年を越えるとテニスシーンは激しく動き出します。
オーストラリアでの大会が続いた後、今年初めのグランド
スラムイベントのオーストラリアンオープンが真夏のメルボルン
で行われ、それが終わると真冬の東京で女子のWTAツアー大会
の東レパンパシフィックオープンが開催されます。

日本での女子の大会ではトヨタプリンセスカップがなくなって
しまい、WTAツアーの大規模大会はこの冬の東レパンパシフィック
オープンのみとなってしまいました。秋のAIGオープンで
見ることができない女子のトップクラスのプレイヤーを現場で
日本で見ることができるのはこの大会ぐらいなものです。

すでに大会の要綱も発表になり、PR活動もやるようになって
きたのですが、この大会のホームページを見て、ひどく
驚いてしまいました。

今回出場するプレイヤーにニコル・ヴァイディソバがいるの
ですが、これが出場者リストのところでは彼女の国籍が
正しくチェコと書いてあるのですが、青字に塗られた彼女の
名前をクリックして、彼女のキャリアの略歴を見ると、
何と彼女の国籍がロシアなどと書いてありました。

これはチェコ人にとって穏やかな話ではありませんね。

私はヨーロッパに入るときにチェコのプラハから入って、
あの町からでることが多く、チェコ人の友人、知人を得ています。

そして私はあの国のことが気になる存在だし、好きな場所
でもあります。

そんな国の人たちにとって嫌いな国を挙げるとすると、
歴史的な経緯から言って、ドイツとロシアの二カ国の
名前が出てきます。

ドブチェックの早すぎた民主化要求。ブレジネフの軍事弾圧。
そして明るい空気から重く暗い雰囲気への移行。そんな悲しい
歴史を経験し、さらに大国の利益の狭間で生きていくことが
命題として各人が抱いている地政学的な環境のなかで
彼らがロシア人に対してどんな印象を抱いているのか東レ
パンパシフィックオープンの関係者はまったくわかって
いないのでしょう。

長野オリンピックでチェコという国は国技のアイスホッケーで
金メダルを獲得しましたが、これがQFが優勝候補のアメリカに
3−1。SFが優勝が本命視されていたカナダに残り一分を
切ったところで2−1でリードしていたところを追いつかれて
同点で延長となり、この延長戦を何とかしのいで、ペナルティ
ショット戦を制して、決勝進出。

そして、決勝で戦った相手はロシアでした。

一点のリードを奪い、ロシアの猛攻をしのぐチェコ。
八時間の時差のため、チェコでは早朝のテレビ放送となって
いたのですが、朝五時からヤン・フス像のある広場で
ビールを飲みながらレプリカユニフォームを見て応援していた
チェコ人。

冬のチェコというのはとんでもない寒さなのでしょうが、
そんな中、応援していた彼らの見たかったのは、チェコが
世界一になることであり、ロシアをぶち破る姿でした。

30本を越えるシュート、パワーとスピードを有するロシアの
猛攻に耐えて、終了のときを迎えたときに長野とチェコは
大爆発しました。

勝利の喜びは特別なのでしょうが、それがロシアを破っての
ものだったということが何か彼らの喜びに一つ違った
感情を加えていたことは間違いないでしょう。

かように世界的なスポーツイベントでチェコ人がロシア人を
相手にするときには過去の歴史的背景や国民性が発露する
ものですが、それが顕著なのがチェコとロシアの関係ですね。

かつて、サッカーの日本代表監督を加茂周氏が指揮していた時に
アジアのほかの国との試合のときにどういうわけか相手の
国家吹奏の時に普段、プレイ中の場所とは違う場所にいて
日本国代表監督が公式セレモニーで対戦国国歌が流れている
時に姿が見えないなんてことがあったときに国際舞台における
配慮が欠落し、マナーが不足していると言われたり書かれた
ことがありました。

歴史もあって、WTAツアーのポイントも高い東レパンパシフィック
オープンですが、大会関係者に何かが欠けていたり、
足りないものが存在する気がします。

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