ランキングを下げて、年齢も重ね、焦る気持ちを抑えながら
復帰に向けてリハビリしたり、トレーニングをしているうちに
どんどん若くて元気なプレイヤーがトップに入ってきたり、
何かをつかんでランクを上昇させるプレイヤーを横目にして
大会に備えるプレイヤーの気持ちというのはどういうもの
なのかは知りませんが、アルノー・クレマンというフランス人
プレイヤーはランクを落として再びトップに戻ろうと
野心と欲望を抱いていました。

そんなクレマンの努力にご褒美を出したのがマルセイユの
大会関係者。ランクの低くなった彼が本戦にダイレクトイン
できなかったのですが、ワイルドカードをプレゼント。
地元でマルセイユ近くのアクサンプロヴァンス出身の
彼はこのチャンスをもらって、そのチャンスを活かそうとした
のが先週のマルセイユでした。

OPEN13のドローを最初見たときに驚いたのがメンバーの
豪華さ。寒いヨーロッパですが、その中では比較的暖かい
南フランスに集まったメンバーは熱くタフな連中ばかり
でした。

そんな中、クレマンは大会主催者の好意と地元の声援に
応える大活躍。ガスケ、、ベルダスコ、サントロといった難しい
プレイヤーをぶち破り、この大会第一シードで世界二位の
ナダルをSFで1セットオールからファイナルを7−5で
打ち勝ち決勝進出。そして、決勝ではマリオ・アンチッチとの
対決となりました。

この大会でのクロアチア人は初戦でもっとも世界で知られている
キプロス人のマルコス・バグダティスを破り、デビスカップの
僚友である最も地味なトップ5プレイヤーのリュビチッチに
退けて、決勝進出となりました。

熱戦が期待されていた試合ですが、これが一方的な展開。
アンチッチは調子が悪かったのか、土曜日までに体力も
精神力も使い果たしたのか、クレマンのいいところばかり
目立つ試合となりました。

三年ぶりのシングルスの優勝。かつて勝っていたプレイヤーが
勝てなくなり、しかしながら再び頂上に挑もうとする気持ちの
強さはいったいどんなものなのか。強い欲望や志がないと
再チャレンジはできないでしょう。マリオ・アンチッチと
いう人は直接会ったことはないのですが、私の知り合いの
息子であり弟なので勝ってほしかったのですが、クレマンの
執着心の強さとあきらめの悪さには感銘を受けましたね。

本当におめでとう。あきらめが悪いことが美しいことを
彼が教えてくれました。

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