一位 アッセン オランダ 

 強すぎる、速すぎるウィンストンテンカーテホンダの
二人がチームの地元オランダに戻ってきたレース。いつもの
リピートになるのか、あるいは何かが起こるのか。そして
シャーペンティエのタイトルが決定するのかが焦点だった
このレース。シャーペンティエと藤原に食らいついたのが
フォレとファブリッツィオであった。

 人やモノ、お金や体制など同じCBRユーザーであるが
差も違いもあるメガバイクホンダの二人が、アッセンという
ライダーサーキットいう場所で道具の違いをライダーの腕と
能力で差を埋めていき、ドッグファイトを展開。レース終盤
に藤原のミッショントラブルで後退した残りの二周の攻防は
息詰まる熱戦となったが、どうしても勝ちたいという気持ち
の強さとライダーの能力の高さでフォレが制した。

色々なものを持ち寄ってチームが成立し、戦いが始まるが、
アッセンというライダーの能力がタイムと成績に反映する
割合が他のコースに比べて大きなレーストラックでシャーペ
ンティエと藤原の独走を許さず、接戦に持ち込み、勝って見
せたフォレの強さと勇敢さ、そしてショーワのサスペンショ
ンエンジニアのドイツ人のグッドを通り越したグレートな
ジョブに拍手と喝采が送られた。

チームメガバイクはこれが世界選手権
参戦しての初勝利。二位に入ったシャーペンティエは
これでタイトル決定となった。三位はファブリッツィオ。
それまで三位や二位だったら笑っていたローマ人がチームメイト
が優勝して、自身が三位という結果に表彰台で笑うことが
なかったのが印象的だった。

二位 モンツァ イタリア

 このレースの二週前のヴァレンシアでユルゲン・ファンデン
グールベルグはドゥカティのマシンを乗ることを拒否した。
エンジンはいいが、車体、とりわけリアサイドがだめだめで
開幕前から何をやっても機能しないマシンにさじを投げた。

 同じようなインプレッションを抱いていたのは他のドゥカ
ティスタも一緒であった。

 そんなドゥカティに乗るジャンルカ・ナンネッリはその
じゃじゃ馬のいい部分であるエンジンパワー。そして、
何度も走ったことがあるという地の利。さらにライダーの
持っている才能と彼が有するあきらめの悪さという剣を
携えてウィンストンテンカーテの二人に戦いを挑んだ。

 速すぎるシャーペンティエと藤原に序盤からリードを
許したら逃げられてセーフティリードを許してしまう。
何が何でもオープニングからの数周に彼らを捕まえなければ
いけない。

 恐ろしいまでの集中力と闘争心でそのプランを実行に
移し、数少ないドゥカティの長所であるエンジンパワーを
利して、パラボリカからの立ち上がりとメインストレート
で堂々と戦いを挑み、あの強いホンダドゥオを捕らえて
イタリアのモンツァでイタリア人がイタリアのマシンで
(そしてイタリアのタイヤで)アンタッチャブルと
言えたホンダコンビをぶち抜いた時にモンツァは爆発した。

 モンツァを凡戦に終わらせないどころか堂々たる
優勝争いをして、感動と興奮のるつぼに叩き込んだナンネッリ。
残り三周のところでタイヤが終わってしまい、ペースダウンを
強いられたが見事な走りであった。

 優勝争いはチームメイト同士のフランス人と日本人の
戦いになり、サイドバイサイドで体をぶつけ合いながらの
戦いになったが、最後のメインストレートでほんのわずかだが
先んじた藤原が優勝。二位にシャーペンティエ。三位に
ナンネッリ。ウィナーは藤原であったが、ヒーローは
ナンネッリであったレースであった。

 三位 イモラ イタリア

金曜日に藤原が、土曜日にシャーペンティエが転んでしまい
欠落感が横溢するエンツォエディーノフェッラーリサーキット。
優勝争いはメガバイクのCBRユーザーのフォレとファブリッツィオ。そして、ヤマハジャーマニーのカーテンとパークスの
戦いとなった。

そんな戦いに水を差したのが雨であった。2ヒート制となり
第二レースがウェットレースとしてスタート。

ドライではトップ争いの後ろを走っていたナンネッリであるが、
空が泣いたときに笑ったのが彼であった。スペシャルヒスト
リックカラーのドゥカティを駆る彼はライバル達に三秒以上
速いペースを連発して、トップを快走。第一ヒートとの
合算タイムでもトップに立ち、そのリードを広げる。

追いかけるのがヤマハジャーマニーのカーテンにモンツァ以降
グールベルグの後釜に座ったコラーディ。パルマに住む
彼にとってはここは同じエミリアロマーニャ州での地元レース
であった。

背中を見せることなく、ドゥカティの本拠地から30キロ先
のレースで堂々としたトップランで快走したナンネッリ。
苦労人の彼が雨という状況になり、やって来たチャンスを
きっちりとモノにした素晴らしい初優勝レースであった。

二位にカーテン、三位に大健闘のコラーディという表彰台で
あった。

 四位 ドーハ カタール

ホンダのCBRというマシンをチャンピオンチームで走ることに
なったスズキ色の強かった日本人ライダーの藤原には緊張や
焦り、そして勝ちたいという気持ちの高ぶりがあったのだろう。
それがスタートで悪い方に出てしまった。

スタートをほぼエンスト状態で他のすべてのマシンが彼の
そばをレーシングスピードで通り過ぎていったあと、彼の
マシンが進みだした。

しかし、藤原は勝つためにここにやって来た。とにかく
前を追い、全力走行を始めた。一台一台他の列強のマシンを
追い抜いていく。

気がつくと、ファブリッツィオに追いつき、追い抜いて
後は同じカラーリングのCBR600に乗るフランス人だけであった。

勢いに乗って、彼を追い抜いて、レース参加車両のすべてを
パスして初開催のドーハで移籍初戦、初めてのサーキット
でホンダでの初優勝を果たした。

五位 ラウジッツィユーロスピードウェイ ドイツ

前の週のオランダではホンダの表彰台独占プラス藤原の
四位とトップ4をCBRにさらわれてしまったライバルメーカー
陣営。チームの地元であり、ヨーロッパの中でのバイク市場
として重要であるドイツで行われたレース。そこでヤマハ
ジャーマニーの二人が素晴らしい仕上がりを見せた。

例によってシャーペンティエが速く、ここでの優勝争いを
するのだが、カーテンもパークスも引かずに緊張感のある
戦いが繰り広げられた。さらにここにロビン・ハームスの
勇敢な走りとフォレ、ファブリッツィオのメガバイク勢も
好調を維持してトップ集団を形成することとなった。

どんよりとした天気の中で雨が降り始めてレースが一時中断
となり、再スタート。第二ヒートのレースをリードしたのが
カーテン。パークスが続き、シャーペンティエは二コーナー
でまさかのクラッシュで戦線離脱。三位にハームスが続き、
フォレがプッシュするが抜くにはいたらずにドッグファイト
を演じる。

この日のヤマハジャーマニーとホワイトパワーはベストマッチ
を見せた。地元はデータもあるし、チームもプレッシャーも
あるがモチベーション十分なのだろう。後半にはクルージング
状態での1−2フィニッシュとなった。三位に後半追い上げた
フォレであった。

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