽くすという
彼が悪魔性を発揮して、コーサーのタイムに襲い掛かり、
35.1をマーク。

対するもう一人のトロイで、ここでアプリリアでもスズキでも
勝っている彼は自信があるのだろうか、あるいはコースが
好きなのだろうか、素晴らしいコーナーリングでタイムを
削っていく。

肌寒さを感じるフィニッシュラインを通過したときに計時された
タイムはただ一人34秒台。速さと強さを見せ付ける結果と
なった。

コーサー、ベイリス、ランツィ、マーティンという一列目。
二列目にはニエト、ウォーカー、ラコニの三台のカワサキに
R1最速の阿部。

トーズランドのホンダ、芳賀とピットのヤマハ、スーパーポール
を走らなかった加賀山が二回の予選タイムで十二番手。

四列目にチャウス、フォレ、ロルフォ、バロスという順位に
なった。

決勝はどんな天気になるのか、どんな天気でも二人のトロイには
関係ないのか、大いに関係が出てくるのか、意外な速さを
見せたカワサキの三人はどういう戦いを見せるのかが焦点に
なる日曜となりそうだ。

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