この私のブログが恐らく日本人が日本語で書いた情報の
中では唯一ではないかと思いますが、今年スーパーバイク
世界選手権の併催レースとして行われた二十歳以下のライダー
のよって行われたストック600ヨーロッパ選手権の
激しいバトルの主役であったクラウディオ・コルティと
ヨアン・ティベリオについて何度か取り上げてきました。

明るい未来と将来性を感じさせ、素晴らしい技術と精神力を
感じさせた彼らのことについて、また書いてみたいと思います。

先日の私の記事の中で、ヴァレンティーノ・ロッシのベスト
シーズンは上田昇と激しく世界選手権を争った97年だと
書きました。その理由として、レベルの高い二人のライダーが
違うチーム、異なるメーカーで道具が勝敗に占める割合の
大きなスポーツで、お互いの有利な部分、不利なところを
理解して、差をつけようとしたり、埋めようとしたりする
過程で様々な進化と深化を遂げて、マシンをモディファイしたり
乗り方を変えたり、戦術や戦略を考えることで成長を促し
レベルをさらに上げることになり、ライダー、マシンともに
高いレベルでの戦いを一年通じてすることになりました。

同じことはかつて80年代後半から90年代前半のヤマハの
レイニーとスズキのシュワンツの戦いにも見ることができま
したが、絶対に勝ちたいとかあいつにだけは負けたくないという
欲望や意地が彼らが元々持っていたライディングの才能とク
ロスすることで素晴らしい走りとなり、野望の大きさが高
いレベルのマシンを求め、そのリクエストにエンジニアや
メーカーが応えることでマシンが進化し、さらに高いステー
ジでの戦闘が生まれました。

そんな違うメーカー、異なるチームでの凄まじいバトルという
ものを私は今季ユーロSTK600でコルティとティベリオに見ま
した。

レイニーとシュワンツがアメリカでの戦いでライバル視しながら
激しく争い、共に世界を舞台にしてからも、当時のチームの
エースライダーとしてメーカーの威信を背に、絶対に勝ちたい、
そして負けたくないという気持ちの強さを抱いて走っていた
時に素晴らしいドラマが鈴鹿でホッケンハイムで、ドニントン
パークで生まれました。

同じようなことを今季のコルティとティベリオにも感じました。

ヤマハR6に乗るイタリア人のコルティとホンダCBR600を駆る
フランス人のティベリオ。

このカテゴリーの選手権が始まってすぐに、このクラスは
この2005年シーズンは彼らのためにあると思いました。
そしてそれは雄弁に成績となった記され、激しいレースシーン
として表出されました。

全10レース中。5レースを奪ったコルティ。
4レースに勝利したティベリオ。

残り一つのレースはドイツでマキシム・ベルジェが獲ったもの
でしたが、これは最終ラップの最終コーナーの前のシケインで
優勝を争っていたコルティとティベリオが共に勝ちたい、
絶対に負けたくないという二人が起こしてしまったというか
二人だからこそ起きてしまった接触でした。

ベルジェが誰よりも早くチェッカーを受けましたが、
これは奪った勝利でなく間違いなく拾った勝利でした。

そんな激しく熱い戦いをした彼らには色々なオファーが
届きました。それは、ストックバイクの選手権でスタンダード
タイヤで素晴らしい走りをした彼らの能力と実力を
スーパーバイク世界選手権及びスーパースポート世界選手権が
開催される場所で披露したために起きた当然であり必然の
出来事でした。

チャンピオンとなったコルティは結局、ロレンツィオーニ
バイレオーニヤマハでFIMカップSTK1000選手権を戦うことを
選びました。

ティベリオは今年共に戦ったメガバイクホンダで参戦クラスを
スーパースポート世界選手権に参戦します。

コルティは先日行われたヴァレンシアテストに参加し、
ストックバイクのR1ながら、スーパーバイク勢に割って入る
タイムをたたき出し、ヤマハイタリアと二年契約を得て、
07年のスーパーバイク世界選手権にR1で戦うことが
決定的です。

ティベリオは初めてのスーパースポートマシンでヴァレンシア
を走り(彼は今年の五月のモンツァで行われたイタリア選手権
のレースでSSPのマシンを走らせているがヴァレンシアで
スーパースポート仕様のマシンを走らせるのは初めて)
好感触を抱いたようです。

宿命のライバルがいよいよヨーロッパ格式から世界格式の
ステージにやってきて活動する時がやってきました。

明らかに彼らには人並み以上の才能と実力があります。
そして若い彼らには未来があります。
彼らを支えているスタッフたちには期待感があります。

彼らがレイニーとシュワンツのように、ロッシと上田のように
違うメーカーとチームに所属しながら、お互いの能力を
認めながらも、トップライダーが有している負けず嫌い
とあきらめの悪さをぶつけ合い、世界の頂上を目指して
戦う日々が必ず来ることでしょう。

今年のアンダー20ユーロSTK600選手権の美しく激しい
バトルは彼らのこれからさらに先に続く流麗にして典雅、
過激にして爆発的なレーシングキャリアの華々しいながらも
毒々しく、きれいでありながらも暴力的な戦いのほんの
序曲に過ぎないことでしょう。

コルティとティベリオ。世界のレーシングシーンを
席巻するであろう彼らが奏でるオペラのタクトはアンダー20
によるストックバイクの選手権というフラミーニ
兄弟の発案で今年のスペインのヴァレンシアで振られたばか
りです。

圧倒的なスター性とその他のライダーを引き離してしまった
タレント性を世界選手権のかかったレースでスタンディング
オベーションで絶賛する日は遠くない未来に存在すること
でしょう。

レースの世界の未来はコルティとティベリオの二人の
手の中にあります。どうか私のブログを愛読してくださる
日本のレースファンの皆さん。彼らの今後に注目してください。
そして、新たなる歴史のウィットネスとして彼らの走りを
見守ろうではありませんか。

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