チェコ国歌を聞くと私はチェコ人ライダーを

チェコ国内リーグのアイスホッケーのセミファイナルが終わり、
ファイナルに入りました。セミファイナルの時点から試合前には
国歌が斉唱されています。

バイクのレースの世界でもウィナーに勝利後に国歌が流れます。
私が仲が良かったヤロスラフ・フーレシュというライダーがいました。

彼は色々な問題を抱えて、最後は何と誕生日に自殺するという
ことを選び、数日後、病院でなくなってしまいました。

その彼が現役で走っていたときに、二度かなり勝利に近づいた
ことがありました。一度はドニントンパークでのレース。
もう一つは2002年の雨の鈴鹿でした。

この日本グランプリの125ccクラスのスターティンググリッド
に私は私の友人とチームスタッフと共に彼と一緒にいました。
彼に頼まれてダミーグリッドで衣装を着て、傘をさしてくれる
女性を探すように言われて、友人を紹介し、一緒にいました。

チェコ語でgood luckを意味する、ホドニュステスティと
声を掛けると、チェコ語でありがとうと返答して、戦いに
向かいました。

ウェットコンディションの中、イェンクナーとバトルを展開。
その相手のドイツ人がマシントラブルでピットインして、
彼の一人旅になりました。

順調に快走する彼ですが、一度コースアウトしてしまいます。

ひやっとしながら、コースに戻り、再び独走していた彼でしたが
今度は転倒して、マシンを再スタートできずにリタイアして
しまいました。

泥だらけになったライディングスーツで悔しさをかみ締めながら
ピットに戻ってきた彼を見て、こういうときは何を話しても
無駄だからほっといた私でした。

この時に優勝したのが開幕一ヶ月前までシートが決まらず、
ノーギャラでアプリリアのマシンとダンロップという道具は
出せるが、それでも走るかと言われて、その条件を呑んで、
鈴鹿に乗り込んで来たアルノー・ヴァンサンで、その後の
南アフリカも制して、タイトル争いに絡み、最終戦で
感動のチャンピオン決定となりました。

優勝を逃したフーレシュですが、その後、彼は出来る限りの
努力や体制作りをしますが、それが実らず、さらに、125cc
参戦での年齢制限などがあり、必死に就職活動するはめに
なり、ホンダオーストリアでの耐久レース参戦が決定しながら
テストで転倒し、怪我でシーズン前半を棒に振り、しばらく
してから自殺の話を耳にしました。

あの鈴鹿で勝利を奪い、チェコ国歌を一緒に聞くことができたら
何が生まれたのだろうか、チェコ出身というレースの世界では
メジャーでない国からやってきて色々と壁やら困難に立ち向かって
きた彼がチェコ国歌を表彰台で歌えたら、何ができたのだろうか。
色々な思いが悲しみと共に押し寄せてきます。

この思いが払拭される日が来るのかどうかわかりませんが、
アイスアリーナだけでなく、サーキットでチェコ国歌が
聞かれる日を待ちたいと思います。125ccの開幕前の
テスト、スペインでのレースとルーカシュ・ぺシェックは
可能性を感じさせてくれました。彼やヤクブ・シュムルツが
勝利の雄たけびを上げたとき、私の心の中で何かが無くなって、
新しい何かが生まれる気がします。