朝のラウジッツィは曇り空と細い雨粒に包まれていた。
ここの天候はどうなるかわからないというヨルグ・トイフェルトの
言葉が日曜日の決勝を迎える前にリアルな真実として
目の前に実証され、各チーム共にタイヤチョイスやセッティング
に頭を悩まし、ピレリタイヤのスタッフは大忙しのサンデー
モーニングとなった。

STK1000のウォームアップに関してはレコードラインも
まだウェット。しかし、これが終わりかけるころにはすでに
路面はどんどん乾いていき、SBK,SSのウォームアップはほとんど
が乾いている状態であった。

併催のSTK1000を終えて、いよいよSBKの第一レースである。
ポールはロレンツォ・ランツィ。まだ違和感の感じられる
ゼロックスドゥカティのカラーリングのライディングスーツ
を身にまとい、いささか緊張した表情を笑みを浮かべることで
ほぐそうとしている姿がいかにもライダー人生最大のチャンス
をもらいながらも、同時に正念場であることを感じている
彼の表情から見てとれた。追う立場から追われる立場に。
全てのほかのライダーは彼の背中を見てスタートする。

サイティングラップを終えて、いよいよ決勝スタート。
注目のランツィであるが、多少出遅れて、一コーナーに三番手
で入った。しかし、彼は突っ込みすぎて、曲がりきれず、
やむなくインディレース用のオーバルコースに進入して、
そのまま直進し、今回のレースの採用コースに入って戦列に
加わった。

その後の彼はライバルたちを蹴散らし、どんどん順位を上げる
ものの、このオープニングラップにおけるオーバルコース
進入がレースディレクションの審議の対象となり、しばらく
あってピットレーンスルーペナルティとなり、ドゥカティ
のタルドッツィ以下のスタッフの猛抗議も受け入れられず、
ピットレーンを走り、順位を落としてしまう。

また、初日チームメイトを上回り、今回期待されたムジェリッジ
はマシントラブルでピットに戻り、キリも途中リタイア。
優勝はヴァーミューレン、コーサー、芳賀の三人での戦いと
なった。

前回のオランダでのダブルウィンで調子に乗るオージーは
ここでもマシンのいい部分を存分に使い、冷静に、かつよく
集中してライディング。追いかける立場のコーサーと芳賀で
あるが、この二人も決してセイフティリードを相手に与える
ことなくプレッシャーを掛け続けている。

順位を入れ替えながらも高い次元の走りを繰り返す三人に
他のライバルたちは及ばず、三人の優勝争いとなる。

高い緊張感に包まれたドイツでどんなドラマが待っているの
だろうかと多くの関係者、お客さんが想像をめぐらせていた
ところにやってきたのは芳賀やコーサーのとっての涙雨と
なった降雨であった。

ここの特徴である、雨が降るとかなり危険度が高まるという
ことを理解しているレーシングディレクターは赤旗中断。
そして、この旗が提示された前の周の段階を最終結果とする
ことが決定された。

これからどうなるのか盛り上がっていたお客さんや関係者に
とってはまさに涙雨であった。

結果はヴァーミューレンが優勝でオランダから三レース
連続優勝。二位が追い上げ態勢にあった芳賀。三位が
コーサー。以下、トーズランド、加賀山、ピット、ノイキルフナー、ペナルティから挽回途中だったランツィ、阿部、
ボストロムというベスト10であった。

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