今年のSBKのシーズンというのはコーサーの素晴らしい立ち上がり
から始まり、ラコニとドゥカティの反撃の中盤戦を迎えています。

実にエキサイティングでファンタスティックなシーズンであり、
選手権だと思うのですが、何かが欠けている気がします。

私が現場で、ネットで内側から、外側から今季のレースを
見ていて思うこと。それは芳賀紀行という最もエキサイティング
でホットなライダー。堅実さが特徴の名古屋で生まれて育ち
ながらスリリングな走りを見せてくれる彼が実力を100%
出しているレース、気力も体力も出し切って誰よりも早く
チェッカーフラッグを受けるレース、上位集団でライバルたち
とこれぞバトルだと叫ぶことができる戦闘、他のライダーや
メカニックがあきらめてしまうような強さと速さというもの
が今まで見られることなく今に至っています。

コーサー、ラコニ、ヴァーミューレン、トーズランド、加賀山
の五人が今季のSBKで勝利を奪っていますが、そこに芳賀の
名前がないのはある種の欠落感を感じてしまいます。
何かニーノ・ロータの音楽のないフェデリコ・フェッリーニ
の映画や宮川一夫のカメラのない黒澤明のようなもので
悪くはないがスペシャルでない映像作品のようです。

フェッリーニの映画にニーノ・ロータの甘みと美しさの
ある音楽が必要だったように、黒澤の傑作に宮川の丁寧で
奥行きのあるカメラが不可欠だったようにSBKのシーズンに
は芳賀のエキサイティングでファンタスティックな走りが
必要不可欠です。

何が足りないのか、何が欠けてるのか、何をすべきなのか、
ヤマハ、チーム、メカニック、各種サプライヤー、スタッフの
皆さんは必死になって考え動いていると思います。
そんな努力が実を結んでほしいと思っている私です。
私にとっても世界中のレースファンにとっても最もファンキー
な名古屋人のファンタスティックな走りと勝利が今季の
SBKにおいておおいに欠落しています。彼がトップグループ
でコーサーやラコニ、加賀山、ヴァーミューレンと競り合
う時、SBKのレースはニーノ・ロータの音楽のあるフェッリー
ニの映画、宮川一夫のカメラのある黒澤の作品になりえるこ
とでしょう。

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