いつものレッジョエミリアの図書館に行き、コスタ先生の
本を読んでいました。そこで思ったのが、日本の図書館にバ
イクやF1の本があるところがあるのかなという感想とあの
先生の本を読んでレースの世界の安全性のことでした。

コラード・カタラーノというライダーのことを知っていたら
それは相当なマニアだと思うのですが、新垣敏之が経済的な
問題から当時の世界GP500ccクラスの参戦を休止して、
彼のマシンと参戦枠が空き、出走していたのがこのイタリア人
でした。

その彼はドイツのホッケンハイムでとんでもない事故を起こし
ました。すぐにセッションは中断になり、救急医療団が現場に
急行し、最善の処置を施しましたが、きわめて重大な状況で
した。

その後、すぐに近隣の都市であるマンハイムの病院に運ばれ
、時間との戦いに臨み、素晴らしいスタッフの仕事ぶり、
救急体制の働き、医師の力、そしてカタラーノの生きたいと
いう思いが一つの奇跡を起こし、彼は片手を失いましたが、
絶望と思われたところから文字通り生還しました。

彼のこの時の状況をこの本では極めてわかりやすい文章で
書いてあり、その時の状況を想起しながら読んでいたのですが
読後思い出したのが、昨年のユーロスーパーストックの
オランダ大会におけるペリーリとかつての鈴鹿における加藤
大治郎の事故でした。

昨年のアッセンのSBKオランダ大会の最終日。ユーロスーパー
ストック選手権でペリーリが走行中に転倒し、重体状態に
なってしまいました。

すぐにレースは赤旗中断。救急隊が現場に駆けつけ応急治療
が行われ、そこにヘリコプターが到着。すぐに彼はアッセンの
病院に搬送されました。

鈴鹿のMotoGPの時はどうだったか。とんでもないスピード
で激突し、マシンが大破、ライダーも動けない状態となり
ました。

しかしながら、レースは何と続行。かなりの関係者とレース
ファンは事故はあったものの現場近くにいない人は赤旗が
出されなかったことでそれほどのひどい状態にはないと
思った人が多かったと感じたでしょう。

彼は倒れた地点で救急車が来るのを待つのではなく、マーシャル
によって後続ライダーがいない状態であることを確認して
から担架でコースを横切り救急車まで運ばれ、緊急治療を受けて
そこからヘリコプターに移され四日市の病院に運ばれました。

結果的にカタラーノは助かり、ペリーリと大治郎は亡くなって
しまいました。しかし、このペリーリと大治郎のケースには
死に至るまでにあまりにも大きな差があるように思います。

残された家族、友人、知人がどういう印象を抱いたのかは
当事者でないとわかりませんが、ペリーニの周りの人が
医師団に『我々は全力を尽くしましたが、力が及びません
でした。』と言われるのと大治郎の周りの人たちが同じ言葉
を言われて感じることには差異があると思います。
事故現場に医療スタッフが来て、ヘリコプターが駆けつけて
近くの町に運ばれるのと、マーシャルがライダーがもう来ない
ことを確認してコースを担架に乗せて横切って救急車の駐車
スペースに行き、そこからヘリコプターに乗せて運ぶには
かかる時間が違いすぎると思います。

昨年のムジェッロでもカワサキの中野がタイヤが破裂して
しまい、最高速のでるあたりでクラッシュ。ロングストレート
の脇で中野君が寝ている近くをタイヤの破片が散らばる中を
後続のライダーが300キロのスピードで走っていきました。

私はてっきりその時に赤旗がでるものだと思いましたが、
でることなくレースは進行しました。

今シーズンのスーパーバイクはカタールで開幕し、第一レースは
雨で途中中断し、安全性が確かめられた時点で再スタート
となりました。

一方MotoGPでは雨による二ヒート制を避けるためのルール改正
がされようとしています。雨が降ってきたなか晴れ用の
タイヤで走ることやセットアップが違うマシンで走ること
が起きるのではないかと言われています。

危険性をまったくゼロにすることは不可能だと思いますが、
少なくすることが求められている中、あの本を読むことが
できたのは良かったと思います。緊急医療は秒数との戦いで
あり、赤旗中断になり、救われたライダーの命があることを
理解することはいいことだと思います。

スーパーバイクが好きでMotoGPに違和感を感じる人は
業界内に多いと思います。今回のフラッグトゥフラッグ
という名前のルール改正に関して大治郎の事故のときに
同じ場所にいた人たちがどう行動するのか見守りたいと
思います。私はペリーリ自身も知っていましたし、
彼のチームの連中を知っているだけに安全性に対する思い
も強いですし、医師団や関係スタッフが何かが起きたとき
に早く迅速に仕事をしたいという気持ちというのを感謝
と共にそれができる枠組みがあって欲しいと思っています。

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