先日のアイスホッケー世界選手権のQF,SF,ファイナルで勝利を
得たチェコチームに試合後チェコ国歌が流れました。私はこの
クデドモフムーイという曲は歌えないので、スポーツバーのテレビ
画面を見ながら聞いていましたが、このシーンを見ていてあるライ
ダーのことを思い出していました。

チェコ人で世界グランプリで走っていたヤロスラブ・フーレシュ
のことです。

私と彼とは今まで何度もサーキットで会い、言葉を交わすような
仲でした。ホンダの125で走っていたときも、イタルジェットで
開発ライダーとしてイタリア選手権を走っていたときも、そして
このボローニャのメーカーと共に世界グランプリに舞い戻り、
時に侮れない速さを見せた時のこと、マッテオーニホンダに加入し
その翌年マッテオーニアプリリアで走ったときのこと、そして
ヤマハクルツで250に参戦を始めた時のこと、転んで怪我して
しまった後、チームエリットで125を再びやっていた時のこと、
もてぎで会った時のことなど色々な場面で我々はチェコ語であいさつ
してイタリア語で会話していました。

その彼は結局一勝も挙げることなく終わりましたが、その彼が
キャリアの中でかなり勝利に近づいたレースというのが02年の
鈴鹿でした。予選は九番手。しかしながら朝のウェットでの
ウォームアップはトップタイム。期待感を抱かせながら、私は
彼のお手伝いで女友達にスポンサーロゴの入ったウェアを着させて
一緒に九番グリッドに立ちました。

路面はウェットのままレースがスタートし、イェンクナーとフーレ
シュが三番手以降を離し優勝争いをしていましたが、イェンクナー
はマシントラブルでピットインして、彼の独走となりました。

誰もが彼の優勝を信じて疑わなかったのですが、一人での走行と
なり集中力が乱れたのか、一度コースアウトして、あわやリタイア
というシーンを演じます。マッテオーニのピットでモニターを
見つめるメカニックやチームスタッフ、そして私と即席キャンギャル
をやってくれた友達と共に祈る思いで見ていたレース中盤に目に
入ってきたものは彼がクラッシュして再スタートできずに呆然と
していた映像でした。

がっかりするチームスタッフ、マネージャー、メカニック。
私もこの信じたくない現実を受け入れたくない気持ちで一杯でした。
ドリーミィなものは甘いのですが、リアルなものは苦いもの
ですね。それがよくわかりました。

その後、レースは後方から雨を味方につけてアルノー・ヴァンサン
がまさにsinging in the rainの走りで最終ラップにスピードが
鈍り危うい場面があったものの逃げ切り勝利し、その翌戦の南
アフリカでも勝利し、タイトルへと進んで行きました。

フーレシュの千載一遇のチャンスを彼は自ら失い、逆にヴァンサンは
開幕直前までいくつかのチームと交渉していたものの、なかなか
この話し合いが実らずにあわや浪人かと思われていたのですが、
ノーギャラで走るという条件を飲み、何とか参戦することができ、
開幕のこの鈴鹿では絶望的な予選順位だったのですが、雨という
彼にとってはグレーテストなチャンスが訪れ、フーレシュの転倒
もあり、これレースをものにしていいスタートを切りました。

チェコ国歌をサーキットで聞けるチャンスというのは、それ以降
未だありません。私としてはヤクブ・シュムルツというライダーが
ファクトリーバイクを得れば、あるいはワークスとプライヴェーター、
大チームと小チームの差が少ないスーパースポートというカテゴリー
で戦うことになればチャンスがあると思うのですが、それが実現
することなく、今年もオランダ人にお金を払ってというかakuna
というバッテリーメーカーのスポンサーを持ちこんで結構な額を
払って戦っています。

アイスホッケーの世界で何度も聞けるチェコ国歌をサーキット
で聞けるのはいつなのでしょうか。

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